淀風庵の酒詩歌日記

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• 森繁久弥の演じた織田作作品

  　森繁と織田作は大正２年の大阪生まれ、森繁が旧制北野中学卒で織田作が高津中学卒である。 　巡りめぐって、亡き織田作原作の映画『夫婦善哉』を演じて（１９５５年）、銀幕に本格レビューした森繁さん、舞台でも織田作の「わが町」を原作とした『佐渡島他吉の生涯』演じたが（１９５９年）、当たり役となった。 　「人間、身体をせめて働かな、ひとり前になれへん」との他吉（他ぁやん）のセルフのような生き方だった？森繁さん、さよなら。 　後にその舞台を北大路欣也が引き継ぎ（１９９７年）、そして、今年は赤井英和が『わが町』で他吉を演じて話題となった。

  2009年11月13日

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• 雨後の青山のごとき酒

  　酒仙境さんが醸した肥前の特別醸造酒「雨後青山」を飲んでます。 ソフトでまろやか、ほのかな甘味、冷でも燗でもＯＫです。 酒燗器でやんわり温めるのが美味さをさらに醸すようだ。喉ごしもなめらか。 　白楽天の歌に「林間に紅葉を炊きて酒を暖む」というのがあり、当時の上流階級、貴族の間ではお酒を温めて出すようになった。 　８世紀当初、藤原左大臣が、嵯峨天皇と交野原へ猟に行ったとき、寒くてお酒を暖酒、つまり燗で温めて出したのが、日本での由来らしい。 　「燗酒は若き乙女の乳房の如き温かさなれば良し」とか、これ人肌燗だな。　　　ぬる燗をゆるりと口にひとり膳（拙句）　http://ugonoseizan.com/?tmid=31

  2009年11月12日

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• 酒の詩歌句集サイトと酒本ライブラリー

  　寝室と書斎と応接室を兼ねた６畳間に酒本が５００冊以上となり、さらに最近織田作がらみで大阪ゆかりの作家の本とか資料類も加わり、書棚や押入れも限界で、畳の上にも乱雑に積んでます。　吊るした洋服やシャツ類が部屋を斜めに横切り、窓際には洗濯物がぶら下がってます。とても写真ではお見せできません。　「明窓浄机」という言葉がありますが、塵ひとつ落ちていない清々しい部屋とは程遠い団地住いとなってます。歌人ならぬ家人には「下手の横好き」、ええ加減にしてほしいと文句いわれてる次第です。ますます身の置き場があ～りません。　窓から見える淀川や生駒山の景色、パソコンに向かいながら読書するときだけに救われる思いです。　唐津の酒の杜氏さんのサイト「酒仙境」のページに、このあたりのことも含めて、酒の詩歌句集サイトづくりと酒本蔵書の現況を綴らせていただきました。　　　　http://ugonoseizan.com/modules/fanclub2/content/index.php?id=4&tmid=15

  2009年11月05日

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• 消えた金魚

  　秋深し木枯し一番枯葉舟　（季語の三重唱だ） 　噴水池から２００匹ほどの金魚が数匹を残して消えてしまった。 　とくに盆踊り以降、屋台の金魚すくい業者が放したために増えたものだが、枯れ葉で池が埋まる時期に合わせて神隠しのように蒸発したのだ。 　 　池が濁って金魚がアップアップの状態を見かねて、清掃してほしいと申し入れていた団地の管理事務所にこの蒸発について質したが、彼らが捕獲することはないとの話だ。 　だれか投網でもせぬかぎり、簡単には全部を捕獲できないように思う。誰がそんなことする？ミステリーだ。 　とくに癒されていた老人、喜んで眺めていた子ども達の寂しい気持ちが分かる。余輩のバッグには金魚用の浮餌が入った袋が残ったまま。

  2009年11月04日

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• 淀川さくら＆百万遍古本まつり

  　早春に植えた桜のフォロー、といっても、手伝ってくれた枚方出口の子供に来てもらって、バッタ捕りのゲーム。１４人プラス父兄の参加。 　トノサマバッタを狙ったが、雑多なバッタやキリギリスなど混じって判別が大変。捕ったバッタの飛翔時間を競って賞品の授与、これシニア自然大学のメンバーが仕切ってくれた。 　終わってから百万遍知恩寺での「秋の古本まつり」へ枚方さんと落ち合って出かける。 　１６店の出店だったが、ゲットしたのは、 　　・『山頭火　詩と放浪』（毎日グラフ別冊）500円 　　・織田作『土曜夫人』（初版）500円 　　・近松赤江『文壇無駄話』1,000円 　近くの銀華居酒屋で旨い木曽の日本酒とおでん、蕎麦で満足。店主はガン手術後で痩せており、味覚が衰えたというが、元気に病後のことを話してくれた。

  2009年10月31日

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• 谷崎を継承する河野多恵子の嗜虐小説

  　オダサク倶楽部の歩く読書会で帝塚山を歩いたときに、万代池の近く大阪女子大の旧校舎の前を通ったことがあったが、前進の大阪女子高専を含めて、この大学（現在府立大に吸収）出身の作家に河野多恵子（1926年生れ）と富岡多恵子（という２人の多恵子がいると聞いた。　最近になって河野の『みいら採り猟奇譚』を読んでみた。戦争が激しくなる直前に結婚した新婚夫婦、両家が医者という典型的な中流家庭だけに、姻戚関係から話は展開してゆく。　その生活の情景や心情が細やかに描かれるあたりさすが女性作家だと思わせた。ところが、夫のマゾ性向であり、妻もそれに応えてゆくとゆう変態世界が繰り広げられるのだ。　　戦時下の食糧難、電気規制、そして空襲警報と防空壕、被災、疎開という事態に飲みこまれるてゆく二人。　谷崎賞の選考委員をやったことのある河野、谷崎ほど粘っこくないが、嗜虐性愛の耽美の世界を女性側から描く作家であるらしい、と今頃になって知った次第。

  2009年10月29日

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• タイムショック！中学クラス会

  　鈴鹿サーキットのある故郷での中学クラス会（同学年）には５０数名が参加していた。初めての参加者は余輩だけだったので、みんなに紹介してくれた。 　とにかく顔見ただけでは誰か分らない人が多い。とくに女性は名札も現姓なので、聞き出さないと思いだせない。 　若々しい人と、極端に老けている人とが混じりあっているいるのが、我等の年頃だろうか。　 　尺八あり、ハーモニカあり、詩吟あり、カラオケありの芸の披瀝もあって、なごやかな会であったが、日本酒を飲んでいたのは余輩だけとは寂しすぎる。 　銭湯も一緒の裸の付き合いだった、長身のＨ君に、卒業後初めて再会できたのがいちばん嬉しかった。 　それにしても、２８６名いた同学年生のうち４６人が死去しているということは、かなり高い比率？

  2009年10月28日

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• 大阪あそ歩「オダサク・ロマン」へ

  　昨日は「大阪あそ歩」という町歩きの企画のひとつ、「オダサクロマン」コースにたまたま福岡から奈良に帰郷していた磯さんと一緒に参加した。おりしも、織田作の誕生日の前日であった。　主催者のムツさん、解説者のイムイムさんを含めて２０名の参加で、オダサク倶楽部の仲間も７人含まれていた。　生玉さん、高津神社、梶井基次郎の墓を経て、初めて近松と西鶴の墓を拝し、終着地である織田作の菩提寺（リョウ厳寺）で墓参したが、イムイムさんの熱のこもった解説に参加者も熱心に聞き入っていた。　同寺の本堂では、織田作の好きだった「旅への誘い」「ラ・クンパルシータ」を織田草之助さんによる解説があり蓄音器で鑑賞、最後に高津中学で織田作と同級生だった住職による思い出話に耳を傾けた。　妻の一枝さんの葬儀も同寺で営まれたが、そのとき織田作は妻は自分が苦労かけて殺したと涙していたそうだ、こちらもホロリとさせられる話であった。住職は在学中に手術をして留年したとのことだが、同級生の葬儀を数人営むなど、９５歳とは思えぬ元気さだ。　３時間のあそ歩を散会後、法善寺横町の正弁丹吾で倶楽部メンバーと磯さんの７名で飲み歓談したが、最後まで織田作ゆかりで、善い哉。

