『小市民はビジネスクラスへ乗るな』『小市民はビジネスクラスへ乗るな』俺はビジネスクラスに座ったことがある。 もちろん自分からそんな高いシートの席を買ったワケではない。 いつも格安航空券のエコノミーだ。バンコクまで往復5万円台というアレである。 最近はホテル付きのパックツアーでもっとお得なチケットもあるが、 子供の頃から集団行動が大嫌いな俺は往復チケットのみを買っている。 それに俺が送迎バスや高級ホテルなんてとても似合わない。 現地の宿なんて着いてから探せばいい。1泊¥200ほどの安宿なんて 10分20分も探せば必ず見つかるのだ。 さて、今回は帰国時の話だ。 いつものようにバンコクの空港で帰国のためのチェックインをすると係員が 「あなたの席はない」と言った。 ナニ?ディスカウントチケットは優先順位が低いから? それとも俺の同行者いっちゃんの風貌が中近東の人のように濃くて怪しいからか? すると係員は予想だにしなかった事を告げた。 「エコノミーシートはすでに満席で・・・。申し訳ないですけどビジネスシートに 空きがあるんでそっちに座ってくれますか?」 おお~っ!ブィズィネスシートぉ~?!しかもそっちに座ってくれませんかあ~? 俺といっちゃんは満面の笑みを浮かべて「喜んでっ」と叫びたかったが、 小市民に見られるのが恥ずかしかったので何気に「わかりました」とだけ答えた。 すでに心の中で俺達2人は王様気分だった。 ビジネスシートってことは空港内の何とかラウンジとやらもタダで入れる。 いわゆるVIP扱いってやつである。大富豪のみが入るのを許される禁断の世界。 あの未知の空間はどんな事になってるんだろう? JALのラウンジでは着物を着たお姉さんが琴をつまびき、ロシアの航空会社では ウオッカ片手にコサックダンスが繰り広げられ、インド系航空会社のラウンジでは サリーを着た女の人や象がパオ~と出迎えて花吹雪まみれになってるのだろうか? (結局、想像と現実のギャップを見てしまうようで入るのはやめた。) そしていよいよ機内に搭乗。おお、俺達の席はホントにビジネスだ。 シートがデカいっ。周りの人達の服装もスーツとかでビジネスマンっぽい。 みんな日経新聞やらニューヨークタイムズなんかを読んでいる。 場、場違い過ぎるっ。俺達はテレンテレンのTシャツに4日間履き通していたズボン、 しかもゾーリだ。まあ、そんな事は知ったこっちゃない、背もたれのチェックだ。 「うお~、すげえ。リクライニングどころかコレじゃベッドだぜ」 「ひゃ~、こんなところにTVがついてるっ」 「ココいじくると肘掛けが出てくるぜ、いっちゃん」ナドとやっていると 「お客サマ、まもなく離陸ですのでシートをお直しになって下さいませ」などと 言われてしまった。うへ~、どうやって戻すんだ?わかんねえ~。 何だかんだで離陸して最初に飲み物サービスになった。 「Excuse me, Mr.Saito. Would you like to~」などとMr.付きで呼んでくれる。 (ただリストを見て名前言ってるだけなんだろうけどね) 日頃ワインなどというシャレたものなんて飲まない同行者のいっちゃんも 「ああ、ロゼをいただこう」なんて隣りで言っている。 そして待ちに待った機内食だ。ここで俺達の本性はいとも簡単にバレる事になる。 (つーか、もうすでに服装からして怪しく思われてるケド) 前日の夜はバンコクの裏通りで朝まで屋台を手伝っていた俺といっちゃんは 空腹がゆえに料理に敷かれていたサニーレタスまで食い尽くして笑われてしまった。 しかも徹夜がたたって 俺はデザートのアイスクリームを食わずして寝てしまった。 読者の皆さんにアドバイスをしておこう。 最初に運ばれてくるパンを食い放題だからといって7個も食ってはイケナイ。 あとでメインディッシュが運ばれてくるぞ。 ジャンル別一覧
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