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2014.10.29
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カテゴリ:読書
私のある日記の足跡に、なんとなく気になるブログがあった。
開いてみると、そのブログ主は活字中毒と自分で言い切るほどの読書家であった。
私なんぞのブログにたどり着いたその人はどんなジャンルの本を読むのだろう、ちょっと興味が湧いて彼女の読書記録に目を通した。

テレビでは、先週末に公開した映画『小野寺の弟小野寺の姉』の宣伝に、向井理さんと片桐はいりさんが頻繁に登場していた。
強烈だが憎めないはいりさんの圧倒的な存在感に、ちょうどはいりファンになりかけた時だった。

その人のブログに、<『もぎりよ今夜も有難う』 片桐はいり>という見出しを見つけた。
本文には、「個性的で大好きな女優、片桐はいりさん。 『グアテマラの弟』を読んで、面白い!と感じたので、こちらも読んでみました。」とあった。

グアテマラといえばマヤのティカル遺跡、いつかは行きたいと強く思う国。
そこではいりさんの弟が暮らしていることも「へえ~」であったし、はいりさんの目にはその国がどう映ったのだろうと気になった。
何より、はいりさんが俳優業だけでなくエッセイストでもあることに一番魅かれた。

『グアテマラの弟』も面白かったが、その読後すぐ手に取った『わたしのマトカ』に大いにウケた。
『わたしのマトカ』は、映画『かもめ食堂』の撮影で滞在したフィンランドが舞台の片桐はいり処女エッセイである。
マトカとは、フィンランド語でという意味なんだそうだ。


読んでいると、あのエラのはったはいりさんの顔が脳裏にチラチラ浮かび上がり、彼女の声がナレーションのごとく私の耳奥で響いてくるから愉快だ。
さすがは片桐はいり、姿が見えなくても強烈である。(笑)


彼女の旅日記にはガイドブックに出てくるような名所は一か所も登場しない。
なのに読み終える頃には何故かフィンランド時間とフィンランドの風景の中、フィンランド人の友人を得たような満足感がある。
フィンランドの思い出を語る上で記された、カンボジアやベトナムなど彼女の過去の旅描写も、その一役を買っている。

そして、彼女の旅に似たような場面を私自身の旅にも見つけ、全く異なる国なのに懐かしさが込み上げてきた。

たとえば、ヘルシンキでのカモメの場面。
近くで見るとわかるが、フィンランドのかもめはほんとうにでかい。
白いダブルの背広を着てのしのし歩く、マフィアの組長を思わせる。可愛い水兵さん、という柄ではない。

そんな組長が、港だけでなく町なかを、猫よりもいい気な感じでのしのし歩いている。
カウパットリの港では、屋外マーケットに押し寄せる観光客に負けない貧欲さで、食べ物をあさっていた。
近くへ寄っても逃げないばかりか、にらみ返してくる勢いなので、こちらのほうが、失礼しました、と引き下がるはめになる。

の一節では、私はニュージーランドのクライストチャーチを思い出す、今は地震で崩壊した大聖堂広場にわんさと屯していたシーガルを。
あいつらもなかなか凶暴だった。
友人の一人など、広場の隅に腰かけていたら、シーガルが細かく切った芋をどこからか運んできて彼女めがけて落としてきた。
白人がアジア人を嫌って生卵をぶつけてきた場面には何度も出会ったが、シーガルに狙われるとは笑えた話である。


また、「ヘルシンキでは、わたしは毎日のようにすずめと朝食をともにしていた。
いつもの時間に、陽の当たる外のテーブルに着くと、たいてい、一羽か二羽のすずめが隣の椅子の背のところにやってきた。

自分の口に運ぶのとおなじペースで、分け前を投げてやる。
すずめたちはなんの躊躇もなく、わたしの投げたパンくずを目の前でついばんでいる。
フィンランドのすずめは、日本人がすずめをまっぷたつにさいて、焼いて食べることを知らないのだろうか。

には大笑いをしながら、スロベニアの首都リュブリャナで馴れ馴れしいすずめどもと私も一緒に朝食を取ったことを思い出していた。

フィンランドの話なのに、読み手それぞれ膨らませ方ができるのも彼女の文章の巧みさだと思う。


普段はさほどきれい好きでもないのに旅に出る前だけは異常なきれい好きになるってところや、

特に本好きでも読書家でもないのに世界の何処ででもなぜか行き場所に困ると本屋に入るというくだりに、

はたまた彼女が帰国後も原稿用紙の上で旅をつづけたように私はブログを書いて旅の余韻を楽しむところまで、

そんな他愛ないところにも彼女のマトカと私の旅の共通点を見つけ、「そうそう、そうよね」と何度も何度もうなづきながらページをめくった。

魅力ある彼女の感性と重なる部分を自分の中に見つけ、一人嬉しくなった。
彼女と私の違いは、私はそうグルメではないことと、彼女のような機知に富んだ才能がないことくらいか。


読み終えて、はいりさんのあのニヤリとした不敵な笑みがまた脳裏に浮かんできて、それが読後の満足度を一層強く引き上げた。(笑)





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Last updated  2014.10.30 16:53:50
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