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カテゴリ:音楽
先々週の「古楽の楽しみ」の時間に取り上げられたJ.S.バッハの鍵盤楽曲の中で、亭主が最も印象に残ったのが表題のCDに収められているラインケン作曲・バッハ編曲のソナタ(イ短調、BWV965)です。
そもそも亭主にとり、イタリア・バロックの協奏曲のバッハ編曲はお気に入りの作品群で、放送4日目冒頭に流れたヴィタール・ユリアン・フレイのCDは愛聴盤の1つ。これらの作品は、イタバロの名曲をハープシコードで聴く/弾くことができるだけでなく、バッハの編曲の妙も楽しめる、という一石二鳥の楽しみがあり、一時期はブライトコプフ版(ブゾーニ校訂)の楽譜を入手して手遊びにハマっていたことも。 とはいえ、この17世紀北ドイツの音楽家ラインケン作品の編曲の存在は全く知らなかったことに加え、ラジオから流れてくる演奏が素晴らしかったので早速このCDを落手しました。 一聴するなり、そのゴージャスなハープシコード・サウンドに圧倒されます。このCDは国内プレス版で、元版は1998年に出たもの。ライナーノート記事によると録音は’97年とありますが、20年という時間の経過を感じさせない素晴らしい音です。 使われている楽器(1995年製)は、ジルバーマン系の無名製作者により1735年ごろに製作されたハープシコードを元にしたもので、ジャーマンタイプの明るい音が印象的です。また、どうやらpeau de buffle(牛革)と思しきレジスターも持っているようで、音色の多彩さも聴きどころ。 CD冒頭1曲目は、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番の編曲。この曲、なぜか亭主がこのところよく遭遇する作品の一つで、つい最近もジャン・ロンドーのデビューアルバム「イマジン」で聴いたばかり。とはいえ、シュタイアーの演奏はよりヴィルツオージティを誇示する感じで、いかにも「鍵盤」風です。 そして2曲目がラジオで流れたラインケンの作品、ソナタ イ短調(BWV965)です。シュタイアー自身による解説記事によると、バッハがラインケン(1623-1722)と知り合ったのは彼がまだリューネブルクにいた10代後半の1700年〜1702年の間で、原曲「ホルトゥス・ムジクス」(ラインケンの室内楽曲として唯一現存している6曲のパルティータからなる作品で1687年出版)のバッハによる編曲は1703年から1705年の間に完成していたということですから、若いバッハが巨匠の作品を研究した成果、ということになります。 亭主はラインケンの作品はもちろん、その人物についても全く無知でしたが、シュタイアーが奏でるバッハ編曲版を通してこれらを聴いていると、まさにフローベルガーやルイ・クープランの鍵盤音楽の世界が立ち昇ってくる心地がして陶然となります。「彼以前の全ての音楽がバッハに流れ込む」という誰かの有名な言説がありますが、これらの編曲作品群はまさにそのことの証でもあります。 ところで、ラインケンの2つ目の編曲ソナタ、及びバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番編曲では、バッハが「やり残した」残りの楽章についてシュタイアー自身が編曲を行った版の演奏が楽しめます。特に面白いのが後者で、シュタイアーらしいヴィルトーゾ演奏が爆発する感じです。 ちなみにこのCD、その昔テルデックやエラートから出ていた古楽の録音を一昨年に「オリジナーレ」シリーズとして再発されたもの。発売当時、亭主もスコット・ロスによるダングルベールの作品集を購入して悦に入っていましたが、こうしてみるとまだまだ興味をそそられる録音がいくつもあります。亭主もこのCDを購入するついでに、同じシュタイアーによる「ファンダンゴ」と曽根麻矢子さんの「ジュ・レーム」をゲット。しばらくは退屈しなくてすみそうです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年05月28日 20時40分49秒
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