カテゴリ:サユリ
肌の白い、女性。とっつきにくい。
僕が最初に彼女に抱いたイメージなんてそんなもので、すましたようにタバコを吸う仕草なんてとても歳下には見えなかった。会話と言えば、バイト仲間に混じって話すどうでもいい雑談だけで、これ以上踏み込むことは無いだろうな、とぼんやり思いながら口から煙を吐いた。 確か、冬になるか、ならないか、それくらいの頃だったと思う。 クローゼットから少し厚めのジャケットを引っ張り出して、さみー、と言いながら原付で向かったバイト先で僕は彼女と初めて会った。喫煙室でしか会話を交わさない彼女。正直言うと、僕の苦手なタイプ。社交的な感じはしたけれども、それは処世術のひとつで素は見せてない感じだったし、何より僕は無邪気によく笑う子の方が好きだからサユリの顔に張り付いたようないつも同じ笑みは悪い言い方をすれば、不快、という感情が一番近い。良くも悪くも僕らはそれほど会話をしなかったしそれで僕は良いと思ってた。 何かとイベント好きのバイト仲間が、サユリの歓迎会をやろう、と言い出したのは、サユリが入ってきてから1週間後の金曜日で、いつもの様に気付いたら幹事は僕。幹事と言っても、人数をざっと数えて、安い居酒屋チェーン店に適当に予約を入れる。ただ、それだけ。いつものこと。 主役のはずのサユリそっちのけでバカ騒ぎしてるバイト仲間はたまに思い出したみたいにサユリに酒を飲ませて僕はひたすら店員に注文を繰り返し、最後にチューハイをひっくり返して顰蹙を買った。いいんだ。会費を多めに取って自分はタダ酒にしてやったし。それもいつものこと。 ただ、ひとつ。ひとつだけいつもと違っていたのは店を出た後歩く方向がサユリと同じだったこと。バイト仲間は口をそろえて冷やかしたけど夜道を女の子一人で帰らせるほど、僕は能天気じゃない。あいつ等がゲーセンに向かって歩く方向と逆向きに僕らは歩いた。それは僕の家とも逆方向だったけど。その時なんて下心なんか一つだって持ち合わせてなかったし、僕が間を持たすために話したどうでもいい会話にいちいち社交辞令のようなリアクションを取られるのも何だか好きになれなかった。 家の近くまで送っていった後に、溜まり場になってるゲーセンに向かった僕をやたらニヤニヤしたバイト仲間が迎えて「サユリどうよ、どうよ!?」と繰り返したけど別に、とだけ言ってスロットマシンに100円玉をねじ込んだ。ホントに、別に、何も。それに、酔っ払ってたこともあって、会話した内容なんてろくすっぽ憶えてない。 ただ、思ったよりもサユリの髪の匂いがいい匂いだったことだけ、憶えてる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.02.27 13:05:28
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