鋳物屋おばさん

今日はいよいよ
主人の義顎を入れる日だった。

今までは仮の義顎だったが
今度はしっかりした本格的なもので
調節に3時間近くかかった。

右の頬全部と
上あごと
下あごと
奥歯を
取ってしまっているので

口の中の空洞にふたをしなければならない。

口は
左が２センチあくぐらいで、

右にいたっては縫いこまれていて大きく開かない。
それが最大の難関だったようだ。

大きな口の中の
切り取られた空洞に
ふたをすることは問題ないのかも知れないが、

それを入れることが問題なのだ。

その為に
時間をかけて
少しずつ
肉の変わりになるものを継ぎ足していくのだ。

私は傍で
自分も口をあけんばかりに
一緒に治療を受けた。

今日のところは
まず第1段階と言うことで終了。

次は木曜日。

先生も
お父さんも
大変良く頑張りました。

そして、
なんと
「ばっぶべぼ」が、
ちゃんと聞こえるではないですか

さすがですね、
平野先生。

すごい！！

先生に
良いいお婿さんを探してあげなくては。・・・
もしや結婚してるのですか？


病院に帰ると
主人の親友のｋさんが入り口で待っていてくれた。
ほんとに心配かけました。

一番知らせたくて
知らせられなかった人です。

最悪の場合が怖かったし

良い兆しが見えれば
もう時間はたっぷりあると思えたし、・・・

今はこうして
退院に向けて準備をしている所を見ていただけて
本当に良かった。

そして大変ご馳走様でした。

主人が

「退院したら皆で飲もう」

と言った一言は

世間では

「又飲もう」

聞きなれた、
たったこれだけの言葉ですが、

主人と、私にとっては

「希望があって、」
「先の楽しみを言葉に出来て」

しみじみ、幸せでした。

又、顔を出してやってください。



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