カスピ海の女人の奔放さ今夜は、個性ある生とは如何なるものかを語らんと思う。 ここコーカサスに住みて、はや半年。 大和の小国に戻りて感ずる思いあまたあり。 その一因は、豊かであるべき人々の表情の暗さ。 電車の中なる疲れたものうげな顔の数々。 渋谷、新宿にあふれる少女らの個性の無き表情。 いずこも、みな、はやりの同じ装いをまとい、 同じような口調と言の葉の浅薄さ。 共感できる心の深み、表情の豊かさがなきを憂う。 ここカスピ海の街はシルクロードの西端ゆえに、 いにしえより東洋と西洋の血族の交わる歴史の影、 人々の表情にもあまた宿り豊かに花を開きけり。 遠くはアレクサンドル大王の世には 希臘の国の戦さ人住みつきて、この地の乙女と交わりしとかや。 東洋の蛮族ジンギス汗も大軍ひきつれてしばし足跡を残す。 残虐な帝王チムールの世には、蛮族あまた城外より進撃し 麗しき乙女を砂漠の帝国サマルカンドに連れ去りしとかや。 色濃きこの国の男達は北方の大国露西亜の 頬白き乙女らを好みてめとり血の交わりを深めける。 かくして、この国の乙女らは、歴史の生き証人のごとく 豊かな逞しき心を四肢に蔵し、いまなお蛮族の闊歩せる 世を彷彿とさせる趣きを有したり。 まずは露西亜系の、抽象画を描く女流画家。 「大国露西亜の豊かな創造性」を 「見るからにあふるるほど、胸に蔵したる」才媛なり。 描きし絵にも、ほほえみにも、上目使いのまなざしにも はつらつとした個性ある生き様のあふれけり。 豊かに仲間と語り、笑み、踊り、恋する彼女の生を 推して、羨望をすら感じけり。 下記は、あまりの迫力にたじたじとなりし、題して 「カスピ海美人 個性派編 」 蛮族の世の乙女かくありしやと 歴史を語る生き証人なりしか。 蛮族チムールの軍隊も、この乙女をサマルカンドに 連れ行くのは、ためらうのではと思ふ。 この個性豊穣なる乙女の前に立ちはだかり、 恋を語り、歓喜の時を享受せんと挑む、 命知らずの若者に幸あらんことを願う。 かくまでに自己を主張し個性を楽しめる この国の乙女の堂々として豊かで伸びやかな生を 心のいずくかに、賛美したき思いあり。 |