東風(こち)吹かば
「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春な忘れそ」菅原道真が九州福岡にある大宰府に左遷されるとき、日ごろ愛していた自宅の庭にある梅の木に別れを告げた歌です。意味は、「春になって東風が吹いたなら、その風に託して配所の大宰府へ香りを送ってくれ、梅の花よ。主人のこの私がいないからといって、咲く春を忘れるな。」その後、この梅は、大宰府に左遷された道真のもとへ飛んで行ったといい、これが「飛び梅」の伝説であるそうです。また、年間を通じて天満宮に続く、沿道に「梅が枝餅」という餡の入ったお餅のお菓子があるのですが、これがまた美味です。焼きたても美味しいんだけれど、冷たいままでも美味しく食べることができます。私は、福岡の出身です。お正月のお参りや習字のコンテスト(私は習字は苦手だったけど墨の臭いや毛筆を紙に滑らす緊張感が好きです)や受験の時の神頼みなど太宰府天満宮には何度ともなく訪れています。もうシーズンは過ぎてしまいましたが、二月ともなると太宰府天満宮に梅林があってよく遊びに行っていました。汚れを知らぬが如く純白の綺麗な梅の花の開花ともに園内には、鼻腔をくすぐる「春の訪れ」を思わせる清々しい梅の花の匂いが立ち込めているのを思い出しました。故郷、福岡を離れて30年以上が過ぎようとしています。やはり、年をとると故郷が恋しくなってくるものなのでしょうか。できれば、福岡近郊で職を見つけ、そこで暮らしたいなどと思ったりもしています。しかし、今の職務のこと、今後の人生のことなどを思えば、それは単なる我侭なのでしょうね。まだ、東北の地には、桜の花さえ蕾のままで春を待ちわびています。せめて、夢の中ででもあの芳しい梅の香りを飛梅が届けてくれるのを願っている今日この頃です。