出るに出れない【出るに出れない】先回「お薦め秘湯」というタイトルで温泉のことについて書いたところ、 複数の読者さんからの反響メールがあったので今回も温泉についての続編を書いてみる。 温泉または入浴施設に行くと大抵は端っこにサウナというものがある。 俺はそんな我慢比べ的なことは嫌いなのでサウナなんてものには入らないのだが、 以前富士山麓の入浴施設に行った時になぜかちょっとだけ覗いてみようと思い立ったのだ。 サウナの扉を開けて中に入った瞬間、「うお、暑っ!」とすぐさま出ようとしたのだが、 中には初老の男性がジッと座っており軽く会釈をされてしまったのである。 そういった状況になってしまった以上そのまま3秒で退出するわけにもいくまい。 俺はストーブが8つも置いてあるサウナルームにそのまま居座ることとした。 しかし何じゃ、この暑さは。昔バイトしてた瓦屋の窯部屋よりも暑いぞ。 かといって隣りの初老の男性より後に入って来て先に出るのは男らしくない。 とことん我慢比べしたろーじゃねえか、と1人で勝手に戦闘モードである。 5分経つ。隣りの男性は一向に先に出て行く気配を見せない。 まさかヤツも競争心を出して俺が先に出るまでは動かんつもりなのか? 約10分。俺はもう体内の水分が全て出尽くしたようにカラカラである。 ま、負けた。俺はいかにも平静を装いスマートに笑顔で「お先に」と部屋を出る。 おー、何てこった。ちょっと中を覗いてみようとしただけなのにこんな目に遭うとは。 入浴施設で死亡、というのは案外こういう意地の張り合いで起きるのかも知れない。 逆に露天風呂で寒くてガタガタと震えた体験もしたことがある。 新穂高温泉の橋の下の露天風呂が無料だと聞いて入ってみた。 そこは観光ガイド誌にも載るらしい有名な露天風呂で水底には玉砂利が敷き詰めてあり、 入った時には雑誌か何かの取材で男女の外人モデルが水着を着て撮影していた。 季節はそろそろ秋、温泉入口には「33度とぬるめなのでご注意」と書いてあった。 入っているうちはいいのだが、さて湯から出ようとするとすげー寒いのだ。 濡れた身体が冷たい風に吹かれると一気に全身に鳥肌が立ち、唇はブルブル震え歯はガチガチ鳴り 「おお、寒くて出れん」ともう1度湯に戻って入ってしまうのだ。 まるで冬の朝に布団から抜け出るほどのふん切りを要するのである。 出るに出られない寒さの中、震えながら出て急いで身体を拭いて服を着たが、 もちろん俺の下半身は文字通り縮みあがっていた、という下ネタにて締めくくるぜ。 |