* 第八話~謎の訪問者part2~ *
協力者:Dead-Angel様
健人はコバルトの修復作業に勤しんでいた。何せ、負けたのは初めてだし、それに、コバルトの体はこんなにも傷付いているのだから…。
となりで、ルトが心配そうに見守っている。
「よし…修復作業完了!」
そう言って、エンターキーを押した。
コバルトの体は完全に修復された。
だが、なかなか目を覚まさない。
「おい、どうしちまったんだよ!コバルト…!コバルト!!」
「兄ちゃん!!」
二人が何度呼び掛けても、コバルトは全く起きる気配が無かった。
「何でだよ…コバルト…起きてくれよ…」
健人の頬に、一筋の涙が伝った。
「ぼく…さっきの人、探して来る…」
突然と言ったルトに、健人は驚いた。
「馬鹿!お前だけじゃあぶねぇだろ!!」
「だって…あの人、何か知ってそうなんだもん!それに、まだ近くにいるかもしれない!だから、探してくる!」
ルトは、紺色のスカーフをなびかせ、秋原エリア方面へと走って行ってしまった。
「馬鹿!行くな!…どうすりゃいいんだよ…」
――――
ルトは秋原エリアを歩いていた。
「銀髪で、長い髪の人…」
それをぶつぶつ呟きながら。
「はぁ…どこにいるんだろう…」
ルトは、歩き疲れてその場にペタリと座り込んだ。
するとそこに、ポワルドが分銅姿になり、ルトに向かって落ちて来た。
ルトはすぐに気付いたのだが、どうしていいか判らなくなってしまった。
「う、うわぁああぁぁあぁあ!!」
もうダメだと言わん許りに、頭を抱えて、叫んだ。
すると…
「絶氷刃!」
ズバッ!
ルトの頭の上から落ちてきたポワルドを凍結した剣が二つに切り裂いた。ポワルドは、細かなデータとなり、消えていった。
ルトが目を開けると、そこには銀髪の長髪を持った青少年が立っていた。
「…あ、あなたはさっきの…!助けてくれてありがとう…」
とりあえず、ルトは礼を言った。
そして、
「あの…聞きたい事があるんですけど…」
ルトはその青少年に、恐る恐る話しかけた。
「なんだ?言いたいことがあるのなら早く言え…私とて暇な身ではないからな」
その青少年は、少し面倒臭そうにそう言った。
「あ…あの…兄ちゃん…コバルト兄ちゃんが…なかなか目覚めてくれないの…傷は治ったのに、全然…起きようともしないんだ……ねぇ、どうしたらいいか教えて…!」
さっきは丁寧語で話しかけたのだが、必死なあまり、またいつものタメ口の話し方に変わっていた。
「目が覚めない…傷は完治…
…………、そいつを見せてくれ!」
青少年は少し焦り気味にそう言った。
「あ…うん!」
溢れそうな涙を拭き、
「こっちだよ!早く来て!」
ルトは、青少年を連れて健人のパソコンへと案内した。
――――
二人が着いた時、健人は俯せになって、涙を流していた。
コバルトはまだ寝たままの状態であった。
「健人…連れて来たよ!」
「……!」
ルトは健人を、気付かせた。
「あんたは……いやそれより、お願いだ…こいつを…コバルトを……!」
そう言って、健人は声を殺して泣いた。
「…リリ!リリ!」
その声に反応したかのようにコバルトの体から綺麗な女が現れた。
「人間は体温が下がると全身の機能が麻痺し、動かなくなる…リリは氷属性を持っていて、他人に入ると体温を奪う。このナビも半冬眠状態になったのだろう、すまなかった」
「ごめんなさい…」
青少年が説明をし、「リリ」と呼ばれた女性は、謝った。
そして…
「ぅ…うぅん…」
コバルトが目を覚ました。
「…コバルト!」
「兄ちゃ~ん!」
健人はうれし涙を流し、ルトはコバルトに抱き付いた。
「わ~い♪兄ちゃんが起きてくれた♪うわぁい♪」
「ルト…きつい……それより…俺は…今まで一体…何を…」
「すまない…私の使い魔がお前に取り付いていた、この馬鹿が!」
「ふぇ~」
青少年は、リリと呼ばれた女性に叱り付けるように、そう言った。
「…そうだったのか……すまんなルト、健人…心配かけて」
コバルトは何事もなかったかの様にそう言った。
そして…
「……また、あんたに会えるか?」
そう青少年に聞いた。
「私は強き者を求める、強さを求める限りいつでも会えるさ…
私は闇…ウラの放浪者…次戦う時はこいつも一緒だ」
「凍らせちゃいますよ~(^-^)」
青少年は少し笑みを見せ、リリと呼ばれた女性は笑顔でそう言った。
「あぁ…判っている……だが…その為には、アンタと普通に殺り合える様になるほどに強くならなくてはな…」
コバルトは笑みを浮かべてそう言った。
「ならせめて最低でもHPを280 にするんだな、そうすれば1回なら全ての攻撃を耐えることができるだろう」
「あぁ…判った…」
「でも、その為のメモリってどこに…?」
健人が首をかしげた。
「安くて1000ゼニー、高くて70000ゼニーで売られているぞ…」
「だとさ…健人…」
「…以外と高いんだな…まぁ、1000ゼニーぐらいならあるけど…」
健人は顔をかいて言った。
「ぐらいって…どの位なんだ?」
「せ、1600ゼニー…」
コバルトは少し、引きつった顔になった。
「…貸そうか?」
青少年は健人に尋ねた。
「い、いやぁ、いいよ…後で返さなくちゃいけなくなるし(汗)」
健人は頭をかいた。
コバルトは、呆れ顔をしていた。
そして、青少年はコバルトに小声で、
「苦労してるんだな…」
そう言った。
「まさか…ここまで頼りないとは思わなかったんだ…」
コバルトも、小声で青少年にそう言った。
「私も店を開いているもしよかったら見ていってくれ…じゃぁな」
そういうと秋原エリアへと向かってインターネットの空間に闇を作り出し、消えていった。
「…でも、店ってどこに?」
「探すしかないだろう…」
「だよな…」
「それより…健人がいつもレアチップにばかりにこだわってるから、そう言う事になるんだぞ!少しは反省しろ!!」
「ハイ…すみますんでした…」
その後、コバルトにこっぴどく叱られる健人であった。
(続く…)