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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2012/06/19
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カテゴリ:生活

 たったいま下りてきたばかりの階段を、1段飛ばしで駆け上がる。 
 大急ぎ、洗濯ものをとり入れて、家のなかに干しなおす。
 がっかりする。でも、いったい何に?  

 朝からどんよりと曇っていた。 
 雲は厚く、それに黒っぽい。いつ降りだしてもおかしくない空模様だと思った。 
 ところが。 
 天気予報士が、テレビのなかで云う。
「いまは曇っていますが、じき晴れてくるでしょう。きょうは、傘なしで出かけられます」
 雨つづきだったので、それを聞いたわたしはぽんと手を打ち、洗濯機にもう一度働いてもらうことにした。そして、前の晩にすませておいた洗濯ものと合わせて3階のベランダいっぱいに干す。
 --洗濯は、干すときがいちばんおもしろいなあ。
 なんかと思いながら。
 干し終えてほっと一息ついて階下に降りるや、窓越しに筋が見えたのである。雨の筋。
 がっかりしたのはこのときだ。
 干したばかりの洗濯ものを室内に干しなおしたことにもがっかりしたが、それより何より、自分にがっかりしていた。みずからの目で見て「いつ降りだしてもおかしくない空模様」と踏んだわたしの……、この勘は、いつどこでないことになったのか。まったく失礼なのにもほどがある。がっかりしながらも、わたしはみずからに非礼を詫び、最新の技術をもちいてはいても天気予報はあくまでも「予報」なのだということを、胸におさめなおした。

 大阪府八尾市の友だちから、上京するという知らせ。
 しかも、半日時間があるという。そうとなったら、こちらも仕事をせっせと片づけて、半日分の時間をつくって待つばかりだ。
 八尾からやってくる知子ちゃんを、東京都現代美術館に案内しようと思いつく。大好きな美術館だし、開催中の展覧会も興味深い。館内のレストランで向かいあっておいしいものを食べよう……。われながらいいことを思いついた。
 インターネットの「乗り換え案内」に、こちらの最寄り駅と、現代美術館にいちばん近い清澄白河駅、到着予定時刻を打ちこみ、経路と出発時間を割りだして、その日を待った。
 そして当日。
 朝からそわそわしながら、家のこと、雑用にとり組む。
 ふと、
 --出かけるまでに、やけに時間があるなあ……。
 という思いが湧く。
 え? わたしは知子ちゃんと美術館のレストランで昼ごはんを食べるのではないのか。それなのに、時計を見ると11時半をまわりかけている。え?
 待ち合わせは……11時だったのではないのか。口から心臓が飛びだすという表現を聞いたことがあるけれど、「それは、いまのわたしだー」という気持ち。大あわてで足を靴につっこむ自分が総毛立っているのがわかる。
 運のわるいことに、携帯電話同士がつながらない条件もかさなって、わたしはひとり地下鉄のなかで足踏みしている。知子ちゃんは慣れない東京で、どんなに心細い思いをしていることだろう。
 インターネットに出発の時間をおしえてもらうとき、11時と打ちこむはずの到着時刻を13時と打ちこんだのだった。数字に弱いわたしは、ときどきこういう失敗をする。……弱いにもほどがある。

 天気予報を参考にする。インターネットで調べておく。
 それがわるいわけはない。わるいのは、自分の勘を無視したり、あるいは考えてみることもせず鵜呑みにすること。頭の上にあきらかに雨雲とおぼしき雲が浮かんでいるのを見ているのに、それをなかったことにしたり……。その日の朝からの行動をみずからたどってみることなしに、インターネット任せにしたり……。
 このような便利にからみとられたしくじりをするなど、わたしのすることが中途半端である証だ。不便が好きなどと云っておきながら。
 しかし、ここで手痛い目に遭ったことで、わたしにしくじりの記憶が刻まれた。ひとは、経験をひとつずつみずからに刻むことで前にすすめるのだと、思い知る。こうして、やっとこさ勘や思考が鍛えられる。

 ところで。
 あの日、八尾の知子ちゃんとわたしはどうなったか。
 知子ちゃんは、清澄白河駅からひとに尋ね尋ね、現代美術館に行き、お茶を飲みながら待っていてくれた。
 結局1時間半も遅れて到着したわたしを見るなり、知ちゃんが云ったことばこそは特筆すべし。

「ああ、おふみさーん。どこからも血も出ていない元気なおふみさんと会えてほんとうによかったわ。あのな、わたし、自分がおふみさんだったら、と考えてん。そしたら、先にここへ来てお茶飲んで待ってるのがいいなあと思ったの」

ブログ洗濯干し器.jpg
洗濯ものを干す、というはなしを書いたので、
そのつながりで、洗濯干し器について。
写真は、長年働いてくれている洗濯干し器です。
同じものを2つ持っています。
干し器はこのほかに、小型を2つ、
折りたたみ式のスタンドタイプ(ベランダ用)を1つ使っています。

かつては、洗濯ものを種類ごと色ごとにこまかく分けて
干していましたが、近年、簡略化をはかりました。
それぞれの収納場所に合わせて、
(写真の)洗濯干し器(1) → 3階に収納のもの。
               (2) → 2階、1階に収納のもの。というふうに、干します。
こうすると、衣類をしまうときの動線が短くなります
外から見えては困る下着類も干すので、
左右に布を干し渡します(下記イラスト参照)。

写真の洗濯干し器左側についている白い洗濯バサミは、
(1)と(2)を連結させて、風が吹いても動かぬようにするためのモノ。

fumiko.jpg
このように、布をふたつの面に干し渡して、
目隠しにします。
無精干しでございます。







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最終更新日  2012/06/21 05:16:54 PM
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