「政治家の言葉:特別対談」作家 保阪正康氏、文芸評論家・斎藤美奈子氏・23,30日朝日新聞・「ひもとく」読書欄
私:斎藤氏は、暴言や失言をする政治家には三つの特徴があるという。 (1)過去への敬意を欠いている。歴史を知らないし、先人に学ぶ気もない (2)現在、すなわち国民に対する誠意を欠いている。適当にごまかそうとする (3)未来に対する責任を欠いている 保坂氏は、本を読まない人の特徴とも重なり、 (1)形容詞が多い (2)結論しかいえない (3)耳学問だから話がもたない という特徴をあげている。 A氏:言葉の劣化は、小選挙区制が導入されてからという。 与党が大勝すると、小選挙区で負けても比例で復活する人がいて、裏口入学みたいだ。 受かるはずのない人が受かってくるのだから、失言の多発も当然で、「ワンフレーズ政治」は、小選挙区制で強化されていき、小泉政権しかり、安倍政権しかり。 私:保坂氏は、安倍政権の言葉がなぜ軽いのかは、歴史と比較してよく分かるといい、「戦間期の思想」は問題だという。 「戦間期」とは、第1次世界大戦から第2次世界大戦の間で、「戦間期の思想」とは「領地を失ったけれど、次は取り返してやる」というもの。 日本は45年から、「戦間期の思想」を持たないという壮大な実験をやっているから、ずっと「戦後」だ。 安倍首相が危ないのは、「戦間期の思想」を持っているんじゃないかと外国から疑われかねないことだと保坂氏はいう。 A氏:30日の対談では、失言や暴言ではなく、名言にもふれている。 後藤田正晴は法務大臣のとき、87年のイラン・イラク戦争で、交戦地域への自衛隊派遣は参戦と同じだとして閣議で署名を拒否したという。 順法精神を掲げて筋を通したという。 私:77年の日航機ハイジャックのとき、福田赳夫元首相は「人命は地球よりも重い」と発言し,非難もあびた。 一方、安倍首相はISに日本人の人質が殺されても「テロには屈しない」で通した。 A氏:90年のイラクのクウェート侵攻で米国の軍事制裁への協力を求められたとき、当時の海部首相は憲法の制約があるからと断った。 しかも「その憲法を日本と一緒になって作ったのは米国だ」とまで米国に言った。 90年代の初めまではそれがまだ常識で、米国にも物を言っていた。 私:戦前で有名なのは36年(昭和11年)の衆院本会議での斎藤隆夫議員の粛軍演説だね。 4年後の「反軍演説」で斎藤議員の除名動議が出て、7人が反対、296人が賛成し、144人が棄権欠席。 保坂氏は、144人が人間の弱さを示しているという。 政治家に限らず、暴言や差别発言などや言葉の劣化もそうだが「記憶にない」「文書にない」「文書は処分した」という言葉の問題点には誰かが気づいて追及しないと、簡単にスルーしてしまう。 聞くほうも、正しいセンサーを持つことが必要だね。 森友学園の国有地払い下げ、加計学園の獣医学部の問題、稲田防衛大臣の日報など、いつまでたってもすっきりしない政治状況に、国民のセンサーが働いて、安倍政権の支持率の急速な低下になったんだろうね。 やはり、背景には小選挙区制、政治主導への転換とそれによる安倍政権の独走が、今日の政治の劣化をまねいたのだろうか。