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sakaimo0629

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2005.02.06
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中外時評
西武解体は恐怖のモデルか
中小事業者脅かす資産デフレ 論説委員 吉野源太郎

西武グループ解体の日が迫っている。

有価証券報告書への虚偽記載などが発覚した昨秋以来、グループ再建策を
検討してきた「西武グルーブ経営改革委員会」は中間報告をまとめた。
それによると、西武鉄道の親会社コクドを分割して優良資産は鉄道や
プリンスホテルと合併した新会社に集め、再上場を目指す。コクドは最大
2000億円の増資を行って堤義明前コクド会長の支配力を低下させると
いう。

マイカル、そごう、ミサワホーム、ダイエー-…。土地担保金融で成長した
数々の企業の破たん劇。大地主西武は大トリにふさわしい役者に見える。

バブル崩壊後、十余年にわたって続いた企業と銀行のバランスシート調整
は、これで一段落、日本経済は新しい局面を迎えた。西武問題はその象徴だ、
という楽観的な見方もある。本当だろうか。資産を奪われる堤義明氏は抵抗
しないのか……。

改革委員会の報告ににじみ出ているのは銀行の強い姿勢だ。新会社の社長に
はみずほコーポレート銀行の後藤高志前副頭取が就任する。西武は債務超過
でもないのに名実ともに銀行管理会社になってしまうのだ。

銀行を荒療治に駆り立てた背景には底の見えない資産デフレヘの恐怖がある
のではないか。

昨年末、第一生命経済研究所は「資産価格を総合判断する指標」を発表した。
内閣府の「国民経済計算」の動きを四半期ごとに見ようという試みだ。

それによると、昨年春ごろに一時、株価の持ち直しなどで下げ止まったかに
見えた資産価格は、その後地価下落に引きずられて再び縮小している。ピーク
時に約2,400兆円に達した土地資産価格は、昨年9月時点で1,200兆円
強とほぼ半減したと推定されている。

都心のオフィス・マンション建設ブームも、資産価格全体の底上げにはつな
がっていない。同研究所の永浜利広主任エコノミストは、地価低下傾向が止ま
るのは楽観的に見てもあと7年後になるのではないかと見る。

地価統計機関として最も信頼されている日本不動産研究所でも「地価下落を
伴う二極化はむしろ日本にまともな土地市場ができてきた結果ではないか」
(石橋勲研究部長)と言う。

不動産証券化などによって流動化が進む一方、土地情報の提供制度が整備される。
市場環境が整えば、地価は将来地代(収益)の割引現在価値こ近づいてくる。
こうなると市場は正直だ。使える土地は都心のごく一部だけ。中小企業や地方
経済が落ち込んだままの現在、資産デフレが進むのは当然だ。

西武グループの含み資産は現在でも1兆円を超えるといわれる。“原資”は先代
の堤康次郎氏が買い集めた土地である。例えば大正七年に買った中軽井沢の
土地は、80万坪で3万円。簿価はなんと坪3銭7厘5毛。今日まで持ち続けて
いるとすれば、時価評価のほとんどすべてが含みになる計算だ。

しかし、いくら簿価が安くても、地価がいつまでも下がり続ければ、1兆円余の
グループヘの融資が実質「担保割れ」になる恐れは十分ある。しかも事業が
うまくいってなければ、その土地の価格下落は加速する。その点で、西武グループ
の事業能力ははなはだ疑わしいというのが銀行の評価だ。

何も西武に限った話ではない。中小企業や個人事業者にとって、土地に頼れなく
なった現実は銀行との関係を一変させた。しかも相続には土地がもっとも有利
だった時代の家族観も揺らぎ始めた。西武グループの「土地と相続」至上主義は、
日本の大部分の中小零細事業者に共通する生き方だったからだ。

偉大な中小企業だった西武グルーブの再建が、様々なしがらみを引きずりながら
始まろうとしている。それは中小零細事業者にとって恐怖のモデルだ。

大企業に関連する不良債権処理はようやく山を越した。しかし、中小企業や地方
企業のバランスシート調整はこれからだ。折しもペイオフが解禁になる。事業所数
の大半、雇用の7割以上を占め、日本経済の底辺に根雪のように横たわる中小企業・
個人事業者の世界に、西武と同じようなドラマがこれから繰り広げられるかもしれ
ない。

バブル処理の第二幕はこれから始まるのだ。

【日本経済新聞2005年(平成17年)2月6日(日曜日)26面】より





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最終更新日  2005.02.08 02:26:37
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