従来の「対策」では限界
保育所に満員などの理由で入れない待機児童が,2008年4月1日時点で19,550人と,2007年より1,624人増えたことが8月28日,厚生労働省の調査で分かりました。 増加に転じたのは5年ぶり。 厚生労働省は「女性の社会進出などを背景に需要が増加しているが,保育所の整備が追い付いていない」としています。 調査結果によると,保育所数は2007年に比べ61ヶ所増え,22,999ヶ所。定員は2,120,889人で,利用児童の2,022,173人を上回りました。しかし,地方では定員に余裕がある一方,都市部に待機児童全体の77.7%が集中。 大規模マンションの建設などで需要が急激に増える地区もあり,待機児童の増加につながったとみられます。 待機児童が50人以上いる「特定市区町村」は,2007年より10ヶ所増えて84市区町村。待機児童が最も多いのは仙台市の740人で,次いで横浜市の707人,大阪市696人の順でした。 一方,富山,石川,福井,山梨,長野,鳥取,香川,佐賀,宮崎の9県は待機児童がゼロでした。 小泉内閣の「待機児童ゼロ作戦」(2002年度-2004年度)をはじめ,政府はこの間,鳴り物入りで“待機児解消”に取り組んできました。 しかし,その内実は,定員以上の詰め込みと,常勤保育士に代わるパート保育士の導入促進というもので,保育所の新増設は脇に置かれています。 厚生労働省は2001年度から,一時的に認可外保育所を利用している子どもを集計から除外し,待機児童数を少なく見せることまでしてきました。それでも今回5年ぶりに増加に転じたことは,これまでのやり方に限界があることを示しています。 待機児童が集中する地域を中心に,子どもが楽しく安全に過ごせ,親も安心して預けられる保育所を,計画的に整備することが求められています。 福田内閣は「新待機児ゼロ作戦」として,今後10年間で保育サービスの利用者数を100万人増やすことなどを掲げています。しかし,保育所の新増設の位置付けは曖昧で,保育の民営化を進める「認定こども園」の拡充などに重点が置かれています。 保育への企業参入を促進するため,保育所の施設設備基準の引き下げや,保育の公的責任を後退させる直接入所契約制度の導入なども検討されています。 「待機児解消」の名の下に,保育制度の改悪を進めることは許されません。