きょうもホテル層雲の日帰り温泉へ行った。露天風呂は雪が舞い、源泉からの湯量が少ないせいか温めだった。別館にある露天風呂から出て、廊下を歩いていると、劇団大和の座長に会った。女形も男役もこなす座長は、普段は女性っぽい歩き方をしているのだと思った。早めに行って芝居会場の場所取りをして廊下に出ると、挨拶をされたのでよく見ると、劇団の志賀加津雄だった。素顔は、初老の子煩悩なお爺ちゃまという印象だった。この人の演技も年季が入り、見事だといつも感心している。
劇団大和の公演は、先週の14日から日替わり芝居が一新して、今日の演目は、「丁の目の甚太郎」という痛快明快なドタバタ時代喜劇だった。面白くて目が離せない一時間だった。恋敵の相手と相撲で勝負を挑んだ悪役の座長が、あっけなく投げ飛ばされて、ステージから場内まで転がり落ちたのには驚いた。その時、観客の一人が、両腕を上げて脇に振りながら、「こうやって相撲を取るんだよ!」とヤジを投げた。すると座長はすかさず、「俺は高見盛じゃねぇ!」とアドリブでかわした。そこには、生の芝居でしか味わえない観客と役者が一体となる醍醐味があった。このあたりはさすがに、座長の役者としてのベテランの域を感じた。