船の意味さえ変わり始めている。
ビーム兵器の直撃に有効となる防御ジェネレーターを実装した巡洋艦サイズ(!)のMAの試作機が間もなくここに届く。壮絶なる戦果は期待を裏切る事は無かろうが、製造コスト/非戦闘時の運用/戦線までの運搬等々、当然ながらデメリットのオンパレードとなっている。さらに、もしそれが実戦配備された場合には、星間航行を伴わない作戦行動における戦闘艦艇自体の存在意義をも左右しかねない存在となろう。そもそも、件の電波拡散電子干渉物質が散布された空間領域でビーム兵器を帯行したシングルシートのMSが登場する戦闘状況自体、大型戦艦艇の前線配置が、自艦の被弾率がとてつもなく高い割りに、対MS撃墜率が殆んど期待できない事になってしまっており、戦線前進の度合いによっては、搭載MSの発進基地としてでさえ、意味を成さない場合も起こり始めている。ビーム兵器の出力向上の度合いが、装甲板(ビーム反射膜)の開発度合いより速過ぎる為である。たった一人が「乗る」MSに3,000人が「住んでいる」艦艇が「あっという間に」沈められてしまうのである。大昔の海上艦であれば、航空機搭載兵器を10~20発程度直撃されても、すぐには沈まなかったであろうが、今現在のMSが撃つビーム兵器の威力は、もはや艦艇の主砲と大差無く、モノによってはたやすく艦体を貫通し、たった一発で爆散さえもしかねないのである。耐ビームジェネレーターも一部実用域には達したものの、至る所に人が居る既存の戦艦艇を有効に防御するのには所詮無理があり、また既存の構造/エネルギー消費配分からして実装自体作戦行動に耐えるものではない。効率的で安全な運用の為には、専用電力炉の配置からして一から専用設計が必要であり、従来からの海上戦艦艇を模したレイアウト自体捨て去らなければならない。そして当然艦艇の小型化が求められる為、従来の『日々の住居を伴う移動基地』的な設備/構造は諦めざるを得ない。この事は、母艦に搭載し必要に応じて前線部で出撃していた、すなわち本来なれば艦載機としてあるべきのMS(あるいはMA)自体に、長距離進攻能力を持たせ、前線移動基地が無くても有効な作戦行動が出来る事が期待される、という事になるのだが………空間域では慣性による無加速移動が可能な為、重力下の航空機のように、積載プロペラント量と燃費のバランスを考慮しなければならない訳ではなく、移動距離に対する燃料が占めるデッドウエイトは考慮しなくてもよいのだが、所詮戦闘機と同じ運用が求められている機体内部で生身の人間が1~2週間(長ければ数ヶ月間)も「生活」が出来る訳でもなく、一部準コールドスリープカプセルが装備された実験機も前線投入されたものの、結果それが標準とは成り得ていない。やはり作戦母艦は必要なのである。ビーム防御ジェネレーターを装備し、そのジェネレーターの起動とそれでの防御に適した構造を持ち、さらに内部に作戦行動に足りるMSを携えて、多数(必要最低限)のクルーと共に、最低でも数週間前線に進攻できる母艦は、まだ実現していない。間もなく届く、ビーム兵器の直撃に有効となる防御ジェネレーターを実装した巡洋艦サイズのMA…このようなスペックの機体が生れ落ちる理由の一つが、まさにコレであり、このMAが(せめて)数百名のクルーの居住空間を兼ね備える事が出来た暁には、文字通り理想的な新型戦闘艦艇となることであろう。が、実現は程遠いようだ。今現在、MSと会敵した場合にはほぼ間違いなく沈められるのを覚悟の上で、戦艦艇にMSを乗せて作戦行動をおこしているのは、これらの為である