  2009年10月26日

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• 宇野浩二の愛の交換交流

  　宇野浩二の『思い川』（昭和２６年刊）には、作家と芸妓の愛の交流が描かれている。　　大正から昭和の初めの年代にもかかわらず、逢引き以外にいまでもドキッと気恥ずかしくなるような愛を確認し高めあうための交換交流行為が二人にはあった。いずれも、芸妓が提案したものだ。　　携帯電話もブログもない時代、だからこそ、いじらしさ、愛しさが増すなぁ。・二人の共通のイニシャルｍを糸で縫い取った財布やハンカチのプレゼント。・オゾンパイプ（ハッカパイプのような物）を会うたびに交換。・日記を書いた手帳を会うたびに交換（交換日記）・１２時のサイレンが鳴るたびに、「お互いに思っている」というしるしに、どこにいても黙祷する。

  2009年10月23日

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• 菊花賞と織田作の競馬物語

  　日曜日は秋競馬のビッグレース、菊花賞が京都競馬場で行なわれる。　９年前に同賞で優勝したマンハッタンカフェの産駒のイコピコという馬、前走の神戸新聞杯でコースレコードで勝っているだけに、人気になりそうだ。　イコピコはハワイ語で「頂上へ」を意味するらしいが、果たして頂点に立てるのか、興味が湧く。　さて、映画「秋深き」は織田作の『競馬』が原作となっているが、この小説は昭和２１年に発表されたもの。　歴史の教師であった主人公が惚れた女給の一代と結婚するが、妻はガンを発症し、介護のかいなく亡くなる。　亡くなる前に、妻あてに淀の京都競馬場で待つとの手紙が舞い込んでいたが、彼はある作家の誘いもあって競馬場にゆき、競馬にのめり込んでゆく。　この妻は、昭和１９年に子宮ガンで亡くなった織田作の妻、一枝がモデルになっており、競馬で主人公は妻の名前に因んで馬番号１の単勝ばかりを買い続け、そこに悲喜劇が生れるのだ。　なお、織田作自身も競馬には藤沢桓夫や長沖一等と遊んでおり、薄い配当の結果にも大喜びを動作で表していたとの藤沢の記述がある。（大阪自叙伝）　６０年以上も前の物語だが、織田作の実体験があって、ガンの闘病・看護や競馬場の情景がよく描かれており、いま読んでも没入してしまう。

  2009年10月22日

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• 浪速作家の浪速物語

  　最近、主として大阪出身の作家や大阪に在住した作家が描いた大阪を舞台にした小説、エッセイ、いわゆる大阪文学を最近いくつか読んでいる。 　織田作之助：「夫婦善哉」「わが町」「木の都」「世相」ほか 　宇野浩二：「木のない都」「枯れ木のある風景」 　武田麟太郎：「釜ｹ崎」 　藤沢桓夫：「大阪自叙伝」 　庄野潤三：「プールサイド小景」 　増井　英：「通天閣の赤ちゃん」 　山崎豊子：「花のれん」「しぶちん」 　藤本義一：「元禄流行作家」 　田辺聖子：「道頓堀の雨に濡れて以来なり」 　林芙美子：「めし」 　東野圭吾：「浪速少年探偵団」 　黒岩重吾：「西成十字架通り」 　難波利三：「てんのじ村」 　野坂昭如：「エロ事師たち」 　直木三十五：「大阪を歩く」 　谷崎潤一郎：「春琴抄」「卍」 　川端康成：「十六歳の日記」 　水上瀧太郎：「大阪の宿」　上司小剣：「鱧の皮」　宮本　輝：「泥の河」　岡部伊都子：「美を求める心」　わかぎえふ：「大阪人の掟」　

  2009年10月21日

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• 写実と空想の混合酒

  　宇野浩二の『枯木のある風景』という、大正・昭和期に活躍した大阪長堀出身の画家、小出楢重の死の直前を描いた小説がある。（昭和９年） 　小出の「枯木のある風景」は大きな枯木を前面に横たわせ、背後に高い電線が何本も配され、その一本に烏のように人間が腰かけた画である。 　この画について、主人公（小出）は「芭蕉風に、写実と空想の混合酒（カクテエル）」を試みている、と画家仲間（鍋井克之）に語っている。また、裸婦と枯木を配した「裸婦写生図」も同じ意味で描かれているものだ。 　宇野が精神を病んで快復した直後の新たな出発点として、このテーマを取り上げたことに、深い意味がありそうに思われるとは、宇野の筆記者でもあった水上勉の弁である。 　先日、ソレガシ駅の近くにある古本屋で、楢重についてまとめたハードカバー本をたまたま見つけて、頁をめくっていたら、まさにこの異様な「枯木のある風景」の画が掲載されていた。 　楢重の画といえば、谷崎潤一郎『蓼喰う虫』（岩波文庫）の挿画に用いられているが、これは昭和３，４年の新聞連載中に楢重が描いたものである。 　なお、最近読んだ宇野の『思い川』（昭和２６年刊行）は、関東大震災、空襲、戦後と２０何年に及ぶ芸妓との恋物語であるが、この作品は小出が行き着いた画のコンセプト、写実と空想の混合酒ともいえるとはもう一人の解説者（柳沢孝子）の弁である。 　宇野は何人もの女性と関係しているが、この小説の芸妓で置屋を経営するに至る優しい三重とのロマンにしてチックな夢と恋の物語、今とは時代環境が違うといえ、たまりませんなぁ。

  2009年10月20日

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• 宇野浩二・質屋物語考

  　大阪宗右衛門町の長屋育ちの作家、宇野浩二は東京に移住して、作家になってからも相当に貧乏暮しをしている。 　『あの頃の事』（大正９年発表）は大学は出たが定職が無く、前の借金や前借の無心やら本の売却、母の着物の質入れなど生活苦と虚しい気持ちが綴られている。 　『蔵の中』（大正８年）は４０代の主人公が、下宿生活をしながら１０数年にわたって着物や布団など次々質入れして、利息だけを払い続けるが、頼み込んで質屋の蔵で懐かしい自分の質入着物を虫干して、布団に寝るという話だ。 　自分の若い頃はキャッシングはなく、消費者金融が開業し始めた頃だから、金なくば質屋通いをしたもので、宇野の私小説を読むと、その経験を思い出さずにはおれない。 １．祖母が入学祝いにプレゼントしてくれた腕時計も、質屋で出し入れしていたが、いつの間にか流してしまう不幸者の孫だった。 ２．学生時代は春になるとオーバーを入質しては流す。正月、帰郷のたびに着るオーバーが変わっていることを母に指摘された。 しかも、ほとんど金にならないのにマフラーも一緒に質入れしてしまって、冬には困ってしまう愚かさよ。 ３．サラリーマンになってほどなく、ボーナス＋月賦で買ってしばらくの期間は、ナット・キング・コールやアイジョージなどの歌を楽しんでいた一体型ステレオを夜中に担いで、それがし質屋に駆け込んだ。（上六時代） ある女性を助ける為に、５千円ほどで入質したように思う。 結局帰らぬ宝となってしまったが、ステレオが発売されて間もない頃で、安月給で無理して調達したのに。しばらくはステレオのない６畳一間の畳の部屋に侘しさが募った。 ４．夏秋は質草になるものがなく、安物のジャンバーや靴をもってゆくが、なにがし質屋の親父はそっけなく貸してくれないことが多かった。 ５．「そらがし会社」を退職して上京するときに、部下が送別会を催してくれ、腕時計を贈ってくれたが、東京生活で真先に質流れとなった。 この頃、月９分の利息だったと記憶する。 単身生活での気ままな遊び盛り、酒や女やダンスや麻雀やと、借金生活が常態だったが、振り返れば、我がライフスタイルと人格を疑うなあ。　　でも、かつては質店や古本屋、古着屋、古道具屋があって、庶民生活やリサイクル市場が成り立ってたんです。

  2009年10月20日

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• 有秋会日本画展へ

  　天高く美術の秋。第６７回有秋会日本画展を観に天王寺の市立美術館へ。 　過去２年、最優秀賞に輝いた同僚のＳ顧問、今回は「献燈」と題して春日大社の朱の社殿と深緑の釣り灯籠を描いた色彩鮮やかで、浮かび上がるような立体感のある秀逸の作品だ。 　ところが、「無鑑査作品」との表示があるだけで、どうしたんだろうと思っていたら、本人にばったり出くわし、その点を確かめたところ、もう会員の上の師範格となったため、賞の対象外を意味しているとの説明を受けて納得。 　また、直江兼続が娘の名で奉納した釣り灯籠が春日大社にあることを、かねてから発見していたＳ顧問、その漢文の文字を刻んだ灯籠も絵に配していたが、これが灯籠に変化を与えていたのは芸が細かい。 　家人はこの絵に自然に手を合わせていたほどで、霊験あらたかなるものを感じさせたようだ。 　ほかに、大阪府知事賞の「緑陰」という画は、黒いレトルリバー犬が大きな葉の陰でこちらを見上げている構成のビビッドな感覚で印象的だった。　最近報じられた直江の釣り灯籠　　　http://www.asahi.com/showbiz/tv_radio/OSK200904230082.html　　

