はなとゆめ:冲方丁、読みました。
はなとゆめ、冲方丁著はなとゆめ-【電子書籍】価格:1,500円(税込、送料込)清少納言を主人公とする歴史小説です。天地明察、光圀伝と続く冲方丁のシリーズ第3弾という位置づけにあるのですが、その二作とはかなり雰囲気を変えてきたなという印象です。女性が主人公で、しかも平安時代ということで雅な感じとアンニュイな浮遊感ある優しい文体で書かれています。歴史小説としては、かなり読みやすいと感じました。お話は、清少納言というあだ名の由来、一条帝の中宮定子の女房として宮中へあがることになった経緯。宮仕えでの気苦労やいろいろな殿上人との付き合い。などなどです。それぞれの場面ごとに和歌があり、これがこの小説の雅さを飾っています。この平安の時代は封建的で、藤原摂関家による宮廷の支配がうかえます。不躾な表現をすれば、この時代は、まだまだ食料や生活必需品など生産性が低く庶民や農民は貧しい暮らしだったはずです。したがって宮家や貴族たちが優雅であるためには、その貴族どうしですら様々な策謀によって自分たちの地位を競い合っていたということでしょう。そういう血みどろの悍ましい事件が後半は主な話になり、暗く切ない展開になっていきます。清少納言さん自身も生産的な仕事とはかけ離れた貴族的な生活をおくれたからこそ枕草子が生まれたわけで、そう考えるとなんとも複雑な心境となります。鋭く繊細な観察力、ゆとりと世のはかなさ、そして若くしてこの世を去った中宮定子との約束と別れからの開き直りのような性格が生んだ最古の女性エッセイというべきものが枕草子なのでしょうね。ちょっと切なく心にしみるけど、きらりと光る感じの、よい小説でした。デザイン画が綺麗です。