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カテゴリ:小説過去作品
読み始めはこちらから…雪乞・雪安居(ゆきごい・ゆきあんご)1
僕の見ているものは、雪さ。いつも気がつくと、窓辺に一人で立ち尽くしていた。地面や空には、わけのわからないさびしさがあって、いつしかその広い世界に包まれてゆく。まわりのものは何も見えなくなって、ぽつんと一人で静止して立っている。 祭だと思っていればよかったのだろうか。そう、一種の。ある一定の期間、気を張って、準備の計画を練って。<その日>に体の全神経が最大限に高揚するためなら、どんなに苦労をしても、じりじりを耐え抜いてみせる。そんなふうに。 だが僕は、祭壇のいけにえになるのはごめんだ。一方の不幸が一方の幸福をもたらす。祭りが終わったそのあとには、何も残りはしない。 あるいは、一つのゲームだと思えばいいのだろうか。困難を打ち砕き、手探りで進んでいく。 しかし、そのラストシーンには、僕にとって何も胸おどらすものが待ち受けていない。ファンファーレも、王女のくちづけも。 「何か悩みがあるのなら言って頂戴。…誰かに、いたずらでもされたの?」 保険室のばばあ…おっと養護教諭(まだ、校内にいたのか)がわめいている。 シュ____・というやかんのお湯のわく音。暖房のききすぎた室内の空気に、さっきまで氷点下に突っ立っていた僕の体が、ふにゃふにゃにされていくみたいだ。 僕は水蒸気の汗をかいたサッシの窓を通して、雪空の一点を見据える。…そしてまた目を閉じる。まぶたに残った雪が、青みを帯びている。夕暮れが近づいてきたからなのだろう。 そして頭の中に、だんだんと蒼く沈んでゆく空の色を思い描いてみる。…僕の一番好きな色は、こんな、ただ深々と日の光がぬけてゆくだけの蒼水色なのだ。 解決などしっこないのさ。いくら考えても。小さな流れにのれない自分を、正当化するための言い訳なんて、誰に言えばいいというんだ? …僕はきっと、僕に問い続ける。それが僕を苦しめ続ける結果になるのはわかっているのに。 なぜなら…僕が僕を苦しめる程、僕の関心の対象は、だんだん僕の心の中の風景にだけ向けられてゆくからだ。 そしてこの窓の外の雪景色も、…針の穴を吹き抜けるほどの小さな風の動きにうつろう一かけらの雪の結晶のように微妙な変化でも、僕に感傷を与えずにはおかないだろう。 そうして、おそらくいっそう激しく降り続くであろう雪ぞらの色が、重苦しく蒼白くなってゆくことでさえ、ひどく鮮やかで生々しく、美しいと思うようになるに、違いない。 FIN ※この小説はフィクションです。 (私が高校を卒業したころに書いた作品です) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.05.10 19:40:04
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