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カテゴリ:オーストリア映画
オーストラリアへの移住に憧れる一家の3年間を追った絶望の物語。“一家心中”という破滅へ向かう家族を、淡々と独特の色彩で描き出す―――。 生きることは行為の積み重ねでしかないと、ハネケさんは言います。 その通りに、家族は毎日、日々の行為を重ねていく。朝起きて朝食を食べ、歯を磨き、娘を学校へ送り、妻を職場に送り、夫は会社へ行く。 こうして描かれた2年間の断片に、闇はさほど見えません。 オーストラリアを憧憬する思いは確かにあったのかもしれないけれど、家族が求めた救いの地が存在しないことだけは、わかる。家族はいったいどうして一家心中という悲劇を選んだのか、監督でさえ答えをしらない。 実際にあった事件を基にした、重く苦しい物語でした。 固定カメラで行為だけを淡々と描写し、狂っていく歯車を感じさせながら、具体的ななにかは一切語られることはありません。 3年目のある日、突然その死への行為が始まります。 家具という家具を、想い出の品を、家の中全部を破壊しつくして、順番に薬を服用して死んでいく家族。あまりのことに、ただただ怖ろしいのだけれど、その行為の意味さえ分からずにあっけにとられました。とにかく怖かった。斧と鋸で生きた証すべてを無に返すなんて信じられない行為でした。実際にあったこととはにわかに信じがたい。 徹底したハネケ節は不快さばかりを残して、一方的に物語りは終るだけ。 一家は死を選んだ。そこへ至る心理的なプロセスなど意に介さず、一方的に死んでいくこの映画は、形而上のものだと思う。個人が発する形も色も匂いもありません。 説明はないから、そして答えもないから、当然のように鑑賞後、考えさせられてしまいます。 なぜ?と・・・。 本作はハネケ監督のデビュー作。元気のない方にはおすすめできない作品でした。鋭利で、冷たい。この悲劇に同情さえ起きない、それは不要なものなのでしょう。 監督・脚本 ミヒャエル・ハネケ 製作 ファイト・ハイドゥシュカ 出演 ビルギッド・ドール ディーター・ベルナー ウド・ザメル ゲオルク・フリードリヒ (カラー/104分/オーストリア/DER SIEBENTE KONTINENT) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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