イタリアでわたしは「ガイジン」だ。
先日の新聞(METRO誌)にあったこの記事は他人事ではない。Sono 2.193.999 gli stranieri che soggiornano regolarmente in Italia.
I permessi in scadenza sono 1.316.179,
mentre quelli rinnovati o rilasciati ex novo sono complessivamente 1.147.194.
Le pratiche giacenti in questura sono 260.000.
Le cifre sono state fornite dal ministro dell’Interno Pisanu.
Il Viminale “sta definendo un progetto triennale per snellire le procedure
e abbattere i tempi di rilascio dei permessi”.
Che oggi sono lentissimi. Il tempo medio di attesa e' di 113 giorni,
con un minimo di 15 giorni a Prato e un massimo di 11 mesi a Roma.
A roma e Milano sono presenti 537.734 stranieri.
イタリアに正規の手続きを踏んだ上で滞在している外国人は219万3千999人である。
うち、滞在期限が迫っているものが131万6千179人、
期限延長申請中、または許可証の交付待ちが合わせて114万7千194人だ。
警察署内にある滞在許可証関連の書類で手付かずのものは26万もあるという。
これらの数字はピサヌ内務大臣の調査報告によるもので、
同省は現在、手続きの簡素化、
許可証発行期間短縮のための3か年計画を決定すべくある。
とにかくこの手続きというのが遅いのだ。受け取りまでの待ち時間の平均は113日間。
最短のプラート市で15日間、最長のローマ市だと11ヶ月である。
ローマとミラノには現在53万7千734人の外国人がいる。
(注)この他にヤミ滞在者が大勢いるので、
これらはあくまでもイタリア政府が把握している表向きの数字である。
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この国では3ヶ月以上の滞在にはパスポートの他、1年ごとに更新可能の
滞在許可証というものを必要とする。
学生だった時を含め、既に何度か滞在を延長をしてきたが、
この申請がくせものなのである。
イタリアに住む外国人が誰しも必ず経験する
わずらわしい手続きナンバーワンだ。
その理由は、怠惰と緩慢から来る
警察署の仕事の遅延、いい加減さによるものである。
わたしは9月20日、労働者のための滞在期限の延長を申請しに行ってきた。
これは次の滞在許可証がもらえる手続きでは決してなくて、
延長を申請する権利を手に入れるだけの手続きだ。
朝8時半に窓口が開く地元の管轄警察署に、8時10分頃到着した。
予想してはいたが、既にわたしが到着した時点で
かなり長い外国人の行列ができていた。
60人ほどであろうか。
日本人は皆無。多いのは東欧人。
ルーマニア、ポーランド、アルバニアなどである。
それぞれ言語が通じる人同士の群れができていく。
心強いだろうなあ、うらやましい。
南米人(スペイン語圏)もとても多く、フィリピン人、中国人、
バングラディシュ人のグループもできていく。
以前、友人の付き添いで行った別の警察署では、
並びさえすればその日のうちに少なくとも
「○月○日に○○を持って来い」と書いた紙をくれたので、
確実に順番が来るという保証があった。
しかしこの警察署の態勢は最悪で、
毎日最多の場合でも20人にしか手続きをしないとのこと。
60人が列を成しているというのに何ということだろう。
当然、並ぶ外国人の数は日毎に増していく。
確実に手続きをしてもらうには20番以内に入らなければならない。
周りに並ぶ人々と時々雑談しながら、
窓口が閉まる12時半までそこにいてはみたが、
21番目以降に並ぶわたしたちにはなしのつぶてだった。
12時半の時点で有志20人あまりが募って、
次の日の朝の順番を紙に書くことになり、わたしは11番を得た。
そしてその順番が無効にならないように
そのリストに名前がある20人あまりの人々の間で、
常に誰かがその紙を持って警察署の前で待つという
おそろしいシフトをスタートさせることとなった。
日本シリーズか、これは。
わたしは21時からの担当になり、
じゃあまた今晩会おうね、と彼らと一旦別れた。
しかしどうにも腑に落ちないものが。
正規に滞在していて正当な方法でその期限を延長するだけだというのに、
何でこんなことまでしなくてはならないのだ?
