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カテゴリ:アメリカ映画
「ハァ~・・・」 何度も溜息をつきながら観ていました。 1970年代の、まだ平和だった頃のアフガニスタン。実力者の父を持ち裕福な家庭の少年アミールと彼の家の召使の息子ハッサンは年頃も同じ、身分は違えど幼い頃から大の仲良し。少年時代のアミールとハッサンは強い絆で結ばれていた。しかし、冬の恒例の凧上げ合戦で優勝したアミールは、凧を追うハッサンを迎えに行く途中で、以前から異民族の召使と言う事でハッサンを嫌っていた年上のパシュトゥーン人からハッサンが暴行を受けているのを見てしまう。だが、勇気を出せずに見過ごしてしまったことから気まずさを感じ、ハッサンを遠ざけるようになる。そして何と彼を泥棒にしたて、その事が原因でハッサン親子は自分達からアミールの家を出て行ってしまう。その後ソ連軍の侵攻により、アミールと父親はアメリカへ亡命するが・・・ 私がアフガニスタンと言う国の名前を意識する、あるいはよく耳にするようになったのは、ソ連が侵攻してからか、又は撤退してからかその辺ははっきりとした記憶がありません。そして9.11の後、アメリカがアフガンに侵攻してからは、毎日のようにその名前をニュースで聞き、新聞で目にしてきました。タリバン政権、難民、貧困、危険、荒れた国土、というイメージしかないアフガニスタン。でもソ連が侵攻する前は、平和で、緑豊かな美しい国だったのですね。 アミールとハッサンの少年時代は、その美しいアフガニスタンで、彼らは凧揚げをしたり、字の読めないハッサンがアミールが書く物語を読んでもらうことに喜びを覚え、毎日楽しく過ごしている様子を見ると、現在の国土と比べ切なくなってしまいます。 ロケは当時のアフガニスタンに良く似た、中国新疆ウィグル自治区のカシュガルで行われたのだそうです。カシュガルと言うとちょっと思い入れが深く、そこでの撮影と言う事を作品を見る前に知り、又興味深く見てしまいました。 アミールのお産の時に母親は死んでしまい、その事で父親は自分を嫌っているのではないかと思っているアミール。そうではないのですが、アミールはどこか気が弱いところがある為、父親にとってはそこが気に入らないし心配の一つでもあるのです。 一方ハッサンは、召使でアミールたちとは他の人種でありながら、いつも明るく勇気があり、アミールとは対照的です。しかし、彼らは一緒に凧揚げをし、映画を見、お話を聞かせ、読んでもらう、大親友。だけど、どんなに仲良しでも、まだ2人の関係が壊れていない時点から使用する側、される側という立場がスクリーンのちょっとした場面に見え隠れし、とても切ない。 ハッサンを暴行の場で助けてあげられなかった自責の念があったのかもしれません。ハッサンが健気にしていても、いやもしかしたらだからこそ自分が余計惨めになったのかもしれません。それとも、ハッサンは召使だとか、人種が違うとかそういった思いがアミールの根底にあったのか、もしくは芽生えてしまったのか。何であの時 「ごめん」 の一言が、いいえ、そうじゃなくても今まで通り、普通に話す事が出来なかったのか。弱かったからかもしれないし、幼さゆえか。 映画の前半、少年時代の2人のエピソードは今は無き美しいアフガニスタンと大切な友情が壊れた事への悲しさとで、何度も溜息をつき、ハッサンの健気さと強さに涙することになるのです。アフガニスタン人の素人の2人の少年をキャスティングしているのですが、そうとは思えない程2人とも自然だし、心に訴えかける演技をしています。 それから数年が経ちアメリカでの暮らしはおそらく大変だっただろう、というのを物語る父親の変わりよう。その辺りの演技の巧さが光ります。アミールも、日々を送るという事だけで精一杯だったであろう亡命後、いろんな事があり過去を振り返る余裕はなかったのかもしれません。そして強くなっていったのでしょう。しかし、結婚もして自分の本が出版され、幸せを味わった途端、旧知のラヒム・ハーンから1本の電話が入ります。 タリバン政権下の荒んだ国の様子や公開処刑、そしてラヒムの手紙から知る衝撃の事実、タリバンのアジトで見た衝撃の事実と、ショックが次々に私に襲ってきます。タリバンを獣のようにしか思っていなかったけど、元来彼らもただ国土を守りたいが為に必死だったのでしょう。国を出て行った者は、それはそれで辛い目にも遭ったでしょうが、国に残り戦った者には彼らにしか分らない思い、苦労もあったのだと。もちろん、元来の思いがそうでも今の彼らのやり方は論外ですが。 映画はアミールがアフガニスタンに渡ってからの部分は少々唐突で、急展開で、タリバンのアジトから・・・のくだりは、ごく普通のハリウッドエンターテーメント映画の流れで・・・それまでがじっくりと心情を読み取れる、ハリウッド映画とは思えぬ展開で進んでいただけに、残念です。 しかし、最後まで前向きだったハッサン、アミールを慕っていたハッサン。アミールに手紙を書くために字を覚えたハッサン。彼の相も変らぬ健気さに又涙が・・・。彼の強さと、そして何ものにも変えがたい○という強い絆がアミールを又強い男にさせたのかもしれません。 アミールの父親の言葉にもありましたが、物事は時間が経つと取り返しがつかない方向へ進んでいってしまう事があります。(これは彼自身の事も言っているのかもしれません)。過ちや謝罪は気づいた時にケリをつけておかないと手遅れになる、私達の日常も同じだと、反応してしまいました。家族を大切にしなければ。そして、平和な日本に住んでいることへの感謝も含めて。 ハッサンの笑顔が目に焼きついています。 アフガニスタンに平和が戻って欲しい、緑が又戻って欲しい。 おすすめです。 THE KITE RUNNER 2007年 監督:マーク・フォスター 脚本:デヴィッド・ベニオフ 原作:カーレド・ホッセイニ 出演:ハリド・アプダラ、ホマユン・エルシャディ、ゼキリア・エブラヒミ、アフマド・ハーン・マフムードザダ、ショーン・トープ、アトッサ・レオーニ、アリ・ダネシュ・バクティアリ 他 君のためなら千回でも スペシャル・エディション(DVD) ◆20%OFF! 君のためなら千回でも(上) 君のためなら千回でも(下) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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