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カテゴリ:健康
ウィルス感染とワクチンの話によく登場するエドワード・ジェンナーと天然痘の話は、ウィルスによる感染症を人の英知によって撲滅へと導いた例として紹介されます。かつてはその感染力と40%近くにも上る死亡率、治癒できても疱瘡の痕が残されてしまう事から非常に怖れられた天然痘ですが、牛痘という本来は牛の病気であり、人に感染しても疱瘡が残らず軽く済む病気に感染した者は天然痘に罹患しない事に着目し、天然痘のワクチンを開発。天然痘の根絶に繋がっています。
自らの子供に種痘を行う事で効果を実証して見せたという逸話が残され、その姿は彫像として多くの教科書などで見掛ける事ができます。実際には自らの子供ではなく、使用人の子供であったとされるのですが、種痘による感染予防の効果は大きく、その後、急速に流行は見られなくなっています。 ジェンナーに先立つ事、6年。日本の緒方春朔が自らが藩医を務めた秋月藩の大庄屋、天野甚左衛門の子供たちに種痘を行い、成功させていますが、天然痘の撲滅という功績においてジェンナーの方が広く知られています。 ワクチンの開発により天然痘は撲滅への道を歩み、1977年にソマリアで確認された患者が自然感染による最後の患者とされ、それから3年が経過した1980年にWHO(世界保健機構)によって天然痘の根絶が宣言されています。 WHOの根絶宣言によって天然痘ウィルスは自然界には存在しないとされ、一部の研究機関に保存されていた研究用のウィルスも1984年にWHOにおいて行われた合意に基き、破棄される事が発表されていました。 一つの怖ろしい感染症が完全に根絶された瞬間として、とても夢のある話と思えていたのですが、実際の破棄作業は数度に渡って延期され、2001年にアメリカが破棄に反対する姿勢を明確化した事から、現在でも天然痘のウィルスは地球上に存在するものとなっています。 根絶宣言を知る者としては、天然痘は過去のものという感じがするのですが、世界的にテロの恐怖がいわれるようになると生物兵器として使用されるのではという怖ろしげな話も聞かれるようになってきています。 天然痘による死亡例は、紀元前1100年に没したとされるエジプトのラムセス5世のミイラに天然痘の痕跡が認められるほど古いものとなっており、できる事ならこのまま過去のものとして、再び流行の文字を見ずに済む事を願っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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