冷静になって考えれば考えるほど頭にきたわたしは、
これは正当法ではやってられんと思い直した。
警察署の人を知っていそうな誰かに
便宜を図ってもらえるようにお願いしようと思ったのである。
そこで頭に浮かんだのがウチの大家、ジャンカルロ。
父親が洗濯機や冷蔵庫の修理の仕事を営んでおり、
長男の彼も本業は消防士ではあるが、
父親を手伝っているのである。顔が広い。
夕方帰って一部始終を話すと、
意外とあっさり「知り合いが何人かいるから頼んであげるよ」と言ってくれた。
警察署で働く知り合いのうちの一人というのは
彼のお姉さんの同級生だった女性で、すぐに連絡がついた。
残念ながら彼女は外国人の担当ではなかったのだが、担当の人を紹介してくれ、
その担当の人というのもジャンカルロのお客さんだったので、
幸いにもこの時点で既に見通しは明るかった。
話をつけておいてくれるというので書類をジャンカルロに渡し、
夜通し並ぶことをせず(つまり他の外国人たちとの約束を「ブッチ」してしまったのである)、
次の日は仕事に出かけた。
昼頃、警察署に行ってくれているジャンカルロから電話が入り、
「今すぐ手続きをしてもらえるからすぐにおいで」と言われたので、
この機会は逃せないと思い、同僚たちに事情を話し、
タクシーを警察署まで飛ばした。
タクシー代10ユーロは自腹だが、背に腹は変えられない。
到着すると、手続きはほとんど済ませてくれており、
わたしのサインと指紋だけが必要な状態であった。
ちなみに滞在期限延長の申請中では
一旦国外に出てしまったら、再入国はできない
(ヴェネツィアの友人Fは大丈夫だったらしい。
この辺がイタリアならではの「いい加減さ」の成す業だ。
場所によって、そしてひどいことに担当の人によっても
きまりが異なるのである。
マニュアルがあったとしても誰も知らない。
なお友人Fが書いた滞在期限延長の手続きに関するエッセイも、
その「いい加減さ」をいつもの筆致でうたっていてとてもおもしろい。こちらへどうぞ)。
わたしも実際に強制送還された日本人の話などを
散々聞かされていたので、もちろん知っていた。
係のおばさんに「一旦出たら帰ってこられないからね」と念を押されて
「ハイハイ」と返事をしておいた。
バレればフィウミチーノ空港から成田へとんぼ返りだが、
わたしはこの翌日、日本出張へ出かけ、
2週間後、観光客にまぎれて無事イタリア入国を果たしている。
さて、今回わたしは、2年前くらいから外国人に義務付けられている
指紋採取を初めて体験した。手のひらと指一本一本。
右手と左手を係の人になすがままにされ、黒いインクを付けられて、
用紙にペタッペタッと押し付けられる。
まるで犯罪人のようなので
友人の間でも嫌な思いをしたという感想を持つ人が圧倒的に多いのだが、
手形をとって遊んだりした幼い頃を思い出し、
わたしにはけっこう楽しかった。
列に並ばずほんの10分ほどで終了した手続き。
許可証を実際に受け取れるのはいつになるか分からないが、
少なくとも夜通し並ぶことはしなくて済んだ。
こういったことができないほとんどの外国人たちには本当に申し訳ないが、
この手のことが21世紀の現在も通用するイタリアが問題なのだと思う。
これを書いちゃうこともかなりヤバイのだろうが、
わたしは敢えて暴かせて頂く。
これがイタリアの現実。コネ社会。
「ノッテ・ビアンカにあやうくなるところだったね」と友人に言われた。
ノッテ・ビアンカとは、直訳すると「白夜」だが、
ローマで年に一日だけ行われる街中が夜通し眠らない、というイベントである。
今年が2回目で、9月18日に実施された。
夜中、いや朝方まで市内の美術館・博物館・商店などが開き、
交通機関が特別運行するのである。
わたしの「眠らない夜」、まさしくその通りである。
大変不条理なノッテ・ビアンカを過ごすところであった。
コネで乗り切るイタリア生活。
ジャンカルロよ、ありがとう。
わたしもイタリア式に人生を渡っていけるようになったものだな、と
皮肉にも思う今日この頃である。
(2004年11月)
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ちなみに実用的な情報をここで一つ。
警察署によって異なるのだが、
わたしが労働者のための滞在許可証延長をするために、
地元警察署で求められた必要書類一覧を載せておこう。
Permesso di soggiorno + 2 fotocopie
(現在の滞在許可証とそのコピー2枚)
Passaporto originale in corso di validità + 3 fotocopie
(現在のパスポートとそのコピー3枚)
5 fotografie
(顔写真3枚)
Marca da bollo di 11 Euro
(11ユーロの収入印紙)
Codice fiscale
(税務番号カード)
Nullaosta dell’ufficio provinciale del lavoro con timbro di questo ufficio originale + due fotocopie
(県の労働認可証とそのコピー2枚)
Ultime due buste paga in originale + due fotocopie
(最近2ヶ月分の給与明細とそのコピー2枚)
Dichiarazione in doppia copia del datore di lavoro
(雇用者による雇用申告証)
Due fotocopie del documento di identità del datore di lavoro
(雇用者の身分証明書のコピー2枚)
Codice fiscale datore di lavoro o partita IVA
(雇用者の税務番号カードのコピー2枚)
これに加えて、あらかじめ警察署でもらい、空欄を埋めた状態の
滞在許可証申請用紙が必要である。
これらが同じローマでも、友人の管轄警察署ではこうである。
6 foto formato tessera
(顔写真6枚)
Una marca da bollo da 11 Euro
(11ユーロの収入印紙)
Passaporto con validià almeno di tre mesi + due fotocopie
(有効期限まで3ヶ月以上あるパスポートとそのコピー2枚)
Permesso di soggiorno + due fotocopie
(現在の滞在許可証とそのコピー2枚)
Codice fiscale + due fotocopie
(税務番号カードとそのコピー2枚)
Comunicazione di assunzione per l’impiego + due fotocopie
(雇用契約証とそのコピー2枚)
Dichiarazione assunzione modulo “B” allegato + due fotocopie
(《あらかじめ警察署でもらっておき、空欄を埋めた状態の》滞在許可証申請用紙とそのコピー2枚)
Documento identità datore di lavoro + due fotocopie
(雇用者の身分証明書のコピー2枚)
Codice fiscale o partita IVA datore di lavoro + due fotocopie
(雇用者の税務番号カードのコピー2枚)
Ultime tre buste paga + due fotocopie
(最近3ヶ月分の給与明細とそのコピー2枚)
Comunicazione cessione di fabbricato + due fotocopie
(アパートの契約証とそのコピー2枚)