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行きかふ人も又

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2008.06.20
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カテゴリ:アメリカ映画

 ハリウッドに拒否され続けたという脚本家のダルトン・トランボによる、たった一度の監督作、そして名作。
第一次大戦で手足も感覚器官も失った青年の苦闘を通して、生命の尊厳と反戦を訴えます。
瑞々しい回想シーンはカラー、現在はモノクロにして描きます。オーソドックスで、余計なもののない、奇跡のように存在している作品なのかもしれません。

実験的に生きながらえさせられたジョニーは、手足もなく言葉さえ発せない自らの状態を知り、病床で絶望に沈みます。自分の意思とは関係なく命は続き、気の遠くなる膨大な時間の中で、できることは過去を回想することと、夢をみること。それはあまりにもツライ現実です。

尊厳死について描いた作品は『海を飛ぶ夢』が記憶に新しい。生命に対する深い思いは、作られた年代に関係なく同じく重いです。
ただ『海を飛ぶ~』のラモンは、自らの死を自らの決断で、他力を借りてでも執行したけれど、ジョニーの場合はそれさえも許されない地獄の苦しみで幕が下りていきます。

「SOS・・・SOS・・・SOS・・・」

唯一動く頭をベッドに打ち付けてモールス信号を送り続ける彼の死を渇望する姿に、何も感じないとしたらそれこそ人間失格。
このジョニーを観てしまうと『ミリオンダラー・ベイビー』の主人公さえ、自らの舌を噛み切る自由があったのだと思う。
それさえ許されない生とは、想像するのでさえ恐ろしいです。

 20080409_2.jpg johnny23.jpg
回想シーンに登場するイエス(サザーランド)       戦地へ向う駅で、恋人との別離


ジョニーはまるで、民主主義の申し子のように思うのは私だけでしょうか。
男手ひとつで育てられた彼は、幼い頃父親から「宝物は琥珀を使ったこの釣竿ただひとつ」と聞かされて育ちました。けして息子を宝物だと言ってはくれないまま、「これからの時代、若者は民主主義のため戦争へ行くべきだ」という言葉を信じて出征するのです。
回想のなかで登場する十字架作り職人のイエスは、不思議な存在。見た目もまるきりイエスで、その言葉ひとつひとつが彼の悲劇に理解を示し救いを与えます。
その他にも、献身的な新しい看護師が、ジョニーの胸に文字を綴り、会話を試みる件など、素晴らしい場面が数多くありました。
一人の人間の究極の救いと絶望を同時に描いたすごい映画だと思います。


ちなみに、ダルトン・トランボが脚本を担当した映画には、『ローマの休日』『栄光への脱出 』、キューブリックの『スパルタカス』、『パピヨン』などなど有名な名作がいっぱいあります。



原作・監督・脚本  ダルトン・トランボ
製作  ブルース・キャンベル
音楽  ジェリー・フィールディング
出演  ティモシー・ボトムズ  キャシー・フィールズ  ジェイソン・ロバーズ
マーシャ・ハント  ドナルド・サザーランド
(カラー&モノクロ/112分/アメリカ/JOHNNY GOT HIS GUN)







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Last updated  2008.06.21 22:31:04
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