  2009年10月18日

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• 太宰の愛人の娘と斜陽

  　生誕１００年記念として、太宰治の代表作、『斜陽』『ヴィヨンの妻』『パンドラの匣』が映画化されている。まだ、どれも観ていない。 　『斜陽』の元となったのが、愛人の太田静子の日記であった。文学少女であった静子は太宰を慕い、津軽から神奈川県下にわざわざやって来た太宰についに日記を提供、子（治子）も孕む。 　この日記を書いた静子と母弟を主人公に戦後の没落華族を描くのであるが、無頼の作家上原が、かずこ（静子）と関係を結ぶ場面も出てくるから、小説の筋書きにここまでよくぞ利用したもんだ。 　そして、かずこに、「マリアが、たとい夫の子でない子を産んでも、マリアに輝く誇りがあったら、それは聖母子になるのでございます」と作者は言わしめている。ここにも太宰の聖母、母性への思慕が現れているといってよいのか、半可通の余輩がここで解釈することではない。 　本書はヒットするが、翌２３年にはさっさと別の女性と入水自殺と相成ってますね。 　津島佑子さんとは同年の異母姉妹にあたる、この私生児の治子さんは、表に出ることなく静かに生きてきたが、このたびＮＨＫの番組に登場し、母のこと、日記のこと、父太宰のことを語っていた。彼女を認知した文書も紹介されていた。 　母の生き方を認め、また父を慕う気持ちが溢れており、初めて父の実家（現・太宰治記念館）を訪ねて感無量の様子が写っていた。とくに襖の漢書の中の「斜陽」の文字には心打たれていた。

  2009年10月13日

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• 四天王寺と天満宮の古本祭りへ

  　今年の秋は、四天王寺と天神天満宮での古本祭りが同時開催であり、１０日に四天王寺、今日は天満宮に古本詣をした。こんな有名な寺社で出来るあたりが大阪でして、聖徳太子様と菅原道真様のご加護もあって頭ようなるはずですわ。　ただ、四天王寺が２６店、天満宮が１９店と数が前回より減っているようで一抹の寂しさを拭えない。収穫もそれぞれ３,４冊であったが、２時間近い見て歩き詰めは、本を抱えているだけに相当堪えた。　１０日は吟醸会の立ち飲み歩き、１１日は日蓮法華と名宝展での観覧と、立ち歩きが４日も続いた連休であった。好天気に恵まれたのはありがたかったが。　なお、酒本では森下賢二著『居酒屋礼讃』が、大阪物では織田作原作、赤井英和主演の芝居「わが町」の演出家、わかぎゑふさんのエッセイ『大阪人の掟』が目ぼしい物であった。　わかぎゑふさん、５０才、えらい辛辣にズバズバ書いてはって、才長けてますなあ。

  2009年10月12日

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• 日蓮と法華の名宝展へ

  　明日は日蓮上人の祥月命日だが、昨日は京都国立博物館で標題の展覧会に行く。 　「立正安国論」を認め、ときの鎌倉北条執権に法華の法をもって国家を安んじろと奉じたが、これがもとで流罪など苦難の道を歩むが、これが宗派の確立の礎になっている。このときから７５０年を記念して京都ほか各地の寺院からゆかりの名宝を集めての展覧会、すごい点数だ。 　「華ひらく京都町衆文化」との副題があるように、京都では室町時代に町衆での法華信仰は広がり、ついに比叡山との対立が激化、２１本山が焼き討ちにあってしまった。 　その後、復活するが、近世の京都の町衆文化を創った芸術家の多くが法華信者であったので、その遺作が寺院にも遺されていて、今回の展覧会を華やかにしていた。 　狩野元信、長谷川等伯、本阿弥光悦、尾形光琳、尾形乾山、俵谷宗達などだ。日蓮の直筆「立正安国論」や光悦の「舟橋絵巻硯箱」は国宝であり、重要文化財多数。 　天下国家を論じて先鋭的になりがちの日蓮宗派、足利幕府をも諌めようとした高僧が投獄されたり、信長の前での宗教論争で浄土宗に敗れて鼻と耳を削がれるなど世間を騒がせており、当宗派からみればいわゆる法難が多い。 　日蓮系では創価学会、立正佼成会、霊友会など信者数でベスト１０に入る新興宗教団体がある。 　日蓮系の熱烈な信者として知られる有名人では宮沢賢治、坂田三吉、石原莞爾、土光敏光が浮んでくる。　

  2009年10月12日

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• 華奢な染付銚子

  　幅１０ｃｍほどの品よく可憐で輝きもある、いわば「草花金文様染銚子」と称してよい磁器銚子。 　青の染付ぐい呑みや盃置を多く使っているので、これらとこの銚子はフィーリングがぴったり合う。 　 　容量は１５０ｍｌであり、１合半ほどを冷やで晩酌するのに、徳利とはまた違った風情が味わえる。 　出来たら女性に優しく注いでもらって飲めば心地よかろうが、手酌でも優雅に落ち着いた気分で飲める。 　　月明かり青染め酒器に頬染めし

  2009年10月08日

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• 智恵子の遺した梅酒

  　昨日は高村光太郎の愛妻、智恵子の命日。　遅ればせながら、光太郎が智恵子を偲びつつ、彼女が元気な頃に造って遺こした梅酒を味わう詩を紹介。なお、彼女は福島の造り酒屋の娘でした。 　「梅酒」 死んだ智恵子が造つておいた瓶の梅酒は 十年の重みにどんより澱んで光を葆(つつ)み、 いま琥珀の杯に凝つて玉のやうだ。 ひとりで早春の夜ふけの寒いとき、 これをあがつてくださいと、 おのれの死後に遺していつた人を思ふ。 おのれのあたまの壊れる不安に脅かされ、 もうぢき駄目になると思ふ悲に 智恵子は身のまはりの始末をした。 七年の狂気は死んで終つた。 厨(くりや)に見つけたこの梅酒の芳りある甘さを わたしはしづかにしづかに味はふ。 狂瀾怒涛の世界の叫も この一瞬を犯しがたい。 あはれな一個の生命を正視する時、 世界はただこれを遠巻きにする。 夜風も絶えた

  2009年10月06日

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• 奈良大学に初の社会調査学科誕生

  　紀伊国屋書店で本を買ったら、カバーに奈良大学の広告が刷り込まれていた。 　なんと、来年４月には日本初の「社会調査学科」が社会学部の中に誕生するのだ。広報学科やマーケティング学科は既に存在するが、大学の競争が厳しい中、このようなセグメントもあったんだ。　調査は広告代理店で日記式の視聴率調査で家庭を訪問したときのマスサーベイに始まり、調査会社でのグループインタビュー、出版社での取材調査と様々な調査に携わってきたこともあって、こういう専門科が出来たことにはちょっと驚く。 　調査、統計を理解して、世の中の事象を正しく、深く、また面白く分析してくれる人材が増えれば、いいことだ。 　前夜は満月、くっきりと観れた。純米冷酒が美味かった。２０歳のときに縁側で月見しながら、父が初めてビールを注いでくれたのを思い出す。　　　帰省子に父が注ぎし月見酒

  2009年10月06日

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• 赤井英和好演「わが町」

  　織田作原作の「わが町」の公演初日にオダサク倶楽部の２３名が観劇し、感激した。演出は、わかぎゑふさん。観劇はなんと３０年前に東京の下北沢で観て以来だ。 　サンケイブリーゼの特等席に陣取った我々だが、織田作の同級生の住職夫妻も観劇されており、終幕にあたり主役の赤井英和さんから紹介があった。 　劇中に織田作が登場するのにはびっくりしたが、ほのぼのした笑いと涙が交錯した大阪よき時代の河童小路の人々を描いた人情劇、２２名の出演による芝居です。赤井さんは娘と孫娘の２世代にわたり、父と祖父を演じて好演だった。 　吉本だけが大阪の芝居ではおません。松竹も東宝も頑張ってほしいもんだ。 　終わってから楽屋を訪れ、皆で写真を撮り、腕に刺青した赤井さんと握手をした。

