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テーマ:本のある暮らし(3315)
カテゴリ:本(編集)
川上弘美は『センセイの鞄』で初めて触れてから他のも手に取るうち、すっかり虜になった作家さん。
『蛇を踏む』『ニシノユキヒコの恋と冒険』『パレード』と、ひそかにコンスタントに読んでいて、どれもほんとうに好きになれる作品だった。 本棚に揃えておきたい人です。 この本がまた、とっても奇妙。 川上弘美が綴る「謎の日記」。 一見何事もないような平和な日常は、近所を散歩してお茶を飲み世間話をする平穏な日々。でも、その時空は静かによじれ、ヘンなモノたちがすました顔をしてそこかしこに息づいている。 四季を通じて淡々と、ときには不気味にときには可憐に綴られる世界を彩るのは、イラストレーター山口マオのカラー・イラスト約30点。 奇想天外でヘンテコ! まさにそのとおり。 自身の夢をヒントに、ゆっくりペースで綴られていったという一遍一遍がおかしくて、シュールで虜になってしまう。 妊娠中のもぐらに遭遇したり、中くらいの災難に見舞われたり。 南伸坊さんの解説から拝借するならば、「奇妙で不思議でありながら、やすらかでおおらかでたのしい。ついでに言うと主人公の私が何気に艶っぽい」かったりするのだ。 川上さん船頭の妄想の船に揺られていることの気持ちよさといったら、ほかではちょっと味わえないものがあると思う。 好きだなぁ。 南伸坊さんの短い解説のなかには、冒頭から興味ぶかい名前が登場した。 内田百間、稲垣足穂。どちらも、わたしの最近のお気に入りだ。 内田百間のようにいっぺんに好きになって、稲垣足穂の『一千一秒物語』のように何度も開いてしまう本―――なんだそう。 好みというものはたしかに存在して、川上弘美の奇妙さが好きな人は、やっぱり似たような本を好んで読むのだなぁと、ヘンに感心した解説だった。 引用させてもらってばかりの感想ですが、タイヘン楽しかったです。 ちなみに山口マオの挿絵がかなりいい。内容にぴったりだ。 読んで楽しく、見て楽しい。 短い短い夢の断片のような、温かくも枯れた味わいのある一冊。 最後に短いけれど、山口マオ×川上弘美の対談が収録されています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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