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カテゴリ:薬
日頃から緑黄色野菜を食べる事が多く、納豆も結構食べている気がします。そんな食生活が合わないものというと、医薬製剤の「ワーファリン」が思い浮かんできます。ワーファリンはビタミンKの拮抗剤で、ビタミンKに依存して血液を凝固させる因子の働きを阻害し、抗血栓治療薬として高く評価されています。
ワーファリンの開発と歴史には少々怖い物語が存在していて、1920年代、カナダやアメリカの北部で発生した牛の奇病がワーファリンの開発に繋がっています。若くて元気な牛が急に出血が止まらなくなり、次々と死んでいくという病気は、その拡大の様子から新たな伝染病の発生と考えられていたのですが、意外な事が原因となっていた事が突き止められます。 当時、痩せた土地でも逞しく育ち、気象条件にも左右されず、収穫量も豊富であるスイートクローバーがトウモロコシや牧草などの代わりに資料として盛んに栽培されていました。スイートクローバーの使用量が増えるに連れて謎の奇病が蔓延するようになったため、奇病は「スイートクローバー病」と呼ばれるようになり、スイートクローバー病で大きな打撃を受けた農家が死亡した牛や血液、サイロの中に残っていた腐ったスイートクローバーをウィスコンシン大学の生化学者リンク博士の下に持ち込み、奇病の原因究明が行われました。 分析の結果、スイートクローバーには出血を誘発する物質として「ジクマロール」が含まれている事が判り、謎の奇病の原因物質として特定されました。1948年にリンク博士はジクマロールをより強い誘導体として合成し、ワーファリンの名前で特許を出願しています。 その後、ワーファリンは血栓症の治療薬として応用できる可能性をいわれながら、出血を誘発してしまうという副作用の方が怖れられ、研究は試みられないまま殺鼠剤としての利用が行われていました。 ネズミ、特に体の大きなクマネズミは賢く、警戒心も非常に強い事から、罠を仕掛けても罠の存在を学び、食べた後に仲間が死んだエサには毒がある事を察知して、以後、そのエサを食べようとしなくなります。直接の毒ではなく、食べてもすぐには何の変化も見られないワーファリンは、そんなクマネズミを警戒させずに摂取させ、後に出血を誘発して殺す事に最適な薬剤という事ができます。 牛の奇病の原因物質として発見され、開発されたワーファリンは、成す術のなかったクマネズミへの対策の切り札となり、その後、1951年に意外な事から大きな転機を迎える事となります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年12月18日 07時55分34秒
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