Honey & Milk

昨日の夕方、久しぶりに　しょちょ～が来た。



「あ。鍵を返さなきゃいけないんだった。」


これはどこどこのマスターキー、
これはあそこのキー、ぶつぶつ独り言を言いながら
金属音を立てて、１つずつ外していく。


Ｎちゃんもｼﾞｭﾆｼﾞｭﾆも、黙り込んで
視線を交し合うのみで、あちこちの営業所のスペアを
渡されても、何も言うことができない。


私よりもずっと長い時間、しょちょ～について
色んなことを教わって、叱咤激励されながら
育てられた彼らの方が、今とても心細い気持ちに
なっているのだろうなと思いながらも


「あれ？なんで取れないんだこれは。」と
最後にウチの営業所の鍵をガシャガシャと引っ張る
しょちょ～に、


「外さないでいてほしい」と口に出してみたが
しょちょ～は、苦笑いしながら
強く引っ張る手を緩めて、落ち着いてそっと鍵を外した。



「はい、これはアンさんよろしく。」


手のひらに乗せられた鍵は、
私のそれよりも使い古されて、色が変わり
少し丸みを帯びていた。


あー、どうしよう。
ここで泣いてはならぬ。


今、大切な宝物に変わったばかりの鍵を
パソコンの脇に、わざとなんとなく置きっぱなしにして


「お疲れ様でした。（行かないでーっ。）」と、
玄関まで立って送るべきなのかも知れないけれども
きっとそういうのは、しょちょ～はとても苦手な人だから

いつもと同じように
自分の椅子に座ったままで見送った。


皆の沈黙の中、ラジオの音を邪魔しないように
しょちょ～の置いて行った鍵を、自分の鍵と一緒に付けて


「なんか、振られた気分だわ・・・」
チャラチャラと目の前で振り鳴らして呟くと、

「俺もブルー。」

「さみしいっすね。」

みんなで、捨て猫気分。