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カテゴリ:硬派
よしもとばななさんの「デッドエンドの思い出」を読んだ。
5編の短編で成っている小説集。 どの小説も、人や風景への描写はねちっこく書いてるのに、あとに悪い味や、読者に疲れを残さない。 描写を直接書いてるんじゃなくって、ほんわかとした光とか、緑の木々とか、何気ない風景とかに乗せて描いているからなんだろうな。 また、それが、何気ないってことがとおっても大切なんだってわからせてくれるような気がした。 すごいよね。 僕は表題作の「デッドエンドの思い出」と「おかあさーん」がとってもよかった。 どちらも、しんどい気持ちの主人公がちゃあんと生活に戻っていくのがよかった。 「おかあさーん」のラストはいい。 主人公がみんなを許しているのが、とっても。 僕もあんな風に許せたら、いいな。 「幽霊の家」は不思議。 こんな幽霊がいてもいいのかなって、思っちゃう。 ほのぼのしててね。 「ともちゃんの幸せ」は作りとして、どーかな。 最後になって、作者が顔を出す手法がひょろりと顔をだすのは、うーん、って感じ。 たまにはありかな。 「あったかくなんかない」は哀しすぎる。 だから、一番、本当っぽい話ではあるんだけど。 そして、表題作の「デッドエンドの思い出」はすごおく、共感した。 幸せの希望をもってるから、現状をみないようにしている主人公の鈍感さとか、それで、恐ろしく傷つけられたりっていうのが、わかった。 一番、同情されるべき主人公のミミっていう女の子がお金とかの些細なことで自分を傷つけたり、嫌な気分になったりするのも。 そんな、気分になることないのに。 だって、一番、酷いことされて傷ついてるのはミミさんなのに。 でも、最後には癒されるんだよね。 癒している西山君もいい。 変に励ましてるんじゃなくって、そっと、そのまま生きている気遣いで人を癒せるって、素敵。 なんか、外からしたらひどい体験が、西山君のなかでは熟成した深さになってるのも、ほっとしちゃう。 どんな体験も、よきことなのかなって。 ただね、この高梨って男は僕はずるいとおもうな。 誰も傷つけないようにして、傷つけてるんじゃないかな。 主人公に謝って、モノをあげたのはマシだよね。 まあね、そーゆー人物がいるから、小説として面白いんだろうけど。 そして、ラストで、ミミさんがこころもちタフになったのも、いい。 でも、僕は西山君と上手くいってほしかったな。 小説としてはツマンナクなるかもしれないけど。 奇跡的に美しい宝箱みたいな思い出だから、ものがたりとしてほんのりするんだもんね。 ムツカシイとこだね。 んじゃ。 ※もっと、「なんだかなー」なら『目次・◎ものがたり(映画、音楽、文学、本)』まで お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年08月15日 00時51分11秒
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