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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2007/06/19
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カテゴリ:生活

 気の張る用事が待ちかまえている日とか。 
 「締切」がいくつもかさなる日とか。  
 そういう、緊迫した日には、家の仕事もはかどる。あせったついでに、つんのめった勢いで、家のことも片づけてしまえるのかな。  
 とくに予定のない日とか、のどかな休日に、ゆったりと家のこと、というふうにならないのは、我ながら可笑しい。  



 先週も、そうだった。
 「午後4時までには、原稿まとめて100枚分、お送りします」 
 と誓ってはじまったあの日、わたしときたら、いきなり梅をごしごし洗う。それを大笊(おおざる)にあけ、ひとつひとつ布巾で拭きながら、竹串でへたをはずす。手を動かしながら、わたしは、何か考えているのかな。気持ちをととのえているのかな。 
 定かではないが、そんなところは、あるようなのだ。  



 梅シロップを漬ける作業は、ものの30分でおわった。 
 梅が漬かっている瓶を、机の横に置いてみたのだ。仕事のお守りにね。  
 瓶のおかげもあるのか、机に向かったときには、それにふさわしい自分に近づいていた。手仕事って、そんなだ。考えるともなく考えながら、感じるともなく感じながら、そっと自分をつくりかえていく時間。  



 さて。  
 今年の梅シロップは、義弟が送ってくれた「羅漢果」からつくった砂糖(正しくは、甘味料かな)で漬けてみた。久しく会っていない義弟の、変わらぬやさしさが、今年の梅シロップに加わるようで、ありがたい。 
 そういえば梅の実も、長女が仕事先で分けてもらってきてくれたものだった。 
 「会社に届いた梅を、わたしがいちばんどっさり持ってきちゃった。新人のくせにね。あはは。梅シロップにしてよね。よろしく」 
 こんなふうに、手仕事には、気持ちの伝達―コミュニケーションとも言うか―がある。それが食べることともなると、伝達の力は倍増。食べる相手に伝えたいことがあるとしたら、その効果は期待していいと思う。ことばも、かなわない効果を。  
 その日、帰ってくるなり、梅シロップの瓶をめざとくみつけた末娘が、おもむろに、それを床にころがす。ごーろごろ、ごーろごろと音をたてて。この音、6月の音だ。  
 梅から汁がひきだされ、それに実がすっかり漬かるまで、瓶をころがす。この子は、二歳のころから、自分の仕事として、梅シロップの瓶をころがしてきた。手仕事の幕は、子ども時代にすでに開いているんだな。



0619_1_2



梅シロップ−梅シロップは、夏の「元気」のおまじない。
材料
青梅1kg 
砂糖700g(氷砂糖を使うと、透きとおったシロップになる)
作り方
(1) 梅を洗い、布巾で拭きながら竹串で小さなへたをはずす。
(2) 梅と砂糖を、交互に保存用の瓶(びん)におさめていく。
0619_2(3) 砂糖を梅の表面全体にまぶすため、一日に1~3回程度、瓶を倒してころがす(左写真)。数日して、梅の実が汁に漬かった状態になったらOK。







(4) シロップは、二~三週間後から飲める。水で5倍にうすめて。
※ ひと夏で飲みきること。







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最終更新日  2007/06/19 10:00:00 AM
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