  2009年10月03日

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• 中秋の名月の俳句

  　ベランダから覗きましたが雲がかかって見れませんでした。 　句友の和風慶雲が我等母子の句を紹介くださって、感激しました。 　　月待てず供えの芋へる子沢山 　　　　　　　　　　　　　鈴風まさ子 　　帰省子に父が注ぎし月見酒 　　　　　　　　　　　　　淀風庵 　 　　月の宴連れは夜風と影法師 　　　　　　　　　　　　　和風慶雲 　母の句をもう２句、 　　月照らす刈田の千枚あきらかに 　　無月なる海の一線沖の灯よ　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　鈴風まさ子　月見酒の俳句は、こちら。　http://www.h6.dion.ne.jp/~jofuan/myhaiku_023.htm　

  2009年10月03日

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• ガンディ生誕１４０年＆ネルー首相来日５２年

  　今日の２日は、無抵抗主義によるインド独立の父、マハトマー・ガンディの生誕１４０年目にあたる。　それと、独立後の初代首相、ネルーが来日したのが、５２年前の１９５７年１０月４日だった。　ネルー首相が来阪したおり、余輩ら８０名ほどの学生は名古屋に向かう一行を上本町６丁目の近鉄駅前で両側に立って、「ジャヤ！ネルージー」（バンザイ、ネルーさん）と小旗を振りながら歓声を上げて見送った。　付き添っていた後の首相、愛娘インディラ・ガンディはまさにインド美人で麗しかったなァ。　　なお、ある先輩は、電車のホームに駆け込んでネルーの著書にサインを貰った、と喜んでいたのを憶えている。　１９５０年に米ソどちらの陣営にも属さない「非同盟外交」を声明して、アジアの曙を感じさせたネルー、１０月９日の広島訪問に際しての彼の「広島に贈る言葉」、そして１１月の核軍縮の演説は世界中の感動を呼んだ。　ああそれなのに、１９７４年、かのインディラ・ガンジー首相はインドで最初の核実験を行なったのだ。　いまオバマ、鳩山の新政権になってあらためて核軍縮や廃絶が叫ばれている。インドや中国という大国がどう応えるのか、難題だ。　民族派が無抵抗運動やっても、拷問、極刑免れないような中国だし、パキスタンとの関係で核軍縮など頭にないインドだ。

  2009年10月02日

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• 日本酒の日、富士正晴「恋うる酒」

  　今日は「日本酒の日」。各地でイベントが行なわれているが、仕事があって出歩けない。　　川上弘美『センセイの鞄』は、センセイと教え子の女性との２０年ぶりの偶然の再会が赤提灯の一杯呑み屋であった。気さくな酒呑み友達の関係が、そこはかとなく恋情へと発展する物語。　これに相応しい詩があった。織田作と三高で同期だった富士正晴の「恋うる酒」だ。熱燗の温もり、人の温もり、恋いしやのう。　恋うる酒（富士正晴）恋しやのうもの恋しさのこの酒は恋しやのう人恋しいか 人恋しいぞ酒恋しいか 酒恋しいぞついでにうまい肴も恋しいぞ明るい灯 恋しいぞ巷のざわめき 恋しいぞ恋しやのう　お前さまが尚こいし　川上弘美さんは、ぜひ日本酒造組合で顕彰してあげてほしい。

  2009年10月01日

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• センセイの鞄＆しのぶセンセ

  　織田作賞選考委員、川上弘美の『蛇を踏む』（芥川賞）は変身、変形、変容がモチーフの？な作品だったが、『センセイの鞄』（谷崎潤一郎賞）、イムイムさんの勧めに違わず面白かった。　６０代ほどの元国語教師と３０数歳の教え子との東京郊外駅前の一杯飲み屋での再会、日本酒の徳利をあけ、湯豆腐をつつくのが好きな２人、呑み友達へと発展する。このシチュエーションだけで、余輩はぐぐっと胸が熱くなり、心ときめかせんがら読み耽った。　　真面目で飄逸なセンセイ（内田百けんフアンであり、伊良子清白の詩を愛す）、せつない想いが募るツキコ、やっとデートに及ぶ、結ばれそうで結ばれない、だが…。　突っ込みのセンセイは巨人フアンに対して、ボケ役のツキコはアンチ巨人という設定も面白い。歳の差を越えて、ほのぼの、優しく、切ない現実と夢想が重なったようなファンタジーだ。　一方、大阪生野区出身で、ミクシィの作家コミュ人気Ｎｏ．１の東野圭吾の『浪花少年探偵団』（１９８８年発表）は、生野や布施など商店街や路地を舞台に、小学校の「しのぶセンセ」と呼ばれる美人で駆けっぷりのすごい女先生と悪がき生徒、そしてヒラ刑事が殺人事件の解決に向けて、どたばた、てんやわんやと繰り広げる内容の推理小説だ。　　たとえば、センセが「出席取るで。ちゃんと返事せえへんかったら休みにするよってな」と早口にまくしたてる場面が冒頭に出てくるが、大阪弁のポンポンと飛び出すコミカルで軽快な会話が、従来の推理小説にない魅力を醸している。　解説で宮部みゆきは、じゃりん子チエが大人になった世界だ、と言ってるが、なるほど受ける要素が備わっているんだ。

  2009年09月30日

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• きんぎょきんぎょ金魚可愛いや

  　団地の噴水池の金魚に、１００円ショップで買った小さな粒状の浮き餌をやるのが日課。 　７月末の盆踊り大会後、３００匹以上に増えたが、金魚すくいの夜店が放していったもののようだ。 　大きい金魚軍は盛りがついたのか、列をなして後を追うように勢いよく進む。餌のおかげか、一段と大きくなった。 　３，４ｃｍの中ほどの金魚は、素早く縦横に動いて周囲の群をかき乱すが、ぶつかりそうでスイスイと左右深浅と身をかわす。 　ややこのような金魚も、先輩に負けじと一生懸命に命を謳歌しているように見えるが、水面近くを泳ぐことが多い。彼等が数匹で列をなしている姿はまるで幼稚園児のようでほんと可愛い。 　また、群から離れて、１匹、２匹、３匹で壁際を泳いだり、壁に付いた藻かなにかを突付いたりしている若者風の「はぐれ金魚」が必ずいる。 　池は周囲が２０ｍほどと広いので、１０グループほどに分かれて戯れていることが多い。そのグループメンバーの構成は世代別が基本のように見受ける。それで餌も何ヵ所かに放り投げることになるが、投げる瞬間に手の影に怯えて瞬時に散ったり、もぐったりしてしまう。 　あまり驚かさないようにと、金柵から少し離れたところから池に向かって餌を投げ入れるのだが、運動感覚の鈍さか、周囲への目配りの欠如か、最近二度にわたり怪我に見舞われた。 　先日は柵の外側に並行して建てられている大きな看板に頭の頂点をぶつけて瘤をつくった。３日前には、餌を勢いよく投げた手を柵に思い切るぶち当てて、指や手首を動かすと痛む打撲傷を負った。 　それでも、撒き餌に群がって水面にウロコを光らせる様子を見るのが楽しみで、勤務用の鞄と休日用のショルダーバッグにいつも餌を絶やさず持ち歩いている。 　家人も余輩を真似して、餌やりに歓びを見出しているが、今朝、出勤のおりに池に立ち寄ると、掃除のおばさんが同じような餌を池に撒いているのを見かけたので、自分は撒くのを止めた。 　金魚たちはますます大きく育っているが、掃除婦さんによると、ご飯粒や麩を撒く人がいるらしいから、食べ過ぎてメタボの害があるのではと不安となる。 　最近、小さい金魚が数匹、朝の光を受けつつ白と金色の腹を見せて浮んでいることがある。枯葉などによる水の汚れで酸素が少ないせいかと思うが、死んだ金魚のまわりを静かに回っている金魚がいたりする。 　団地を管理する都市機構の事務所に掃除をしてくれと駆け込んだことがあるが、年に２回しか池の清掃をしないと素っ気ない。 　二度ほど池の清掃を見たが、業者が４，５人も来て、水をかき出し、汚物を取り出し、側面や底を洗う。その間に金魚をバケツに掬っておいてくれるのだが、１０万円は費用がかかっているだろう。 　 　こうなったら１００円で買った虫取り網でもって底の堆積物をすくい出そうかとさえ思っているが、おっちょこちょいに勝手にやると文句を言われそうだし、怪我もしそうだ。 　これから枯葉がさらに舞い散る季節となり寒さも厳しくなるが、家庭で小さな水槽に飼われている金魚に比べれば、観賞用には値打ちがなくとも池の金魚は伸び伸びと幸せだなあと思う。

