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最近、川島雄三の作品をいくつか見た。
赤信号、わが町、女は二度生きる、風船、しとやかな獣、雁の寺。どれも秀逸だ。 赤信号が一番好きかな。 しとやかなは、一度見れば沢山だ。いやな映画だ。が、これもスゴイ作品だ。 新藤兼人の原作。この人の力に改めて感嘆。 戦後没落した海軍将官一家の話だ。その一家はすなわち日本国だ。 息子は詐欺まがい。娘は妾。親はその収入をあてにし、むしろ裏で糸を引いて一家が生活している。恥さえ捨てれば人並み以上の生活ができる世の中になったという風刺劇だ。その風刺は痛烈だ。話の構成もテンポも見事。 この時代の日本映画界の実力には恐れ入る。才能が文字通りひしめき合っていたと言っていい。 60年代、いわゆる高度成長期に入って日本は急激に変化した。人情は薄く、義理は破れ、人生は上滑り、物語は絵空事に変わっていく。 小津、川島、成瀬巳喜男、溝口ら、いづれの作品にもそれが色濃く反映され、表現されている。 明治の文士たちが経験した近代化の葛藤の、更に赤裸々なデジャヴュだ。 その喪失感をとりわけ直截に表現したのが川島か。 わが町にしても、雁の寺の最終シーンにしても、幕末太陽伝の冒頭にしても、時代の違いを明示的に対照して見せている。 そして、いまや、昭和さえ遠い昔になってしまった。 もう、あのように生活感のある映画も役者も出ないだろう。いや、生活感そのものがわれわれの生活から消えてしまったのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年07月05日 23時11分57秒
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