2。2.そういえば志信さんがなんの仕事をしてるかも知らない。 ・・セックスなしでは会えないか。 じゃあ、売春か? 「アヤ。起きてるか~~~?」 先生がほっぺたを触りました。 氷があてられたみたいにびっくりしました。 「・・なに?なんなの。」 「お前がもしも売春してるなら、 やめさせるのが教師としての俺の仕事だろうね。 学校には関係ない放課後の行為でもさ。 アヤはおこずかいが欲しくて自分の体を売るような子には見えないんだけど・・ 俺は今の時代を知らないのかな。」 いや、じゅうぶんお金に釣られる子ですよ。 ガボールなんて高価なアクセサリーを身につける高校生なんて、そうはいません。 アヤの左耳の銀のピアスも、細い指にはまる指輪も。 ネクタイをするときに外したネックレスも・・・。 高校生が、そう簡単に揃えられるものではありません。 「俺は・・。」 アヤは自分の指輪を見ながら呟きます。 瞳はとろんとして。頬はうっすら赤くて。唇がつややか・・・・なのは揚げ物食べたせいですか。 「ん?なんだアヤ?」 先生は冷静になろうと思いました。何を言い出しても受け止めてやろう。 そのつもりで連れ出したのですから。 でも困りました。 これが女の子なら先生はおもいっきり口説いちゃいます。 アヤは男子。しかも自分の生徒。でも可愛い。あらあらどうしましょう。 「俺・・。」 酔ってしまって考えがまとまりません。いつのまにか指輪を外して指で弄んでいます。 「あつい・・。」 ネクタイを引っ張って、緩めたがります。 先生が手を伸ばして、ネクタイを外してあげました。 「うん。な~んでも聞くから。なんでも言いなさい!ほらど~んと!」 先生は嬉しそうです、ぐいっとグラスのビールを飲み干します。 「・・はーー!うまいっ!!さあ、アヤも飲むか!」 「・・のめません・・。」 シャツのボタンを二つ外しています。 「あついよ。」 上着はもう脱いでいました。 「アヤ。脱ぎすぎ。どうしたんだお前?」 「・・こんなの脱いだうちに入らないでしょう。」 はあ。と息を吐きますが・・。 「あらー。本当に酔っちゃった??アヤ、水飲むか?」 先生がアヤに触ろうとしたときに、アヤの携帯がぶるぶる鳴りました。 「アヤ。鳴ってるぞ?」 「・・・?」 もう眠そうなアヤが携帯を見ました。「あ。」着信に ノブ と出ました。 のんびりと携帯に出ました。 「・・ノブ?久しぶりじゃん。」 ノブはアヤの友人で、志信さんの弟です。 <アヤ、変な声。どうした?> ノブの声ではありませんでした。 「・・・あ?」 え? <まさか未成年のくせに酒を飲んでいるのか?今どこにいるんだ。> 「え?・・あの。・・ええええ?」 <なんだその馬鹿みたいな驚き方は。迎えに行く。どこにいるか言ってみろ。> この命令口調の言い方をする男は、アヤはひとりしか知りません。 <なにを黙っているんだ。逆らう気か。 本当に可愛くないな、何度あっても基本的な性格は変わりやしないな。> あら・・むかっときましたよ? 「今。先生と一緒だから。送って貰うから平気ですよ。」 会いたいと思ったのもすっかり遠くにいきました。むかむかしています。 <先生だあ?飲酒運転は罰金ものだ。しかもひととしての道を踏み外す恐れを伴う。 迎えに行く。 それともそこから歩いて帰るのか?アヤ。 どこにいるかなんて・・・このノブの携帯でわかるんだよ。> ぞくっとしました。会いたいと思いました。 耳元ではもう声は聞こえなくて、ツーツーと機械音がするだけですが。 繋がっているって思うとこんなに安心してしまったり、期待してしまって気持ちが落ち着かなくなるものなのでしょうか。 まちがって飲んだアルコールのせいでしょうか。 「アヤ?ノブって・・・瀧本ノブのこと?」 先生が、携帯を大事そうに握っているアヤに不思議そうに聞きます。 「同じクラスだなあ。ツレだったんだ?」 「ああ。はい。」 先生の声に、はっとしました。 今まで、ずっと。志信さんのことだけ考えていたのです。 ところが先生がアヤの知らないことを話し始めました。 「あいつの家、ヤク●さんだろう。の割りにノブは普通の少年だよな。 先入観でひとを見すぎかな?俺は教師失格かな?なあアヤ?」 「・・・なんて?」 「俺は教師失格かな?そうじゃないよね~アヤ。」 「・・その前!」 「・・なんだっけ?アヤちゃん忘れちゃったよ。」 「飲みすぎだ!!・・瀧本が・・ヤク●って?マジで?」 アヤは一気に酔いがさめそうです。おかげさまで。 確かに・・・・・センチュリーに乗ってた。金の払いが良すぎる。態度が偉そう。 「えーーー!!そんなひとに俺は・・!」 アヤは動揺しすぎて思わず声にだしてしまいました。 この状況で、思ったことをそのまま声に出してはなりませんよ・・。 ろくな目に遭いませんよ。 「俺はなんだ??アヤぁ?・・言ってごらん。」 先生がにやにやしています。 この表情、もう確信を持っていますね。 「相手がノブ?子供同士でなにが楽しいんだ?しかも子供から集金してたのか?」 「してません!」 「じゃあなんで瀧本の名前でびびるんだ。・・組の人間がおまえの客か・・? おいおいアヤ?まずいぞ?」 「まずくないよ。」 それ肯定ですよアヤ。 「アヤ。そのうちクスリ盛られるぞ。悪い事は言わない。すぐ切れろ。」 確かに、クスリは盛られそう。 いい感じにさせられそう。 「・・・そうはいきません。俺はお金が必要です・・。」 お金じゃないとわかりかけているのに。そんな言い方しか出来ないの? 「親からのこずかいで足りなければバイトしろ。売春以外で。 ・・許可してやるよ、なんとでも言ってやる。とにかく客と切れろ。」 今更時給いくらのバイト・・・・・いいえ、そんなことじゃないでしょう。 「俺、違うんです。俺はね、先生。」 3 へ。 |