老いも若きも負担増の後期高齢者医療制度
政府・与党は,後期高齢者医療制度の導入の口実に「現役世代の負担を減らす」ことをあげています。しかし実際には,現役世代にも保険料値上げがおそいかかっています。 シリーズで取り上げている後期高齢者医療制度の最終回は,現役世代を直撃する負担増をみました。 「4月から高齢者医療制度が変わり,健保組合の保険料が急増します」 テンプスタッフなど約400社の人材派遣会社,約45万人が加入する人材派遣健康保険組合が,こんなお知らせを加入者に配布しました。 派遣健保の健康保険料は,これまで収入の6.1%(これを労使で負担)でした。それが4月から7.6%(同)に上がりました。 月収24万円の派遣労働者の場合,これまで月7,320円だった保険料が,4月から9,120円に。月1,800円,1.2倍の負担増です。給与明細を見た派遣労働者からは,「今後どれだけ上がるか不安」などの声が出ています。 大企業のサラリーマンなどが加入する健康保険組合の全国組織「健康保険組合連合会(健保連)」の調査では,4月以降「保険料率を引き上げる」と回答したところが,全体(1,502組合)の約10%にあたる141組合にのぼりました。 現役世代の保険料が上がるのは,後期高齢者医療制度導入にともなう負担変更によるものです。 これまでの「老人保健制度」が新制度に変わることで,組合健保,政管健保など現役世代が負担するお金も,「老人保健拠出金」から「後期高齢者支援金」に変わりました。 65歳-74歳の医療費に対する「前期高齢者納付金」も,4月から始まりました。 高齢者医療の二つの制度変更によって,これまでの拠出金・納付金と計算方法が変わりました。このため,2007年度に比べて組合健保が4,300億円,政府管掌健康保険が1,500億円,共済組合保険が1,100億円の負担増となりました。 この制度変更は,全体として国民健康保険の負担を減らすしくみだと説明されています。しかし実際には,「後期高齢者医療制度の実施」を理由にして,国保料(税)を値上げする自治体もあります。 政府・与党は,「世代間の負担の公平」などといっています。しかし実際には,すべての世代に負担増を押し付ける内容になっているのです。 「後期高齢者支援金」には,とんでもない“ペナルティー(罰則)”があります。 4月に始まった「特定健診・特定保健指導」(いわゆる「メタボ健診」)。 健診の受診率やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の改善状況によって,組合健保や国保などが負担する支援金を,最大10%加算したり減らしたりする仕組みを取り入れました。 受診率が低かったり,従業員のメタボの改善がすすまないと,支援金が上がることになります。 この加減算は,2013年度から動き出す予定です。制度をこのまま継続させると,こんなペナルティーが始まってしまいます。 いままでサラリーマンなどの扶養家族だった75歳以上(約200万人)への新たな保険料負担も,現役世代にのしかかります。 65歳-74歳の国保料の年金天引きも,10月から本格化しようとしています。 自民党・公明党連立与党の「手直し」は,これらの制度の「定着」を狙うもので,根本的な解決とは無縁のものです。 現在も,将来も,国民に災厄しかもたらない医療制度は,廃止しかありません。