可愛いに間に合わない(ファッションと猫と通販な日々)

前回です♪↓
第百十一段～怪物～

★☆★☆
第百十二段

奇妙に暖かい感情を残したままでホワイトは穏やかにジョンに訊ねた。

『何か質問したいことはあるか？』

ホワイトの言葉に

ジョンは視線を空(くう)に彷徨わせて考えを巡らす様子を見せた。

やがて視線をホワイトに戻し

『会えますか？』と言った。

『ふたりに？

もちろんだ。

彼らは君に質問したがると思う。

ミックが離脱の理由を君に訊くようにと言ったから。

酩酊状態の時の記憶が残っていればの話しだが。』

『今どこに？』

『"お仕置き部屋"だ。

ただし、まだ麻酔弾とアルコールのせいで

泥のように眠っている。

それより、大尉。』

ホワイトはジョンをじっとみつめた。

『殿下を悪く思わないでくれ。彼はもう決して君を離さない。

そのためだったら何だってする』

一時通い合った頼りなくも絆と呼べるような細い糸を

慎重に手繰り寄せるようにしながら

囁くように言った。

そして手を伸ばし

先程ジョンが投げたカードをテーブルから取り上げて

ジョンに差し出した。

『持っていて欲しい。殿下の頼みの綱だ』

ジョンはしかめっ面になり、少し身を引いて見せた。

このカードは発信器つきだったのだ。

すぐにその疑いを持たなかったのは大チョンボだ。

出入りは自由でも、行き先は常に把握される。

だからジョーたちが外に出てからの確保が速かったのだ。

火星のドームシティは巨大都市だが

元反政府の人間たちの多くが辺境の冥王星を避けて入植したためもあり

人々が密集して生活している。

特に人口密度の高い港近くの繁華街にまぎれ込んでしまったら、

人探しはやっかいを極めるだろう。


王子の魔法のカード。


これには他にも何か仕掛けがありそうだ。

例えば殺人ヘアコームに化ける。。。


『知ってしまったからには、これが今後も

貴方がたのお役に立つとは限りませんよ』

ジョンはそう言ったものの、

我ながら負け惜しみにしか聞こえなかった。

ホワイトはその言葉を聞くと胸を反らせながら自信たっぷりに言った。

『もし君がこのカードを持たないつもりなら、

殿下は君に首輪をつけてご自分に括り付けておくだろうな。

間違いなくそうする。

保障するね。』

脅しでも冗談でもないようだった。

ジョンの脳裏にポールがかつて飼っていた真っ黒の大型犬が浮かんだ。

あの軍用のミュータント犬は、

この種のご多分にもれず散歩が狂うほど好きで、

その間中、神経症のように

定期的にポールの後ろに回り

尻の匂いを嗅いでは涎を垂らしていた。

その光景が思い出された時、ぞっと鳥肌がたった。

それで結局ジョンはカードを受け取りポケットにしまった。

そして少し意地の悪い気分になって言った。

『このカードに頼る前に、

もう少し警備を厳重にしたらいかがでしょうか、サー。

酔っ払いが簡単に出入りできるようでは、

殿下をお守りすることもできないのでは？』

『勿論その通りだな。』

ホワイトは素直にうなずいた。

『だが、あのふたりは想定外だ。

まったく。

私の兵の何人が今日病院送りになったことか。

とりあえず、そのカードに少し制限を加えたよ。

シアン殿下は反対なさったが、背に腹は換えられない』

彼は両手首の内がわを使って眉の辺りを強く揉むように動かした。

そしてもう一度言った。

『他に何か訊きたいことはあるか？』

ジョンは小さく首を横に振った。

中庭で見かけたドールのことがふと頭をよぎったが

『今のところは』と言った。

『よし。それでは、君は今からシャワーを使う。』

と、ジョンの応えを受けてホワイトは言った。

『スクリーンでとはいえ陛下に謁見するのに

その見てくれではあんまりだろう。

少々身綺麗にしたまえ。』



つづく









↓次回です♪
第百十三段　～脱皮～


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ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン　William Feng 以上全部同じ人（笑）

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