  2009年09月29日

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• 井伏鱒二と阪田寛夫の蛸酒詩

  　先頃８８歳で亡くなった庄野潤三が若い頃から好んで読んだのが井伏鱒二の作品だ。画家志望だった井伏の『山椒魚』『寒山拾得』『朽助のいる谷間』など旅先に題材を求めたスケッチ風の活き活きした自然描写を際立つペーソス漂う短編の作風は、夫婦小説とか家庭小説と称されるごとく場面設定や時代は異なるとはいえ、妻、子供や動物、自然の描写に哀愁がある庄野の短編と似ている。　　なお、『朽助のいる谷間』はダムに埋もれる村落の主人公の悲哀を描いており、昨今の八ッ場ダムの建設の中止問題と絡めて読むと考えさせられる。　さて、庄野の師とも言える井伏鱒二と、後に紹介する庄野の弟子とも言える阪田寛夫には、蛸を酒の肴とした詩があることを発見したので、以下に紹介しよう。　井伏には「勧酒」（于武陵作）という漢詩の名意訳でも知られている。　コノサカヅキヲ受ケテクレ　ドウゾナミナミツガシテオクレ　　ハナニアラシノタトヘモアルゾ　「サヨナラ」ダケガ人生ダ 　それと、高校時代から井伏が好きで好きで、小説を書いて自主出版した同級生Ｈがおり、中学の校長になり市文化会館の館長を務めた。遅すぎるが、今あらためて、彼の気持ちが分ったような気がする。　井伏鱒二「逸題」　今宵は仲秋名月　初恋を偲ぶ夜　われら万障くりあわせ　よしの屋で独り酒をのむ　春さん蛸のぶつ切りをくれえ　それも塩でくれえ　酒はあついのがよい　それから枝豆を一皿　ああ　蛸のぶつ切りは臍みたい　われら先づ腰かけに坐りなほし　静かに酒をつぐ　枝豆から湯気が立つ　今宵は仲秋名月　初恋を偲ぶ夜　われら万障くりあわせ　よしの屋で独り酒をのむ 　ときあたか来月３日は仲秋の名月ですね。　一方、阪田（１９２５年～）は朝日放送時代、庄野潤三の職場の後輩で、その文学への影響を強く受けた大阪の作家だ。　自らも『土の器』で芥川賞を受賞しており、詩人でもあり、「さっちゃん」など童謡作詞家でもある。　　阪田寛夫「じいさん酒のんで」　じいさん入れ歯で酒のんだ　肴は生憎ひねた蛸　腕を枕に寝たふりしてる　仕方ないからしゃぶって一献　坊主頭をたたいてニ献　それでも起きない蛸憎し　「蛸寝の山は天から剣」と　脳天、箸で串刺せば　蛸は寄り目で思案をしたが　腕をのばして徳利をかかえ　浪音ききもて末期の酒を　「ちゅうちゅう蛸かいな　　ちゅうちゅうちゅう蛸かいな」

  2009年09月27日

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• 苦い思い出、５０年前の伊勢湾台風

  　５０年前の今日、愛知県と三重県を中心に５千人以上の犠牲者を出した伊勢湾台風。 　実家の前にも海水が流れてきたらしい。というのも、１８日に父が急死したのも知らずに東京の友の下宿に泊まりながら早大教室でＨ広告代理店主催のセミナーを受けていて、やっとこちらの居場所が分って電報が届いたのがこの伊勢湾台風の前日だった。 　次の日の列車に乗って、翌朝方に名古屋に着き、そこからは関西線は寸断されていため迂回バスに乗り継いで鈴鹿の実家に到着したのが昼頃だった。さわやかな晴天だったが、前日ひどい台風が襲ったことを知った。 　１週間前に葬儀は終わっており、設けられていた仏壇に手を合わせたが、その場にいた母や祖父母のやるせない気持ちも伝わり、無念な気持ちが一挙に込み上げ号泣した。 　父の同僚だった先生方は、長男のいない葬儀をどう思ったことだろう。それからひっそりと大阪に戻ったが、クラスメイトが心配して私の在り処を探してくれたそうだ。間借りしていた大家もなんと声をかけてよいのか、苦い顔をしていた。 　こういうちゃらんぽらんがあって、後年、広告代理店に就職するに至ったが、父は私が専門外の予期せぬ世界に入ったことに満足してくれただろうか。 　このときの若気の至り、いや人間失格を詫びる思いも込めて、日本酒を仏壇に供えた。

  2009年09月26日

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• 愛しの日本酒器

  　秋に入っては、好みで取り揃えている有田や美濃の青色染付のぐい呑酒盃に切り替える。揃いの盃台はないが、しっくり調和しそうな染付皿を買い求めて組み合わせて楽しむ。これらの酒盃や盃台は草花、花鳥、山水などの文様で統一している。 　 　また、ぐい呑のほとんは内側にも文様がある器を選んでおり、冷でもぬる燗でも見込みの眺めを楽しめるのがよい。 　 　なお、酒盃はいずれも１，０００円前後の物であり、高級な絵付きや切子、骨董とは面持ちが違った、ささやかな味わいが快くしてくれるのだ。　ひやおろし ぐい呑み彩彩 独り酔ふ　

  2009年09月25日

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• 初秋の拙句

  　広告会社の元社員が中心に参加する日本写真句協会からコスモス(秋桜）や赤蜻蛉の美しい写真を配したカラープリント版の写俳誌が届きました。 　 　拙句を紹介。今秋は秋桜にはまだ触れていないので詠めず。見たとしてもありきたりの句になりそうで詠み難い。 　 　・焼き秋刀魚レンジで温め食わせけり 　・秋蝶のつがい乱舞す児も踊る 　・月明かり色なき風の風呂上り 　・秋の夜杜氏遠来和み酒 　・ひやおろし外人杜氏の澄みし酒 　・夜半の秋正秋浪漫読み耽り　　　　（本日一部改訂した）　最近の句です。　・蜩や山荘の道人恋し　・平城山の墓に舞姫曼珠沙華

  2009年09月25日

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• 万葉ラブストーリーで宇多滋樹さん好演

  　ＮＨＫ奈良放送局制作の「万葉ラブストーリー春」を視た。 　万葉集の歌に題材をとって、ストーリー化（公募）して、奈良を舞台に撮影したものだ。 　古書喫茶ちちろの主人で「殯の森」で主演して好評だった宇多滋樹さん、このドラマでは第一部の「恋はももいろ」に墨職人の師匠役。やや表情が緊張気味だったが、自然な演技で好演だった。 　 ・春の苑　紅におう桃の花　したでる道に出で立つ乙女 ・我ぎ妹子が 植ゑし梅の木 見るごと心むせつつ涙し流る

  2009年09月23日

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• 「万葉ラブストーリー」に宇多滋樹さんが

  　今日は奈良へ家人の両親、兄姉のお墓に参る。 　奈良は大変な人出で、他県ナンバーの車も押しかけて、渋滞がひどく往復のバスは１時間近くかかった。 　帰りにいつものように古書喫茶「ちちろ」に赴き、宇多滋樹さんに会う。 　「ドラマ　万葉ラブストーリー　春」の再放送が明日あり、このドラマに『殯の森』主演の宇多滋樹さんが出演されることを聞いた。端役だが、どんな役ぶりか楽しみ。 　　 　９月２３日（水）　１３：５０～１４：３３　ＮＨＫ総合（全国） 　●三部作タイトル　（万葉歌に題材を取った作品） 　　「恋はももいろ」 　　「愛しき、古」 　　「春日影の庭」

  2009年09月22日

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• 大阪水都祭だ移動祝祭日だ

  　昨夜は天満橋から天神橋あたりまでの水都祭の光のイベントを見る。　大小いろいろな遊覧船がライトを点けたり、提灯吊るしてクルージング。天神橋の橋梁は黄橙色のライトアップがなされていた。　八軒家浜のリバーカフェでは４人の女性トランペッターによるジャズ。ウォーターカーテンを使ったファンタジックな映像ショーも。　今日の２時からは中央公会堂特別室でオダサク倶楽部仕掛人の井村さんと直木三十五記念館事務局長の小辻さんによるトーク「水都の移動祝祭日」を拝聴。　主として大大阪と言われた大正から昭和の初期に来阪した近代作家がみた大阪観が語られた。水上瀧太郎、上司小剣、里見とん（弓＋享）、金子光晴、小林秀雄、吉田健一、幸田露伴、薄田泣菫、谷崎潤一郎などに話が及ぶ。　当時の東京人は女性関係など私的な清算をするに大阪は適度な距離だったという見方もなされた。また、関東大震災で無くした下町やら路地の世界が大阪にあることへのノスタルジーもあるとか。でも、大阪は異質の世界で、低俗との印象を持った作家が少なくなかった。（水上、小林）　これらの来阪作家が大阪人や織田作など大阪作家に影響を与えたには違いない。　公会堂の一階では例のカーネルおじさんが足っていてびっくり。なお、中之島公園は整備されているが、コンクリで固めたような地域となっており、潤いに欠ける。水上写真：ラバー・ダック（オランダのアーチストによる作）　

