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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2007/06/26
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カテゴリ:生活

 草花をいじるのが好きだ。
 いじられる。これは植物にとっては、あまり好ましくない事態だろうと思う。
 いじられたくない、そんなふうには。もっと、わたしたちを知ろうとした上で、必要な分だけの世話を願いたい、というのが相手のねがいのような気がする。そこまで思っていても、つい、必要から逸(そ)れた、余計な世話を焼いてしまう。草花をいじることで、慰めを得ている証拠のようだ。



 いまの顔ぶれは、こんなふう。
 日日草(花は白)。ナスタチウム(金蓮花/黄)。ベゴニア(白)。ミニバラ(紅)。このほか、緑の観葉植物が六鉢。
 庭につるバラ(サマースノー/白)、ベランダにまだ若いオリーブの苗木がいる。
 庭仕事は夫の担当、鉢植えはわたしの担当ということになっていて、六月のはじめ、庭のつるバラ満開になったときには、
「ご丹精のバラ、見事ですねえ」
 と、夫に挨拶。



 さて、鉢植えの話。
 二階の西側の窓辺に、いちばん元気で、花をたくさんつけている鉢花を置く。そこは道に張りだしているので、目印のつもり。
 鉢植えは、家のなかに置き放しにすると、具合がわるい。そこで、じゅんぐりに、保養所へ。入所―といっても、家のなかから外に出るのだが―の決まった皆さんは、陽あたりのいいベランダの一角で休養してもらう。ここで、ゆっくり寝て、回復してきたら、肥料を少し施す。
「わたしもさ、弱ると、眠りこけるよ。何にもしないで、眠るの。お互い、いつも同じ調子ではいられないんだねえ」



Photo
保養所の皆さん。



                 
 昔話だが、二十歳の年に出版社に入り、そこで最初に園芸ページの担当になった。
 あのころは、土のことも、葉っぱのことも、根や花のことも思わず、ただ仕事の頭で植物の前に立っていた。先輩の、「自分で、少し野菜や草花を育てると、実感のある記事が書けるわよ」というアドバイスも、「はあ、」なんて言って聞き流して。
 もったいなかったなあ。いまなら、もうちょっと面白いページがつくれただろう。植物とのつきあいのなかで、知りたいことが山ほどあるもの。



 そんなころの、ある日。
 東京都心のマンションに、ゼラニウムの取材で出かける。
 西側のベランダからゼラニウムの白い花が、こちらを見下ろしていた。家のなかにお邪魔して眺めると、白い花は窓枠を額縁にした大きな絵のように、見えた。すがすがしい部屋の、花の絵のようーなんて、素敵。
「東側には、紅いのがあるんですのよ。ほら」
 この家の老婦人が指さすほうを見ると、こちらには、紅いゼラニウムの連なりが窓を飾っている。
 いつかわたしも、ゼラニウムの鉢植えを窓辺に、とつぶやいたわたしに、ゼラニウムは言った。
「わたしたちは飾りだけどね、ほんとうは生きてるの。自分ではどこにも行かないけど、だから、せめて、わたしたちが映えるようにしてね。乱雑な部屋で暮らすのはいや」
 ゼラニウム(天竺葵=テンジクアオイ)は丈夫で、育てやすいが、ほんとうはプライドの高い花なのかもしれない。あのとき、そう思った。
 それから幾度も、園芸店で、ゼラニウムと出合ったけれど、手がでない。この花の映える暮らし……と考えはじめると、どうも心もとなくて。



(でも、きっと近いうちに、ゼラニウムと暮らそう)。





Photo_1





オリーブの苗を買いました。
近く、もうひと株もとめるつもり。
2本以上あると、実がよくつくのですって。







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最終更新日  2007/06/26 10:00:00 AM
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