イラク戦争が起こったのは2003年。大義は「大量破壊兵器」を発見することだった。
けれども、「大量破壊兵器」は実在せず、今では米政府のプロパガンダであったことが常識。
映画のなかでは、国防総省の役人が犯人となっていて、本編を介して訴えたいアメリカの意図が見えるという。
政治に詳しい人が見れば、笑ってしまうようなみえみえのお話になっている(らしい)。
『ジェイソン・ボーン』シリーズの、マット・デイモンとポール・グリーングラス監督が
再びタッグを組んだ作品。
フセイン失脚直後のイラク、バグダッド。米陸軍のミラー准尉(デイモン)と彼の部隊は、
大量破壊兵器の発見という極秘任務に就いていた。
しかし、上からの指示に従って捜索を繰り返しても、一向にその痕跡すら掴めずにいた。
ようやく手にした重要な手がかりも、国防総省のパウンドストーン(キニア)によって握りつぶされ、
彼への不信を募らせていく。
同じころ、CIAのブラウンもまた同様の疑念を持ち、ふたりは手を組み、独自の調査に乗り出す
のだったが・・・・・。
「ボーン」 シリーズがおもしろかったのは、原作の良さによるものである。
ジェイソンの寡黙さが魅力であったのでもある。
今回のデイモンは、屈強とはいえふつうの軍人を演じているため、なんとも味気がない。
カメラワークを駆使した映像は文句なく、臨場感も素晴らしいけれど、後に残るものがない。
せめてやるせなさや無情さを感じさせてくれたら良かったのに。事実を爽快に抉って。
本編こそが、アメリカのジェスチャーなのだから、いくら製作陣が頑張っても中身がいいものはできないか。
この数日、日常のなかで、いかにテレビやネットの情報に振り回されているか、
実感することが多かった。
テレビに流れ続ける凄惨な映像に落ち込んで、しばらく見ないでいたいと思うけれど
情報を得るにはテレビをつけるしかなく、、そうすれば容赦のない情報の氾濫に押し流されてしまう。
大きな力に踊らされるのは、けっきょく国民ということになっている。
できればこの国の統治力に拍手して終われたら、、と淡い期待を抱くけれど
そうなりそうにない。
他国の人たちが感嘆するほど、我慢強くいてくれる被災した方々の踏ん張りを、
ムダにしないよう、誠意持ってみんなが対応できればいいのに。
(カラー/114min/フランス=アメリカ=スペイン=イギリス合作)