  2009年09月20日

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• 無血民主改革！？

  　歴史的なことなので、記しておかねばならない。 　昨日、組閣が成って、官僚内閣制から議会制民主主義へと漕ぎ出した民主丸。地域主権の確立にも国民の支持を背景に敢行に突き進んでほしいもんだ。 　内閣の顔ぶれ、やはり自民政権と違って、亀井大臣は別として、いかにも政治家のアク顔面や老醜面が少ないのは清新だ。 　思えば、選挙ではあらゆる政党の候補者に投じてきた。自民、新自由クラブ、社会党、社民党、公明党、共産党、そして民主党。 　民主党の藤井財務大臣、菅副総理、前原国交大臣、山岡国対委員長とはたまたまある会合や街頭で会ったことがある。 さらに昔、ある政党の市会議員選挙を手伝ったこともある。 　さあ、歴史の転換が成されるのか、このような時代にめぐり合えるとは思いもしなかった。世界に冠たる「高質国家日本」を目指してほしい。

  2009年09月19日

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• 主戦歌人の牧水忌

  　昨日は若山牧水の牧水忌。 　朝酒、昼酒、深夜酒と一日１升以上を飲んで、４３歳で今日亡くなった。 　「酒は心で噛みしめる味わいをもつ…」と讃酒してやまない牧酔？であり、人生の悲哀を酒と歌とで昇華しながらの旅は、肝硬変により果てたのだ。 　生涯に残した七千首のうち酒を詠ったものが二百首に及ぶ。 　秋の酒歌 　　白玉の歯にしみとほる秋の夜の 酒は静かに飲むべかりけり 　　秋かぜに日本の国の稲の酒の あぢはひ日にまされ来れ 　　静心しづまりかねつ酒持ちて 秋山さして出でゆくわれは 　　酒の毒しびれわたりし腸わたに あなここちよや泌む秋の風 　 　代表的な讃酒歌 　　それほどにうまきかとひとの問ひたらば 何と答へむこの酒の味 　　人の世にたのしみ多し然れども 酒なしにしてなにのたのしみ 　　うまきもの心にならべそれこれと くらべまわせど酒にしかめや 　http://www.h6.dion.ne.jp/~jofuan/myhaiku_032.htm

  2009年09月18日

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• 道修町に春琴抄の碑

  　昨日、３０年以上ぶりに道修町を歩く。 　武田薬品や田辺製薬の中層ビルは前からあったが、両側に中高層のビルが立ち並び、かつての面影がなくなっていた。昼間の人通り、車の通行も少ない。元小西儀助商店の古い商家だけが重要文化財とししてタイムカプセルのように異様に佇んでいた。 　田辺三菱製薬や大日本住友製薬などのビル標識を見て、合併の嵐がこの町にも無縁ではなかったことを改めて思った。 　当地が舞台となった谷崎潤一郎『春琴抄』（昭和８年発表）の文学碑を堺筋を西に入った神農さん神社の参道入口に発見した。 　同じ道修町生れで四天王寺国際仏教大の三島佑一教授の尽力により、平成１２年に建てられたものだ。 　谷崎の自筆原稿複製、三島先生の説明文、地歌筝曲の人間国宝、菊池初子さん（当時１０１歳）による碑の揮毫からなる陶板を掲げた石の記念碑である。 　三島先生の説明によれば、春琴のモデルは後に妻となる船場の根津家の長女、松子であり、『春琴抄』は彼女への思慕を佐助に託して書いた「愛の書」ということだ。 　それにしても、佐助のこれほどまでの春琴への献身、嗜虐的なマゾヒズム、法悦の世界をよくぞ描き、発表できたものだ。 　同じ敷地の神社ビル内にある「くすりの道修町資料館」に立ち寄り、展示物を見ながら薬種中買仲間によって築かれてきた道修町の歴史を知ることができた。

  2009年09月17日

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• 夏、秋のマイ酒器

  　文学散歩も一休みしてまあ一献。 　今夏は、冷酒用ガラス徳利とショットグラスを組み合わせて、純米や吟醸ならずとも美味しい夜々だった。 ありがとう。　 　写真にあるように、徳利と呼ぶよりは、蕪形のデキャンタと称してよく、ライトブルーのひび割れた氷のような雪明り模様が美しい。一合半ほど入るから、ちょうど晩酌にふさわしい容量だ。 　一方、ショットグラスタイプの酒盃はブルーのグラディエーションの爽やかな彩りで、指に持ちやすく飲みやすく、口当たりも涼やかだ。 　 　秋に入っては、好みで取り揃えている有田や美濃の青色染付のぐい呑酒盃に切り替える。揃いの盃台はないが、しっくり調和しそうな染付皿を買い求めて組み合わせて楽しむ。これらの酒盃や盃台は草花、花鳥、山水などの文様で統一している。 　 　また、ぐい呑のほとんは内側にも文様がある器を選んでおり、冷でもぬる燗でも見込みの眺めを楽しめるのがよい。 　 　なお、酒盃はいずれも１，０００円前後の物であり、高級な絵付きや切子、骨董とは面持ちが違った、ささやかな味わいが快くしてくれるのだ。

  2009年09月14日

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• 織田作原作、赤井主演「わが町」公演

  　オダサク倶楽部主宰の口上を借りれば、 　織田作の「わが町と人への愛情の反芻作用」から生まれた大人のメルヘン「わが町」は、「にんげん、体責めて働かな嘘や！」なにわのド根性男・佐渡島他吉の生涯を描いたもの。 　織田作の生前から井上正夫やエノケン、新国劇の辰巳柳太郎、緒形拳、そして森繁久弥や北大路欣也まで歴代の名優が演じて来たその役に、「どついたるねん」「王手」「秋深き」「山形スクリーム」など数々の映画やテレビで活躍している、満５０歳になる赤井英和さんが挑戦する。 　 先日、主演の赤井英和さんとは、オダサク倶楽部の主宰ほかが、この作品について語り合ったことは、以前このブログに記した。 大阪西成出身で浪速のロッキーだった赤井さん、ど根性みごとに発揮されるだろうと期待している。　共演の萬田久子さん、大阪出身で（元ミスユニバース日本代表でもある）、役どころぴったりで、実家が精肉店だけに？脂が乗り切っているから見応えがあろう。 　また、孫娘役の安達祐美さん、一昨日の夕方のテレビで「わが町」のＰＲにも努めていた。 　 　倶楽部の面々２０数人が初日に観劇し、1ヵ月の講演を盛り上げることになった。 でも、観劇なんて何年ぶりだろう。　 　出演者：赤井英和、萬田久子、安達祐実ほか 　公演日：平成21年(2009年)10月3日（土）～22日（木） 　会　場 ：サンケイホールブリーゼ 　　　　　　（大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー7F） 　観劇料：1階席 9,000円 、2階席 7,000円

