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2011.01.16
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カテゴリ:インド映画

 ニコライ・ヴァシーリエヴィチ・ゴーゴリ(1810~1852)はロシアの小説家。
生涯、独身で孤独。晩年は信仰心に目覚め、鬱病で極度に衰えた身を、厳格な神父の元に置き、断食を続けながら緩やかな死を迎えたという。

「われわれはみなゴーゴリの『外套』から出た」

ドストエフスキーが残したものだとされる、この言葉。映画をちゃんと理解するには、この言葉の意味と、ゴーゴリの『外套』が必要かもしれない。


 1977年、アメリカの大学で学んでいたアショケは、故郷カルカッタで、アシマと見合い結婚をした。新婚生活をニューヨークでスタートさせた夫婦だったが、慣れないアメリカでの生活にアシマはひどく戸惑い、そんな妻を優しく助けるアショケなのだった。
ふたりはやがて、待望の長男を授かる。インド式に名をつけることの難しいアメリカで、その子の名前は<ゴーゴリ>と決まる。しかし、ゴーゴリは成長するに従って、自分の名前を嫌がるようになり、大学生になると<ニキル>と改名してしまうのだった―――。


インドから嫁いできたアシマにとって、アメリカでの生活は苦労の連続。頼る人のないニューヨークで、ふたりの子どもを育てた彼女を支えたのは、なによりも温厚で深い優しさを擁する、夫・アショケの存在だった。
彼の愛情は、自分の名前に悩むゴーゴリのことも、家族みんなのことも、しっかりと包み続ける。
アショケがいまの彼になったきっかけは、ちゃんと過去にあった。

1974年、インドのカルカッタ。当時学生のアショケは、旅の途中、親しくなった老人から“海外に出て経験を積みなさい”とアドバイスされる。その直後、列車が転覆する大事故に遭う。老人も、乗客も大半が死亡するなか、アショケは手にしていたゴーゴリの『外套』が目印となり、奇跡的に救出されていたのだ―――。

事故以来、毎日の日々が贈り物だと思って生きる父親の思いは、やがて、ゴーゴリと名付けられた息子の心を溶かし、異国で暮らす母・アシマを幸せにし、家族みんなを導いていく。

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長い年月のあいだ、それぞれに壁に突き当りながら、成長していく姿には、人の気を逸らさない魅力がある。
インドとアメリカにある文化の相違や、子どもたちの成長や、親子の絆。恋人ができて、新しい家族を築いていく子どもたちの経験する、恋愛や結婚、離婚のエピソード。どれも女流監督らしい細やかな演出だ。
それらすべてをひっくるめて、一家が強い絆で結ばれ、幸福に生きてこれたのは、やはり父親の生き様が、支えとなり助けになっていたからなのだった。彼の人生はすばらしかった。
その死と、残された者の悲しみを思うと、感情移入していたぶんだけ、切なさと感動でいっぱいになるのだった。

『モンスーン・ウェディング』でもそうだったが、盛大で豪華なインド式結婚式の場面は、観る者を、とても厳粛で幸せな気分にさせてくれる。本編ではお葬式の場面もあり、真っ白い服に身を包んだ人々の姿もまた、印象に残るものだった。


1842年に出版された『外套』は、金を蓄えてやっと手に入れた外套を、その日のうちに盗まれてしまい、まもなく病気で死んでしまう、地位の低い九等官アカーキイ・アカーキエウィッチの物語。
この短編小説の傑作は、後のロシア文学の発展に、絶大な影響を及ぼしたという。ゴーゴリこそ、ロシア文学の父たる時代の中心で、ツルゲーネフ、ドストエフスキー、トルストイはゴーゴリの後に生まれた。
『外套』を読みながら、『罪と罰』に似た印象を抱いたのは、ドストエフスキーがそれを手本としたからだった。
――人道主義的思想、運命と人に辱められた不幸な零落者に対する憐憫の吐露――それがロシア文学の伝統なのだそうだ。――(『外套』解題より)
けっこうロシア文学は好きかもしれないと、この度おもう。『ロリータ』が大好きだったナボコフが、『ニコライ・ゴーゴリ』という本を出している。ナボコフによるゴーゴリ解析ならおもしろそうだな。いつか読んでみる機会があるだろうか。


†   †   †


監督/ ミーラー・ナーイル
原作/ ジュンパ・ラヒリ 『その名にちなんで』
脚本/ スーニー・ターラープルワーラー
音楽/ ニティン・ソーニー
出演/  カル・ペン  タブー  イルファン・カーン  ジャシンダ・バレット

(カラー/122分/アメリカ=インド合作)





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Last updated  2011.01.19 20:30:41
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