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2006.12.04
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カテゴリ:イラン映画


  イラン北部の村。学校のガラスを割ってしまった少年クーチェキが、お金もないのに弁償を迫られ、新しいガラスを取付けるために奮闘する姿を、緊張感あふれるタッチで描く。


 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



  イラン映画には子どもたちが主人公になる作品が多いですね。
生活の貧しさが底辺にあって、そこから主人公の頑張る姿を捉えて、なにか見る者に熱く語りかける感じ。
淡々としているけれど切実な思いが伝わってきます。


  ボールをぶつけて学校の窓ガラスを割ってしまった一人の少年が、この物語の主人公。
窓を直すまで教室に入れず、頼みの父親は仕事に追われていて彼を助けるお金も余裕もありません。

「今日中になんとかしなければ、学校をやめてもらうしかない」

そういわれたクーチェキは、放課後、友達になった転校生とともに、彼のお父さんが働く発電所へ行ってお金を借してもらいます。
そしてひとり、父親の職場で寸法が書いてあるメモをもらい、丘の上のガラス屋さんまで走っていくのです。
強い風の吹く寒い秋の日。
遠い道のりを懸命に走って、ようやくガラスを手に入れるクーチェキでしたが――



今まで出会ってきたイラン映画は、とにかく‘大人が子どもを助ける’という当然の図式があてはまりません。
当然と思っている価値観が通用しないのです。
子どもたちがどんなに苦しんでいても、親身になってくれる人はわずかで、自分の力でなんとか解決していくよりほかない状況があたり前。
これは、イランばかりではなく貧しい国々では当然のことなのでしょう。

細い体で、大きな裸ガラスを両手に抱え懸命に駆けてゆく姿は、もう見ていられません!
風にあおられ、川に浸かり、疲れてヨレヨレになりながら、ひたすら走り続ける。
いつ転ぶのかと思うと、もう気が気ではなく。
ようやく学校についても、窓は高くて、積み上げた机といすの上で身動きがとれません。
もうやめてーと言いたくなるほど怖い。
緊張に緊張を重ねて、手に汗握って、絶対割れるのが分かっているからこそ、もう絶対目を離せませんでした。
誰も助けてくれない…


こういう状況下で生きる子どもたちは、諦めたらもうそこで本当に終わってしまうのでしょう。
だから諦めるなんてできない。
クーチェキも最後まで諦めない、そういう強い気持ちが思った以上に後味を良くしています。


ガラス屋のおじいさんがおっとりとた優しい人だったり、転校生のおかげでお金だけは手に入ったり、息のつけるシーンがあるのはいいです。
転校生が雨をめずらしそうにずっとずっと眺めているシーンが好きでした。
北部へ来て生まれて初めて見た雨に、彼は勉強どころではありません。
無邪気さを捉える視線が好きでした。こういう感覚はどんな国もきっと同じはずですね。



脚本は「白い風船」でも脚本を担当したイランの有名監督アッバス・キアロスタミ。
監督作を観た事がないので、是非探してみたいと思っています。
TSUTAYAオンラインにはないみたい。 



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監督  モハマド=アリ・タレビ
脚本  アッバス・キアロスタミ
撮影  ファルハード・サバー
出演  ハディ・アリプール 、アミール・ジャンファダ
     アミール・ジャファンダ 、マジッド・アリプール
    






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Last updated  2007.08.29 17:40:09
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