|
テーマ:おすすめ映画(4069)
カテゴリ:イタリア映画
1954年 イタリア 監督:フェデリコ・フェリーニ 出演:アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マシーナ リチャード・ベイスハート 先日『ジョゼと虎と魚たち』のレビューを書いている時に、この『道』のことを思い出した。 貧しくて子沢山の家の少し頭が弱い娘ジェルソミーナは、オートバイで旅回りをする大道芸人ザンパノに1万リラで売られた。ザンパノは粗野で暴力的な大男。彼の助手として太鼓やラッパを吹く事を教えられるジェルソミーナ。ザンパノは彼女を女房だとは言うが、動物のようにこき使い、お金が出来れば酒を飲みジェルソミーナを置いてきぼりにして平気で他の女を追いかける始末。 ある日2人は小さなサーカスに入る事になった。そこの中で綱渡りを得意とする青年は、ザンパノを見るとすぐにからかう。ある日2人は大喧嘩して警察に厄介になる。 自分はどこに行っても誰の役にも立たないと嘆くジェルソミーナにその青年は、この世の中役に立たないものはない。君もザンパノの役に立っている、と励まされ、彼女は叉ザンパノと旅をすることを決心するが… 今日もネタバレしてしまいます。 ジェルソミーナは少し知恵遅れかもしれないし出来る事はあまりないかもしれないが、人や周りの気配を敏感に感じ取る事が出来る利口な女性に見えた。 最初はザンパノを嫌いで家に帰りたいと逃げ出しもしたが、サーカスの青年の言葉で考え直し、彼女なりにザンパノに愛を捧げる。でも彼には通じない。通じているのかもしれないが決して感謝の言葉もなく態度にも表わさず、ジェルソミーナがかわいそうでならない。 一見ザンパノに頼りっぱなしに見えるジェルソミーナだが、実はザンパノも彼女に頼っているように思えた。ただ、それをジェルソミーナには理解する事が出来ない。 ザンパノは少し気が変になったジェルソミーナを支える事はおろか扱いに困り果てて、彼女が寝ている間に雪の残る山中に置き去りにしてしまう。彼女がそんな状態の時に、そんな場所に1人にするなんて絶対にしてはならない事だったのに。 『ジョゼと~』のジョゼは、つねおによって外の世界を知り、一人でも大丈夫な状態になってから彼が離れていったから、別れても前向きな強い女性へと成長していったが、ジェルソミーナはそれとは全く違う。 数年後ジェルソミーナが死んだと知った時のザンパノの悲しみようは、彼女を亡くした孤独と彼女への仕打ち、彼女の愛に報えなかった事など多くの後悔が波のように押し寄せてきたかのようだった。 アンソニー・クインの粗暴な男がはまっていたし、天使のような無垢なジェルソミーナを演じたフェリーニ監督夫人のマシーナも素晴らしかった。この映画を初めて観たのは中学生の頃。『道』というタイトルを聞くと、ジェルソミーナの困ったような上目遣いの何とも言えない表情がいつも思い出されていた。 昔の映画は大事な場面などに必ずテーマ曲が巧い具合に流れるが、ニーノ・ロータのこの作品のテーマ曲を聴くと、ジェルソミーナの顔が叉浮かんでくる。 今回久しぶりに「この世の中に役に立たないものはない」という言葉が私の琴線に触れた。 何とも言えない悲しみが胸を打つ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[イタリア映画] カテゴリの最新記事
|
|