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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:映画
ウルグアイの靴下工場を経営するハコボ。ブラジルから疎遠になっていた弟エルマンが訪れることになり、ハコボは従業員マルタに夫婦の振りをして欲しいと頼む。偽造夫婦のもとに、エルマンが加わり、嘘の生活が始まるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ この作品も、先日の「羊の啼き声」と同じくサンダンス映画祭の作品で、カンヌなどで二つの賞を獲得しています。 日常のなかにある非日常を、淡々と静かに描きます。 主要登場人物は表紙の中年男女の三人だけで、カメラは固定。 なんとも地味なのに、目が離せなくなるのは、役者さんの魅力と、飾らなすぎてよりリアルに映る、普通の人々の生活が面白いからなのかもしれませんね。 靴下工場経営者のハコボ(右)と従業員マルタ(中央)は、互いに独身。 長年一緒に働いてきて、遠慮はあるけれど気の知れた仲です。 ある日、ハコボの弟エルマン(左)が久しぶりにウルグアイに帰ってくることになり、ハコボはマルタにおずおずと偽の妻役を演じてくれるように頼むのです。 認知症の母親を亡くなるまで一人で看病し続け、今にも潰れそうな小さな工場を切り盛りしてきた兄の人生と、外国へ行き大きな靴下工場を経営して、家族もお金もある弟の人生は、あまりに違いすぎます。 弟に対する嫉妬とか憎しみとか全てにおいて負けていることへの羞恥心を抱く兄の心情は、とても複雑。 少しでも良く見せたくて偽の妻を用意したりもしたけど、善良な人間ゆえに、当たり障りの無い態度で、感情を表に表わすことはありません。 だからこそ、観る側はその心の内を余計に想像して感情移入していくようでした。 数日が過ぎたとき、話の流れで一緒に小旅行へ出ることになってからは、ささやかなロードムービーの始まり。 ここから、ただの経営者と従業員だったふたりの心境が、少しずつ変化していく様が楽しめます。 陽気な弟エルマンになんとなく惹かれていくマルタと、嫉妬を覚えるハコボの微妙な関係に注目です。 あえて劇的な何かがなくっても、映画は楽しいもの。 淡々とした日常や、その中にある非日常を観ることの醍醐味が味わえます。 毎日は同じことの繰り返し。 その日常が破られて、またそこへ戻った時、何かが変わってしまっている… 監督が意図して残した曖昧な結末とその余韻に、じっくり浸かれる良い作品でした。 ちなみにタイトルの「WHISKY」は、写真を撮る時に言う言葉。 日本の「はい、チーズ」と同じです。 作品中で登場する何度か写真を撮るシーンで、この「WHISKY~」という言葉がでてきます。 作り物の笑顔と一緒に。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 ホアン・パブロ・レベラ 、パブロ・ストール 製作 フェルナンド・エプステイン 編集 フェルナンド・エプステイン 脚本 ホアン・パブロ・レベラ パブロ・ストール ゴンサロ・デルガド・ガリアーナ 美術 ゴンサロ・デルガド・ガリアーナ 撮影 バルバラ・アルバレス 音楽 ペケーニャ・オルケスタ・レインシデンテス 出演 アンドレス・パソス 、ミレージャ・パスクアル 、ホルヘ・ボラーニ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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