  2009年09月12日

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• 野坂昭如さんリハビリ記

  　野坂昭如介護の２千日を野坂夫人が書いているが、先日ＮＨＫ福祉ネットワークで「夫婦の舟唄　－夫・野坂昭如を介護して－」を見た。 　２００３年５月に脳梗塞で倒れてから現在７８歳に至る６年間リハビリ生活を送っている。彼のＨＰの日記もそのとき以来途切れている。 　 　元気な頃は酒豪作家として東の横綱を立原正秋と張っていたこともあり、禁酒を勧められてもベッドの布団の下などに隠して飲み続けるなどまっとうな家庭生活は送っていなかったと夫人は語る。 　野坂が倒れてから介護を通して夫婦としての愛情や安らぎの生活を取り戻した感じで、夫人の顔は生き生きしていた。 　「黒の舟歌」も挿入歌となっていたが、男の哀愁があってダンディですなぁ。「バージンブルース」もYouTubeで見たが勝手にのってます。 　倒れてからは、右半身不随と言語障害があるが、頭はしっかりしており、連句詠みの効果もあるようだ。エッセーなどは口述筆記で著しているが、本格的な小説を書くまでには至っていない。 　晩年、やはり病気に苦しんだ谷崎潤一郎を思い出す。高血圧に悩まされながら『鍵』を、そして右手マヒや狭心症で苦しみながら口述筆記で著した『癲老人日記』などを読むと、フェチ、マゾなど嗜虐的な倒錯的性愛があからさまとなってあきれるが、正面から老人の性をテーマにしたねっちりした傑作にはちがいなく、執筆の腕は衰えなかったのに驚かされる。　野坂さん、神戸で焼け出され、大阪でエロ事師、新宿で飲み逃げ、某作家やタレントを殴る、角栄に対抗して新潟で立候補し切られる 、まあいろいろやらはりましたが、起死回生最後の一花頑張ってや。　なお、戦後、織田作の小説だけはよく読んだそうで、小説を筆写したこともあったとか。開高健との対談集『午後の愉しみ』で次のような話が出てくる。　野坂：いまから見るとうまいね。・・〈中略〉・・可能性の文学とかなんとかいって、こっちはジャズに憧れると同じように、彼の講演を聴きに行ったことがある。織田作は非常に頭にひっかかっていた時期があるんだ。だから、ぼくがいま持っている全集・選集の類は織田作だけ。 　開高：ぼくは、彼の初期の作品の舞台になっている場所に住んでいましたからね。「夫婦善哉」なんかあのままですよ。それで感心しちゃった。おれが自分のまわりの会話を書くとして、あんなにうまく定着できるかどうか、疑問なぐらいうまく書いていたですね。・・〈後略〉 　

  2009年09月12日

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• ひやおろしの日

  　昨日は日本中央酒造組合指定の「ひやおろしの日」。 　「ひやおろし」とは冬に仕込んだ酒をひと夏熟成させて、秋口に加熱殺菌せずに瓶詰めした日本酒のことで、まろやかな特色がある。 　あいにく昨日は、梅酒しか飲まなかったが、すでに６日に古書喫茶のワイルドバンチでの英国人杜氏のフィッリプ・ハーパーさんを囲む飲み会で、彼が木下酒造で醸したひやおろしは飲んでいた。 　「玉川自然仕込・山廃純米酒」（使用米は北錦、精米歩合６６％、アルコール１７度）がそのひとつで、冷やとぬる燗で飲んだところ、味わい深くて好みであった。 　　ひやおろし 外人杜氏の醸し酒 　　秋の夜 杜氏を囲み深き酒

  2009年09月10日

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• 水都の移動祝祭日（トークバトル）ご案内

  トークバトル「水都の移動祝祭日」～作家が見た感じた大阪～ 水都大阪２００９「水辺の社会実験」に協賛。 移動祝祭日はＡへミングウエイがパリの異邦人として過ごした若き日々を記した遺作小説のタイトルです。 かつての水都大阪には多くの作家が訪れ過ごしたことが様々な小説や文献に記されています。（谷崎潤一郎、水上瀧太郎、金子光晴…） それは大阪が魅力ある成熟した文化が花咲いた町であったことの証明でもあります。 日時：９月２０日（日） 会場：大阪市中央公会堂３階特別室 　　　（北区中之島１丁目） 出演：井村身恒（オダサク倶楽部仕掛人） 　　　小辻昌平（直木. 三十五記念館事務局長） のトークバトル 入場無料・予約不要 お問合せ：電話０６－６７６７－１９０６（六波羅真建築研究室内） 　　　　　

  2009年09月07日

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• ハーパーさんと日本酒呑み会

  　４時から古書喫茶ワイルドバンチ（天６）さんで、英国人杜氏のフィリップ・ハーパーさんを囲み、彼が醸したお酒を２０人程で呑む。５時間ほどのロングラン。 　オックスフォード大を出て、都島、天神橋あたりで英語を教えていたが、日本酒にはまり造ることに魅力を感じ、梅乃宿と大門酒造を経て南部杜氏の資格を得、現在は京丹後の木下酒造で酒造りをされている。 　６種の酒を味わったが、吟醸あり、旨い無ろ過純米あり、ひやおろしありと、ハーパーさんのブランド「和く輪く」に参加者は沸くのであった。生もと純米無ろ過生原酒コウノトリラベルは圧巻であった。 　楽縁のマスター、ママも参加されており、一層楽しく至福のときであった。 　なお、ハーパーさんとは３年前の大門酒造での呑みきり会で会っての再会だが、彼の著書『Ｔｈｅ Ｉｎｓｅｉｄｅｒ’ｓ Ｇｕｉｄｅ to ＳＡＫＥ』にサインをしてもらった。

  2009年09月06日

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• ツイン２１古本フェアにゆくも、だが

  　ＯＢＰでの古本フェアには毎年行っていて何がしかの成果があったが、初日の今日、人出は相当多かったが、こちらにとって目ぼしい本は見当たらなかった。 　月日亭での和食は美味かった。ついでに某社サロンで大阪城を眺めながら自販機の無料のお茶を飲んで帰る。 　なお、先日、江坂のブックオフで井上雅彦監修『酒の夜語り』（２００２年、光文社文庫・異形コレクション）を買った（４００円）。 　２３人の作家による酒を主題としたファンタジー書き下ろしであり、中島らもの作品も載っているが、他の作者は知らない。 　序文で紹介されていたＳＦ酒小説、小松左京『コップ一杯の戦争』、星新一『ボッコちゃん』、筒井康隆『あるいは酒で一杯の海』を読みたいと思っていたが、筒井のショートショートは今日の古本市で立ち読みしてしまった。 　 「放課後、いつものように化学実験室でいろいろな実験をしているとき、おれはとんでもないものを作りあげてしまった。 ... 海全体がこぼこぼと沸き返った！酒だ。世界中の海が酒になっちまう。そして川をさかのぼり、湖に沼に、さらには貯水池に…」 　そして、酒の海に溺れる人間もみんな酒に化すのだから、あんまり嬉しくないストーリーだ。

  2009年09月05日

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• 第１２回ナニワ大賞に中井さん

  　文化や歴史、芸能、まちづくりなどの分野で大阪らしいユニークな活動を表彰する「第１２回なにわ大賞」の受賞者が先月決定したが、なんとオダサク倶楽部のメンバーでいつもお会いしている「なにわことばのつどい」の代表を昨年まで２０年間なさった中井正明さんが選ばれた。　このつどいは、船場や島之内界隈に伝わる上品で美しい大阪弁にこだわり活動する市民グループである。　その突然の受賞の驚きと喜びをご当人が先月末のオダサク納涼パーティで話されていたが、あのはんなりした大阪弁と物腰であった。かつては道修町は武田薬品の社員だったそうだ。　なお、全国的に評判の悪い河内弁は生粋の大阪弁とは違います。　賞は、異業種交流グループ「なにわ名物開発研究会」が創設したもので、行政とは違った、一般市民の目線で表彰したい個人や団体に賞を贈っている。　この研究会会長のいりさんもオダサクのメンバーである。選考委員長は『てんのじ村』で直木賞を受賞した難波利三さん。　オダサク倶楽部のメンバーにも他にも受賞者がいる。主宰の井村身恒が７年前に準大賞を貰われ、３年前に、「おはなし会」たなかやすこさんが大賞、昨年、三島佑一先生が会長を務める「船場大阪を語る会」が準大賞を獲得されている。　多士済々の大阪の発信者に直接接して学べることは善哉。

