『源氏物語 千年の謎』
懲りずに借りて観たDVD。かの古典ではなく、同名小説の映画化作品である。古典部分は、傍系の逸話を省いてだいたい、原作の「葵」の部分までをなぞっている。主題が一夫多妻社会における女の嫉妬と妄執なので、不必要な人物はそぎ落としてあるのだろう。空蝉も末摘花も源典侍も出てこないが、夕顔は勿論、重要な役で登場する。一方、台詞の方は必ずしも原典をなぞっているわけではない。おそらく現代の作者が書いた源氏物語の解釈のようなやり取りがなされているが、これがなかなかよく芯をとらえている、と思う。映画の冒頭、紫式部が道長に手籠めにされる。「われは道長にあらず。光じゃ」。全てはそこから始まった。二人に肉体関係があった、というお話はすでに『栄花物語』に出てくるので、新説というわけではない。が、真偽のほどは不明である。ただそのように仮定すると、これまで空蝉に作者自身の姿が投影されていたのではと考えられていたのが、六条御息所こそ作者の分身ということになる。そこで登場するのが安倍晴明だ。『千年の恋 ひかる源氏物語』と同じように、世界は現実と虚構の世界を行き来する。のみならず、登場人物も行き来する。一人は紫式部、もう一人が安倍晴明。安倍晴明は紫式部に道長への妄執の暗い炎を感知するが、六条御息所が葵を取り殺そうとしている場面にも現れる。晴明は生霊を退治しようとするが、諦めて引き下がる。結果はご存じのとおりである。しかしそれから間もなくして、御息所に倣ったのであろうか、(道長から身を引くように)式部は京を後にする。それを見て晴明は、これで道長さまが救われた、とほっとする。一方光源氏は救われない。橋の真ん中で紫式部に向かって、「なぜ私をこのように苦しめなさるのですか」式部は言う。「あなたは人より幸せな分、人より多く血を流すのです」車輪の倒れた京の都を、泣き笑いのような表情で彷徨う源氏の表情。暗転。終。紫式部は中谷美紀、藤原道長は東山紀之、安倍晴明は窪塚洋介、光源氏は生田斗真、六条御息所は『電撃婚』の田中麗奈、その他美形の俳優が多い。男女を問わず、目の保養になること請け合いである。【古本】源氏物語 千年の謎/高山由紀子【中古】 afb映画「源氏物語ー千年の謎ー」 オリジナル・サウンドトラック [ 住友紀人 ]【バーゲン】【中古】DVD▼源氏物語 千年の謎▽レンタル落ち【東宝】