カテゴリ:本・漫画
両親のいない貧しい兄弟。兄は弟の大学進学資金を得るために、強盗殺人を犯してしまう。
弟は「強盗殺人犯の弟」というレッテルを貼られ、進学、就職、恋人、夢、掴もうとする幸せの全てがその手をすり抜けていく。 苦境にあえぐ弟の元には、月に一度、服役中の兄から”手紙”が届く。 東野圭吾の作品だが、ミステリーではなく、犯罪加害者の家族の苦悩を描いた作品。 道徳的で、読者が最も共感できるであろう彼女の由美子、 通常の道徳観から考えれば違和感があるほど現実的な就職先の社長、 環境に関係なく純粋に友人であり続けるバンド仲間の寺尾、 この3人を主人公である弟の周りに配し、さまざまな視点から意見を語らせることで、 犯罪加害者とその家族の苦悩や在り方を丁寧に描き出している。 この作品がありきたりな作品に終わらず、独特の雰囲気を持つ魅力的な作品になっているのは、 間違いなく就職先の社長の言葉のためだろう。 社長の言葉は強烈で、自分も含めた”由美子”側に立つ人間の心に鋭く突き刺さる。 どちらかといえばタブー視されている”社長”側の意見は考えたことがなかったが、 現実を直視すれば、ある意味正しい意見なのかもしれないと、考えさせられた。 兄から月1回届く手紙は、物語の土台であり、アクセントとしてもとても効果的だった。 本作は2006年に映画化されている。 見てみたいのだが、キャスティングがイメージに合わない。 それ以上に、弟の夢が音楽からお笑いに変更されている点が激しく不満。 ■手紙 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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