演歌を検証【演歌を検証】大みそかの夜に観るTV番組といえば文句なしに「紅白歌合戦」(以下紅白)が挙げられる。 日頃「NHKなんて観ねえ」と受信料を払ってない人達も、台風情報と紅白だけは観るんじゃねえかな? 俺は紅白のあのNHK的な堅苦しさ、リハーサル通りに進行しているだろう雰囲気が好きではない。 紅白でせいぜい話題になることは「○○の衣装代が何億」だとか「今年のトリは○○」程度で、 演歌を歌う人なんか数十年前の唯一のヒット曲1曲にしがみついてその曲を歌う。 あの番組は浮世の無常、栄枯盛衰の縮図を見ているようで少し虚しくなる。 いるではないか、今年大人気になったけれども翌年にはすっかり忘れ去られている一発野郎が。 それはそれでブームだから仕方ないが、その栄光にぶら下がって歳を重ねた年配歌手は惨めである。 出場歌手を決める役員の人達も大変だなあと思う。 どう選出しようとも「あの人が出場してるのに、なぜあの人が出ないのだ?」と 往年のファンから文句をつけられるのは当たり前だからだ。 うちの母親なんて「なんで私の好きな森さんがこんなに早い時間に登場するだね!」と、 より遅く登場する方が大御所といわれる演歌の世界ゆえの文句を言ったりする。 演歌の世界ではどうやらパッと人気の出た歌手は好かれないようである。 苦節何年、とかをキャッチフレーズにして極貧時代、泣かず飛ばず時代、家族の死など とにかく苦労してやっと認められたという「長い道のり」がどうしても不可欠らしいのだ。 そしてそれらの怨念をコブシに乗せて涙ながらに歌うのが演歌の真髄である。 歌い終わった後はウルウルと涙で滲んだ目を正面やや上方に向けて輝かせ、 マイクに通らない程度の声で「ありがとうございました」とクチパクするのが美徳とされる。 もちろん歌詞にも厳密なキーワードが存在していることは言うまでもない。 キーワードは「夜・海・冬・雨・涙・北・星・別離・酒・雪・怨み」など あくまでもネガティブで暗く、歌詞を読むだけで落ち込んでしまうものでなければいけない。 これらのキーワードを全く反対語にした「昼・山・夏・晴・笑・南・太陽・出会い」などが 一文字でも入っていたらそれはもはや演歌ではない。ポップスである。 つまり演歌には絶対に必要なキーワードと、絶対にタブーのキーワードがある、と俺は検証した。 曲の結末も絶対に「別れ・すれ違い・裏切り・虚しさ・悲しみ・死」でなければならず、 ハッピーエンドに終わろうものなら途端に演歌としての評価や支持を失ってしまうようなのだ。 そんなわけで演歌というものは、ホロ苦い人生を送って来た人が自分の過去と歌とを重ね合わせて 独り酒場でチビチビと酒を飲みながら追憶と共に口ずさむ心の歌であるのだ。 「おカミさん、もう一杯だ」「たーさん、身体に悪いよ、もうお止しよ」の世界である。 俺はまだまだ甘ちゃんなので演歌の良さは身に沁みて分からない。 といいつつも大みそかの夜は両親のいる実家に行くのでついつい紅白で演歌を観て聴いて 「今年はこりゃ白組の勝利だら」と案外ハマリ込んでいたりするのがちょっと哀しいお年頃である。 |