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テーマ:癌(3513)
カテゴリ:抗がん剤治療
先日、病院で
Dr『今度、5-FUとアイソボリンとトポテシン使うから用意しといてね』 Tom『FOLFIRIですか』 Dr『そーだよ あと半夏瀉心湯も使うよ』 Tom『下痢対策ですね 重曹(炭酸水素ナトリウム)やウルソはどうですか』 Dr『 なになに?? 重曹とウルソとかは何のために使うの?』 こんなやり取りがありました この先生は今回はじめてイリノテカン(商品名:トポテシン)を使うそうなので、 イリノテカン特有の下痢対策について話してきました イリノテカン(CPT-11) ○作用:イリノテカンは体内に入り活性代謝物(SN-38)に分解され効果を発揮する 1型DNAトポイソメラーゼを阻害する事でDNAの合成を阻害⇒抗腫瘍効果を発揮 ○よく使われるがん種 非小細胞肺がん CDDP(シスプラチン) + CPT-11 胃がん Weekly CPT-11(イリノテカンを1週間間隔で投与) TS-1(内服薬のティーエスワン) + CPT-11 大腸がん FORFIRI(アイソボリン、5-FU、CPT-11の併用) などなど ○主な副作用 骨髄抑制(白血球、好中球、血小板、赤血球の減少) 悪心・嘔吐 下痢 ←これがイリノテカンの特徴 イリノテカンの特徴は なんと言っても『下痢』ではないでしょうか 下痢はその作用機序から『早発型』と『遅発型』の2つに分けられます 早発型…投与中や投与直後に発現 副交感神経活性が亢進されることで発生 一過性 遅発型…投与後24時間以降に発現 活性代謝物(SN-38)が腸管粘膜を傷害することで発生 持続し、重症化することがある 下痢対策には、主に以下の3つがあります ○経口アルカリ化と排便コントロール 活性代謝物(SN-38)は胆汁中に排泄され、便として体外に出て行きます 胆汁中に排泄されたSN-38は腸管で再吸収されるが、腸管内のpHに よって吸収速度が変わります。 酸性では再吸収が増加 中性・アルカリ側では再吸収が減少 再吸収が少ないほど腸管粘膜障害が軽減する ↓ 腸管内をアルカリにする事で下痢の副作用が軽減 処方)炭酸水素ナトリウム(腸管内のアルカリ化) ウルソ錠 (胆汁のアルカリ化) 酸化マグネシウム (下剤→SN-38を含んだ便の排泄促進) イリノテカン投与日から4日間服用 この間はラックBやビオフェルミンなどの腸内細菌製剤の投与はしない (腸内が酸性化するため) ASCOでの報告 ○半夏瀉心湯、柴苓湯(漢方薬) イリノテカン投与3日前から服用 ○高用量塩酸ロペラミド療法 米国とヨーロッパの添付文書に記載がある方法で 下痢止めの塩酸ロペラミド(商品名:ロペミン)を大量に使用します 下痢の徴候が現れてから、塩酸ロペラミドを4mg服用し、 その後2mgを2時間毎に服用(下痢が止まるまで 最高48時間まで) ※日本では用法・用量が適応外です 現在、イリノテカンで治療を行っていて下痢で困っている人は上記の方法をためしてみたら どうでしょうか また、下痢の副作用は同じ量を使用しても個人差があります 下痢にすごく苦しんでいる人もいれば、まったく何もおきない人もいます この理由として遺伝子型による イリノテカンの解毒能力の違いがあるそうです 遺伝子型でイリノテカンの投与量を変えるフェーズ1試験を実施 4人に1人がヘテロ型で ヘテロ型の人はイリノテカンの解毒能力が低く副作用が強く出るそうです この発表では 遺伝子型の簡単な判別法として血中ビリルビン値をあげ、 「ビリルビン値が0.5以下であれば正常型と考えられる」と言っています お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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