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カテゴリ:薬
若くて元気な牛が原因も判らないまま失血死していく謎の伝染病、「スイートクローバー病」の原因物質として発見されたジクマロールをさらに強化して合成されたワーファリンは、賢く、警戒心も非常に強いクマネズミへの対策の切り札として重宝する存在となっていました。
血栓症の予防や治療への応用の可能性をいわれながら、出血を誘発するかもしれないという副作用の存在ゆえに研究は試みられず、今日のような治療薬として高い評価を得る道は閉ざされていました。 1951年に殺鼠剤としての高い効果を悪用し、自殺を図るために大量のワーファリンを服用しながら無事に蘇生したという事件が報告され、ワーファリンの臨床応用の可能性がいわれるようになります。1954年にはアメリカ心臓協会において心筋梗塞に関する臨床試験が開始され、血栓症に関するさまざまな試験が行われるようになり、抗凝血剤としての有用性が証明され、抗血栓治療法の基礎的薬剤としての道が開かれています。 ワーファリンは血液の凝固に関わるビタミンKの拮抗剤であり、ビタミンKの働きを阻害する物である事から、ビタミンKを大量に含む食材を摂取し、ビタミンKの血中濃度を上げてしまうとワーファリンの作用は弱められてしまう事が考えられ、ワーファリンの投与を受けている人はビタミンKを多く含む食材を摂取しないように指導を受けます。 納豆にはビタミンKが多く含まれているだけでなく、腸内で納豆菌が多量のビタミンKを生成する事が考えられるため、ワーファリンと納豆は師匠が悪いといわれます。 また、納得菌が創り出す酵素、ナットウキナーゼには血栓を溶かす働きがあり、その血栓溶解作用は急性心筋梗塞や脳血栓症などの治療の際に用いられる血栓溶解薬、「ウロキナーゼ」にも匹敵するとまでいわれ、抗凝血薬であるワーファリンと併用すると効果が増強され過ぎて危険という意見もあります。 ワーファリンは毒を転じて薬とした典型的な存在であり、扱いには充分な注意が必要です。効果を阻害するのか増強するのか、今一つ不明な感じではありますが、とりあえず納豆との相性の悪さだけは確実な事と思えてきます。奇病から始まり殺鼠剤、自殺未遂と少々物騒な話の連続ですが、ワーファリンの波乱万丈な歴史となっています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年12月19日 08時00分20秒
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