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カテゴリ:イタリア映画
≪厳しい生活の中で一生懸命に生きていく家族達の 温かくも切ないお話し≫ 19世紀末のイタリア北部の町。小作農場に暮らす4家族の日常を描いた作品です。 北イタリアの自然がとても美しく、場所はもちろん違いますが、ミレーの絵画『落穂ひろい』を思い出すような風景です。 しかし、当時の小作人の生活は実に苦しかった事がうかがえます。家畜も農作業をする道具さえ地主の物で、小作人たちの私有物はほとんど無いのです。 夫を無くし農業をしながら洗濯物をして生計を立てる母親、里親になる事で教会からの子供の養育費で生活を支える事が出来る新婚夫婦。 苦しい中で生活する為の知恵、工夫を見出し、4家族は共同体としてたくましく生きています。 食べ物もギリギリの生活の中、自分たちより貧しい人には食べ物を分け与え祈りを欠かさない信仰の厚さ。貧しいからこそ神を信じる事しか頼れるものはなかったのかもしれません。 子供達は無邪気で可愛らしく、幼い頃から家の手伝いを一生懸命します。 この映画には笑いや笑顔がわずかしかありません。だからこそたまに見せる子供たちの 屈託のない笑顔にはほっとします。 一つの家族は長男ミネクを学校へ通わせる事にします。自分たちも通った事のない学校。家の手伝いをして欲しいけど、学校へ通わせる事は小さな誇りでもあるのです。ある日ミネクの1足しかない木靴が壊れてしまいます。父親は冷たくなった足で帰って来た息子がかわいそうでたまりません。そして息子の為に川沿いにある地主所有の木を切って新しい靴を作ってあげるのです。 結局それが地主にばれて、ミネクの一家は追い出されてしまいます。 他の家族はミネクの家族の事を心配しながらもどうする事も出来ないのです。追い出され荷馬車に揺られて行く一家をそれぞれの家の中から伺い、そして彼らが遠くなるとみんな外へと出てきてずうっと見つめている所で映画は終わります。 これからあの家族はどうなるのか… より苦しい日々が待っているような気がします。 でもひょっとしたら良い地主に出会ってそこで働けるかもしれないし…。 なんだか『自転車泥棒』を観た後と同じような気分になってしまいました。 この作品は本当の農民が出演しています。 セリフは少なくとても静かな映画で、明るく陽気でおしゃべりなイタリア人を想像しているとどこか別の国の人達じゃないかと思えるほどです。もちろんどんな国にもいろんなタイプの人がいるし、それは環境によっても違ってきます。生活環境が彼らを寡黙にさせたのかもしれません。 地主との厳しい関係と、家族の温かな愛情の中で強くたくましく生き抜いていく農民の、心に何かが突き刺さるような作品でした。 L'ALBERO DEGILI ZOCCOLI 1978年 イタリア 監督:エルマンノ・オルミ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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