昭和戦前から美容師の草分けとして活躍された吉行あぐりさんの訃報を聞きました。
107歳。
大往生でいらっしゃるはずなのに、なぜか(意外にお若い!)と奇妙な感覚にとらわれます。
時代の激変をのりこえて、美容師ひとすじに生き抜かれた稀有な生涯。
いっぽうで長寿ゆえの悲劇、お子さんたちに先立たれる逆縁も経験されて・・・
いまは天国で淳之介さんや理恵さんと再会をよろこんでおられるでしょうか。
手元にある昭和7(1932)年発行の『婦女界』7月号より、
当時のあぐりさんは20代半ば、
和子さんと理恵さんはまだ生まれる前。
新進気鋭のヘアデザイナー、時代の先端をゆくモダンガールだったのでしょう。
あぐりさん考案のヘアスタイル。
片方だけ耳かくし、左右アシンメトリーなおしゃれな結髪。
お客さんも今でいうそうそうたるセレブ、
山の手の奥様や令嬢、
華族や財界のかただったでしょうか。
若き日のあぐりさんはきりっとした美女。
さすがは母子というか、
吉行淳之介さんに瓜二つ。
美形の血筋ですね。
「・・・彼女が山の手美容院の主(あるじ)であり、
夫君のエイスケ氏が新興藝術派の闘士であり、
ムーランルージュの文藝顧問であることは、皆様も承知の通りです。
昔は、髪結い(失礼ですが)の亭主は、長火鉢の向こう側にアグラをかいて、
女房に養われている存在に過ぎなく、女房のほうが有名なものですが、
アグリ夫人の場合は、そうではないようです。
エイスケ氏の文壇的盛名に引きずられて、彼女も有名になっていったかの感があります。
しかしそれにしても彼女に商売熱心と研究心が、なかったら、
今日ほどにはならなかったであろうことは、疑いないことです。」
・・・と、あります。
見目麗しく才長けて、華やかに東京山の手を闊歩するモダンガール。
BGMは藤山一郎先生の『東京ラプソディー』(1936年大ヒット)で。
・・・先人の偉大な功績をたどる事で「いま」をみつめなおし
未来をよりよく生きる指標となる
などとかたくるしく考えるまでもなく、
素敵な人のあゆみに思いをはせることは、とても楽しいですね。
ご冥福おいのりします。
そして吉行和子さんのいっそうのご活躍おいのりします。
吉行あぐりさん107歳、死去 連ドラ「あぐり」モデルが歩んだ激動の人生