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田中およよNo2の「なんだかなー」日記

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2007年11月25日
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カテゴリ:ほどよく
もうすぐ、12月だ。

街の樹木には美しいイルミネーションが施されるのだろう。
きっと、幸せそうに男と女が手を繋いでいるのだ。

あまりにも遅くまで飲んでいたので、僕と女性はタクシーに乗った。
でも、それは幸せとかそんなのじゃない。
単に遅くなっただけの話であり、僕はお客だったのだ。

女性の家の前まで送って、そこから僕とタクシーの運転手だけになった。

僕はタクシーの運転手と話をするのが好きだ。
物知りも多い。

人生も変わっている人が多い。
リストラに遭遇したり、定年後に過ごしている人も多い。
一応サラリーマンをして、給料をもらっている僕からすると、別の視点からモノゴトを眺められるからだ。

もっと、正直に言おうか?
落ちた視点、下の眺めが面白いからだ。

タクシーは小さな路地をくぐって、交通量の多い場所に出た。
もう、タクシーさえ走っていない夜中だ。
ばさばさと僕は髪を掻いた。
「おっさんですね」運転手に僕は言う。「こういう事しか、楽しみがなくって」
「いいじゃないですか、お客さん」慣れた調子でタクシーの運転手が言う。「いつも、がんばっておられるんでしょ」
「そうですね、寝言を言うくらい」

仕事が忙しかったり、なにかあると僕は寝言がひどい、らしい。
上司との話だったり、客とやり合っていたりするようだ。

「寝言ですか、私もサラリーマン時代は寝言が多かったみたいですよ」
「やっぱり、上司の文句とかですか。どこに勤めてられたんですか」
「照明の有名な企業があるでしょう。クリスマスなると、みんな行くでしょ」
「キレイなんでしょうね。行ったことはないですけど、イイ企業じゃないですか」

僕はそのタクシーの運転手をリストラされた人だと思っていた。
だから、グチとか、恨み言が寝ても続いていたのかなと。
でも、そういう具体的な話こそ、面白いのだ。
だから、続けて聞いた。

「寝言って、どんな寝言だったんですか?」
「土下座が多かったみたいですよ。ごめん、すまんって。でもね、あと、2人しなきゃとかも、言ってたらしいですよ」
「あと二人?」僕は言い返した。
「その月にクビを切る人間の数ですよ」運転手さんは笑いもしなかった。「だから、女房は辞めて安心したって。泣いて喜んでましたよ」

「ただ、給料は悪くなるでしょう?異動とかも…」
「なかなかね、できないですよ。外国とか、買収先に乗り込んで行ってるから有名になっちゃってるんでね…」
「そうなんですか。大変なんですね」
「でも、私は生きてますから。あの時期は年に2-3件も同僚の葬式をみちゃってましたしね」

言葉が続かない。
タクシーはしばらく走る。
ラジオがちょっとだけ、心地よい。
やがて、タクシーは僕の家の近くで止まった。
出る直前だった。

「だからね、お客さん」
「はい」
「バカに騒いで、ちゃんと寝て下さいね」

さて。

その夜、僕はちゃんと寝れたのだろうか。
寝言はなにか言っただろうか。
わからない。

ただ、わかるのは、朝起きたら僕は一人だということだ。

寝言を聞く人も、泣いて喜んでくれる人もいない。

※もっと、「なんだかなー」なら『目次・◎日々の「なんだかなー」No2』まで





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最終更新日  2007年11月26日 12時42分25秒
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