ラスベガスで“必勝法”を用いて大金を稼いだ学生の実話を基にした映画が公開!!
nikkei TRENDYnet news:1990年代、米国マサチューセッツ工科大学に通う数学の若き天才たちがラスベガスのカジノで、ブラックジャックの必勝法を駆使して大金を稼ぎだした。この実話は、そのメンバーの一人によって小説化され、米国で話題となった。この話をエンタテインメント映画に仕上げた作品が5月31日から公開の『ラスベガスをぶっつぶせ』だ。全米の興行収入チャートで2週連続のNo.1となり、8000万ドル(約83億円)を超えるスマッシュヒットとなった。主人公は、マサチューセッツ工科大学でロボット工学を学ぶ優秀な大学生のベン。卒業後は名門ハーバード大学医学部に進学する資格を得たが、あてにしていた奨学金の道が非常に厳しくなる。決して裕福な家庭とはいえず、30万ドルの学費も払える見込みはない。しかし、そんな彼のもとに数学の資質を見込んだ1人の教授がうまい話をもちかけてくる。 それは、その教授と数学の天才生徒たちがチームになり、トランプのブラックジャックで大儲けするというもの。実際、彼らは“カードカウンティング”という必勝法を駆使して、週末ごとにラスベガスのカジノで荒稼ぎをしていた。学費欲しさにこのチームに加わったベンは、冷静さと数学の才能を生かして主力メンバーとなり、大金を稼ぐようになる。しかし、カウンティングを取り締まる警備員たちは、このチームの存在に気づき、彼らに迫っていく。 ブラックジャックは、プレイヤーとディーラーの1対1で行われるゲーム。手持ちのカードが21に近い方が勝つというシンプルなルールだ。カードカウンティングとは、すでに使用されたカードを記憶し、残りのカードを判断しながら、次に場に出るカードの確率を推測し計算する、きわめて高度な技術である。その仕組みは劇中でも説明されるが、仮に理解できなかったとしても、この映画を楽しむ上ではさほど重要ではない(そもそも簡単に理解できるようなら、誰でも億万長者になれてしまう)。この映画の魅力の一つは、複数の人間が協力し合って相手の先を行く、『オーシャンズ11』にも似たチームプレイのスリルだ。先乗りしてカードを記憶し続ける者や、そこからのサインを受けて実際にゲームをプレイする者がいる。カジノ側にカウンティングを悟られないよう、プレイする彼らの連係と緊張感に目を奪われるだろう。 さらに注目したいのは、ドラマとしての面白さである。現在、カジノの警備には人体識別ソフトが導入されており、カードカウンティングする常習犯は瞬時に見抜かれてしまう。映画の時代背景は、このソフトが導入される直前。警備側に正体がばれないよう、ベンのチームはカジノを訪れる度に変装するのだ。だが、ソフトが導入されれば足しげくカジノに通うこともできなくなる。 一方のカジノの警備員側も、このソフトが導入されれば職を失うことは免れない。彼らはそれゆえ、コンピューターにできないことをやってやろうという職務的なプライドを持っている。すなわち、本作で描かれているのは“後のない者同士”の戦い。そんな人間ドラマに切迫感や哀愁がにじみ出ている点も、この映画の妙味と言えよう。 主人公のベン役を演じるジム・スタージェスは、この後に日本公開されるミュージカル映画『アクロス・ザ・ユニバース』でも主演を務める注目の新星。そのイケメンぶりにときめく女性も多いだろう。本作のプロデューサーを務め、ベンを仲間に引き入れるクセ者の教授役として活躍するのは、『アメリカン・ビューティ』(1999年)でアカデミー主演男優賞を獲得したケビン・スペイシー。プロ意識の強い警備員役には、『マトリックス』3部作に出演したローレンス・フィッシュバーンが務めるなど、芸達者な俳優たちの巧みな演技も光る。 数式という知的な題材を扱っているものの、身構える必要は全くない。肩の力を抜いて楽しめる、どんでん返しの娯楽作となっている。(文/相馬 学)