恐怖の避難小屋【恐怖の避難小屋】今月号は中央アルプスの空木平(うつぎだいら)避難小屋で体験した不思議現象のことを書こう。 最初に断っておくが俺は神も仏も幽霊も信じないし見たこともないし霊感なんてこれっぽっちも持っていない。 今まで1度も霊体験なんて味わったことがないので、その夜も独りで無人の山小屋に平気で泊まっていた。 夜8時前、独りぼっちだし暗いので寝ることにした。寝袋に入り持参したランプの火を吹き消す。 シーンと静まり返った小屋内。外には全く風がなく草のそよぐ音もない。 ランプを消してほんの5分後、床がミシリときしむ。それを合図にしたかのように壁もドン!と鳴る。 真っ暗闇の中で目をこらし、「何だ?」と思う。音はどんどん大きくなり、パキン!ミシッ!と響く。 ラップ音?まさか。幽霊なんて迷信だ、と科学的に音の原因を解明しようと考えた。 木で出来た床や壁が空気の乾燥や気温差によってきしんでいるだけだと自分に言い聞かせる。 しかし尋常ではない音の大きさである。そして遂に枕元をドン、ドン、と歩くような音。 たまらずに靴も履かずに小屋の外へ逃げ出した。外は相変わらず無風で満天の星空だ。 しばらくして小屋に戻るときしみ音は止まっている。ランプのロウソクの火を点けて再び寝袋に入る。 しかしもう眠れない。心臓が高鳴っている。ランプに照らされた小屋内を見回すが誰もいないし異常はない。 ウトウトして2時間後ぐらいか、ロウソクの火が尽きた。すると、何とまたしても始まったのである。 ミシリ、ギシ、ドンドン、パキン!パキン!足音は屋根の上も歩き回りトタンのずれる音までするほどだ。 とっさに懐中電灯を点けると音は止まるのだ。全身に鳥肌が立ち涙が出そうになるほど怖くて小屋から出た。 またしても靴下のままである。あり得ない!寒さと恐怖でガタガタ震えている自分を落ち着かせる。 小屋に戻りランプを点けるがランプ用ロウソクは短いために2時間しか持たない。 明かりのある2時間はまたしても無音だ。まだ深夜0時である。 気が高ぶっていたが疲れのためうとうと眠った。パキンッ!という大音響で飛び起きた。 ロウソクの火が消えている。ズルズル、ミシリ、パキン、ドンドン・・・。 声にならない悲鳴をあげて外に飛び出す。一晩中これの繰り返しだった。 霊の姿を見たわけではないが「明かりを点ければ静まり返る」というのが 木の乾燥、気温差うんぬんが問題ではないのが分かる。一体なんだったのだ? 帰宅しても信じられずに、というか真実を知りたいと思ってネットで調べてみたら 俺が泊まった3ヶ月前にこの山で遭難事故があったばかりだった。 それどころではない。何とこの避難小屋はいわく付きの小屋で 木下寿男氏「山の軍曹カールを駆ける」(山と渓谷社)という本に管理人の体験談として、 遭難者の遺体安置とか小屋前で火葬とか亡霊が立っていたとか、この小屋の怪について書かれていた。 知ってたら絶対この避難小屋には泊まりに行かなかったのに。 この夏、刺激が欲しいアナタに強くオススメしたい宿である。(注:麓から徒歩5時間ほどかかります) ![]() ジャンル別一覧
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