消失を彷徨う空中庭園

今回のお題は、すりガラス、肩たたき機、こんにゃく、です。
これらの単語を含んで創作するのがルールです。
もう、うちのオチの弱さには定評があります。そこ触れないでやってください。



私の名は観山泰斗。
最近太ってきた。ズボンがタイトだ。俺の名前も泰斗だ。
さて、今回の仕事は企業スパイの尋問だ。
これは高度な心理戦を要求される。
誰にでも出来る仕事じゃねぇ。

俺は、尋問室に入る前に服装を整えた。
こういうことはまずカッコが大事なのさ。
ネクタイをきつめに締め、ベルトは少し緩めた。きついからな。
そして、いざ入室した。
中には、いかにもサラリーマンっぽい男がいた。
「てめぇ会社の情報を盗んだんだろ」
俺は軽く威嚇するつもりで話しかけた。
「あんたに関係ねぇだろ、デブ」
「何ぃ！？」
力んだらズボンのボタンが弾けた。
「うわ、だっせぇ」
「なんだと！」
俺は、ズボンが落ちないようにこっそり必至に抑えつつ精一杯すごんだ。
「怖くねえよ。デブ」
「うわ、二度目」
俺はこんなに目立つし生意気な男に企業秘密を盗まれる企業にも、少し腹が立った。
いや、俺は冷静になるべきだ。
今の俺の心は、すりガラスのように曇ってしまっている。
相手のペースに飲み込まれてる。
リラックスしろ俺。自分を抑えろ。
そうだ、リラックスのイメージをつくるんだ。
俺は、健康ランドの肩たたき機の心地を思い出した。
「さあ。吐いちまえよ」
クールにそう言った。
「なぁ。確かに俺が盗んだんだ」
「正直に話す気になったか」
「へへへ。俺と取引しねぇか。悪いようにはしないさ」
「おのれ！悪の誘いに誰が乗るものか！」
「俺の盗んだ情報は、新作のダイエット商品のことなんだぜ」
「なんと…」
少し心が動いた。
「何なら、そのサンプルをくれてやってもいい。見逃してくれたらな」
「よし、交渉成立だ」
展開が早いのは、文字数の問題だ。
男は商品サンプルを俺に渡して、俺はやつを逃がした。
クライアントには、これで情報を取り返したことにして報告しよう。

渡されたのはこんにゃくだった。
「って、こんにゃくダイエットしろってことかよ！」