  2009年09月03日

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• 三島佑一先生講演「大大阪と谷崎潤一郎」

  　午後から府庁新別館北館のさいかくホールで「船場大阪を語る会」第１５２回例会に初めてゆく。 　オダサク倶楽部のメンバーでもある四天王寺大学名誉教授・三島佑一さんが会長を務める会であるが、今日は先生自らが「大大阪と谷崎潤一郎」と題して講演された。 　谷崎が関東大震災を逃れて大阪に来たのは昭和２年だが、当時は人口・面積とも日本一の大大阪時代、船場の御寮人（ごりょん）さんを見初めて『蘆刈』『春琴抄』『細雪』などの名作を生んだ。 　本日は先生に挨拶して、サイン入りの著書『谷崎潤一郎と大阪』を買ったが、先生自身、船場道修町の薬種業の生まれで、谷崎の研究者である。講演の内容は大阪や芦屋を舞台とした作品に登場する女性と、谷崎の妻となる松子や周辺の実在の女性の関連性を興味深く語られた。 　読んだことのある『春琴抄』『痴人の愛』『鍵』にしても谷崎の女性への異常な耽美、耽溺、崇拝ぶりには、何だこれと恐れ入るが、つい別の作品を読んでみたくなる魔性が潜んでいるのだ。 　ただ、今日の話の中で気になったのは、谷崎が昭和７年の『私の見た大阪及び大阪人』において大阪文学の貧弱さを以下のように批判していることだ。 　「もし大阪に一人でも立派な作家が住んでいたら、明治大正の間に『たけくらべ』や『すみだ川』に匹敵するような作品が一つや二つは生まれていたであろうに、それらしいものがないと云うのは、これだけの大都市の恥辱であると云っていい。 それにつけても凡ての作家が郷土を捨てて東京へ志すのは、大きく云えば、日本文学の損失であるとかんがえられる」と。 　たしかに、江戸時代には西鶴、近松、上田秋成などの活躍があったにも関わらず、明治・大正時代に大阪を舞台に描いた大阪在住の大作家は見当たらないように思う。 　三島先生は、この点、町人根性が強く文化意識が低かったと指摘されているが、演芸はともかく文芸に関しては今も変わらないようだ。 　関西にある作家の記念館で行ったことのあるのが、直木三十五、川端康成、谷崎潤一郎、富士正晴、司馬遼太郎だが、あと田辺聖子の記念館の存在を知っているぐらいで、なんとも寂しい。 　関西の作家の展覧会で参観したのも、司馬遼太郎、陳舜臣、田辺聖子といったところだ。 　なお、なにわことばの中井さんとオダサク倶楽部の田中さんも聴講されていた。 　今日、帰り道に天神橋筋で買った古本。今さらながら文学に飢えているかのごとし。 　　藤沢桓夫『私の大阪』、陳舜臣『青玉獅子香炉』、藤本義一『元禄流行作家 わが西鶴』、『昭和文学アルバム２』

  2009年08月29日

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• マイケル・ジャクソンの思い出

  　マイケルの死因は専属医師による他殺と分ったが、生きておればこの２９日は５１歳の誕生日だった。 　さて、２５年前の１１月９日、テキサス州ヒューストンのアストロドームで催されたマイケルの全米ヴィクトリーツアーのライブを観た。 　 　当時、余輩は広告代理店のＴＫエージェンシーに所属し、ラジオ日本局のアメリカ招待旅行に２０人程で参加したところ、この公演がセットされていたもので、マイケルのフアンではないのに僥倖であった。 　どんな曲を演じていたのか記憶になかったが、いまネットで調べてみると、自作の「ビリー・ジーン（Billie Jean）」が演目の一つだったようで、彼が始めたばかりのムーンウォークをアリーナ席で魅せられた。 　まだ、「スリラー」が発表される前で、整形前の生顔のマイケルがライトアップされた舞台で唄い踊る姿、思えば夢幻のようなひと時であった。なお、この年の２月にファンタのＣＭ撮影でマイケルは頭頂部を火傷している。 http://www.youtube.com/watch?v=Bo6V4QEu820&feature=PlayList&p=ADE84F7B346D8016&playnext=1&playnext_from=PL&index=20 　カメラを入口で強制的に取り上げられ、帰りに引き取るのに時間がかかったのを思い出す。

  2009年08月27日

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• 口腔外科で顎のチェック

  　耳鼻咽喉科や消化器科での診察中の医療事故のようなもので顎が外れ、３週間様子を見ていたが、欠伸のときに少しガクガクとする程度になった。　一応、地元の耳鼻咽喉科で紹介状を貰ったことだし、癖にならないよう念のために総合医療センターの口腔外科で診て貰った。都島にある大きな市立病院だが、患者が一杯、こりゃ新インフル患者も混じってることだろう。　口を大きく開けたり閉じたりして、顎や口のレントゲン６枚ほど撮った結果、顎と関節に少しズレがあることが判ったが、特に治療や薬は必要ないとのこと。ただ、なかなか修復はしないとのこと。　予防策として、「大きな欠伸をしない」「大笑いしない」「大きな口して怒鳴らない」「リンゴをかじるなど大きな物を噛まない」「オカキ、ピーナッツ、タコ、ガムなど硬いものや長く噛む物を食べない」「うつぶせに寝ない」「顎に手で肘をつかない」、そして「カラオケで大声をださない」を指摘された。　もともと、大口で食べたり、話したり、笑ったりなどしない、しとやかな和風タイプなので、はしたない行為はあまりしてこなかった、このため逆に顎が鍛えられてなかったのかもしれない。　　顎の障害の原因を作った耳鼻咽喉科に渡してくれと、診察結果報告文書を預かってきた。今回の医療センターでも診療費をバッチリ取られ、顎足付きとはゆかなかったのは納得いかないが、「禍福は糾える縄の如し」とか、気持ちはさっぱりして、とんとご無沙汰のカラオケを唄いたくなった。

  2009年08月25日

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• 日本酒の大家、稲垣真美さんの織田作本

  　昨日、カッパ横丁の萬字屋書店で稲垣真美『可能性の騎手 織田作之助』という古本を見つけて８００円で買った。（現代教養文庫、昭和４８年刊）　著者名を見て、あれ？日本酒の大家と同じ、経歴を調べると京都出身、東大美学科卒とあり、まちがいなく同一人物だ。昔はこんな文芸書に取り組んでいたのかとびっくり。しかも氏は昭和４０年には『苦を紡ぐ女』で直木賞候補となり作家の道へ進まれたという。　本書は織田作の作品と生き方を通して、その文芸の真髄をクローズアップするもので、とくに戦後の「可能性の文学」についての織田作の提言の意味を考究されている（ようだ）。　　この稲垣さんの酒本なら６冊持っている。『ほんものの日本酒選び』『日本の名酒』『現代焼酎考』『ふるさとの名酒と焼酎』『現代の名酒二百選』と『新しい日本酒の話』である。　　とくに最後の書は肥前杜氏井上満さんが紹介されていて、井上杜氏と知り合うきっかけになった縁の書である。　織田作と日本酒に通じる稲垣真美氏、そして井上杜氏と結びつくのも不思議な系譜である。織田作がお酒をあまり飲まなかったという点だけはいささか寂しいが…。

  2009年08月24日

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• 難波での５０年ぶり盆踊りへ

  　難波の旧精華小学校で５０年ぶりに盆踊り大会が開かれるとのイムイムさんの情報で、出かけた。 　８時ごろだったが、４、５重の踊りの輪が河内音頭に合わせて波打つようで、久しぶりに大阪の商人の街らしい活気のある盆踊りに酔った。滅多にないことだが、自然に身体を動かしていた。 　いちびりあん、北極などの提灯が華やかさを盛り上げていたが、地元民間の協力の賜物である。 　なお、ここに来る前に、大阪水都祭の一環である湊町船着場のジャズライブの会場に立ち寄ったが、演奏まで時間がかなりあったので舞台を観ただけで難波へ移動して食事をした。

  2009年08月22日

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• 芥川賞作家の庄野潤三と丸谷才一

  　かつて芥川賞を受賞し、いまも名文として評価の高い二人の作家の小説を初めて読む。 　大正１０年生れの庄野潤三は大阪の帝塚山出身で朝日放送に入社後作家となり、昭和２９年『プールサイド小景』で芥川賞受賞。 　丸谷才一は大正１４年鶴岡生まれ、昭和４３年に『年の残り』で同賞を受賞している。 　前者は戦後間もないサラリーマン家庭の夫婦の間に生じた風穴を端正に描いている。使い込みで会社をクビになった男の、職場の索莫たる雰囲気の回想にサラリーマンの悲哀が滲み出ている。 　『舞踏』も平和に見える平凡なサラリーマン家庭にあって、夫の浮気によって生じた夫婦の亀裂、その孤独な心理状態が、二人の二元描写によって鮮明にされてゆく。 　いずれも無駄な装飾を省いた簡潔で分りやすい端正な文体が特徴である。 　丸谷の『年の残り』は７０歳に近い老境の病院長が、絵を通しての旧友との交流、そして自殺という結末、また別の旧友の妻の自殺にも関わるなど、それまでの溌剌とした人生が一転して、病老死という人生に陥るという内容である。 　『川のない街で』は鉄道フアンの夫が、同じフアンの女性と仲良くなって妻に離婚を迫るが、妻に対するふだんの言い草が女性は想像力が豊かでないから鉄道の楽しさが分らないというあたりが甚だ面白い。 　これまた無駄を省いたくどさのない表現である。　両者とも古い作品だがその時代の先端性をゆく作品とは、を感じさせてくれた。

  2009年08月19日

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