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灯台

灯台

恋人

牛乳瓶のなかの花が揺れている

何ひとつ映さない虹彩の膜はそれにも似ていて

一本の線によってへだてられた空間を

ちゃぷ、ちゃ、ぷ・・・菜の花、菫、、



へその緒をちぎった瞬間から記憶が起動するようなふしぎな味わいで

とぎれとぎれに ひらひら ふわふわとしている



・・・桜の花びら



   ちりぢりに打ち捨てられた僕の記憶

  またひとひら、翅が燃え尽きる



「あたらしい風をみつけたいんだ、ねえそれもすぐに、・・・」

太陽の光をあびた若草色のクローバー

うぶ毛が石けんで洗われて光るように甘くて苦いしずくが浮かんで

きこえ、て、いるでしょう?

ゆびおり数えたぼくらの春は

月並みに終わってゆこうとしている



・・・桜の花びら



   となりに座っている女の子にはちょっかいを出せないくせに 

  まえの席の斜めにすわっている男の子にやれてしまう心理

   (きこえていますか?

     シャープペンシルを首筋に刺す/射す 光、光、、光、、、



  見かけが何でもいい、という人がいて、

   それはつまり恋の話で、その人は、顔もいらない、という。

  でも人間の見た目は七秒ほどで第一印象が決まるのに、

   顔形のシンクロ現象、・・・顔、顔、顔、のくせに、

  見かけを誰よりも一番気にしているくせに、

   平気で嘘をつく。ひかり、ひかり、、ひかり、、、



でも言葉を信じてみたい。

顔も、声も、知らなくても、

その人のことを知っていると、

見かけや、その人の欠点などどうでもいいと、

後先のことを考えずに信じてみたい。信じてみたいよ。



・・・桜の花びら



   紙吹雪のように 空間のあちらへこちらへ

  微笑みが零れて ただよう沈黙



些細ないたずらも君が笑うから 君がそれにやさしく目を細めるから

美しい瞬間になる/きこえていますか?

ねえねえねえ、―――



斯る切なき思ひ


 雪のしたより燃ゆるもの



      針で突き刺されたような

          鈍痛 に

              しろくはじらう



   どろどろとした欲望を

くろく塗りつ ぶ す



・・・桜の花びら

   籠の中の鳥

  なかば砂に埋もれかけた空き瓶の口が



やさしいバネで動く

スケートリングの女王のように君のスカートが揺れる

身じろぎひとつしないのはもうあきらめてしまっているから

―――でも玄関のドアノブを掴みまわすと

おいおいもう十八になるんだぜ

また膨らます、また膨らます、、また膨らます、、、

はっとするような表情がきみの魅力



わが手にそひきたる

   花の種


      わかるかい ? たしかめあえ る

         もっと ふた り 

            自由にな れ る



   一斉 にひら く 傘

ものいへぬ蟲



波まか せ

   風 ま か せ・・・・・・



こうして授業を受けるのは将来のためなんかじゃなく

ただ すこしだけ魔法の延長

ふたりが笑顔でいられるかぎり いつも美しい花びらが舞い落ちた

・・・毎日ががらりと変わった、・・・剥がれていくペンキ、

(いつもの会話が続かない、、)高鳴る鼓動、・・・

僕の世界はこんなにも変わるものだったのだ



波まか せ

   風 ま か せ・・・・・・




      あ の 夏の日

         浴衣をき て 



   さくら紅か く 

咲くなみ に



      あじさい色の

         綿菓子をほおばっ てい た



   雲に焦がれてい た

椰子の実に焦がれ てい た



波まか せ

   風 ま か せ・・・・・・



・・・桜の花びら

   うす桃色の花びらは

  永遠の海に似ている



会えない時間が僕に罰をあたえる、・・・恋してるなんて言えない、

傍に居てとは言えない、金もない車もない頭もよくない、・・・

けいたいでんわがふるえる、ぶるぶる、ふる、える、

(・・・こんな時の僕はとても正直!)

ただ 逢いたい



と け て 消えるような恋 

   クリーム あ い す シャーベット

うわの 空



      かぎりなくあざやか な 

         あま い接吻け


       せめて 愛を 

     覚えつづけていられたのなら



  共に過ごした仲間と・・・・・・



サンダル 記憶の水槽 

   プールの 青



      ゆれる谷間 瞳≪め≫をとじ れ ば

         しろく霞んで ゆ く 空



      止まった時間を 拾いにい く

    ひょっこり と

裏手から廻っていく坂道 


   波まか せ

      風 ま か せ・・・・・・



(・・・Simulation game)遠くにはいつも近くにいるとは思えないほど

険しい現実の壁があった 自分の気持ちをもっとセーブしなきゃ

たいくつ、という魔物をかみころしている、あくび、、

でも血管に麻薬がみちる/おはよー と手を軽くひらひらさせて

制服姿の彼女が肩からすとんとショルダーバックをおろす時に

いつも何か場違いな台詞を僕は言ってしまう

ばーか/自分の気持ちをまだ落ち着かせられずに



・・・桜の花びら

      土瀝青の濡れ た 

           臭気≪にほひ≫


軽トラックが砂埃をあげてゆく舗装されていない道

学校前のくねくねとしたゆるいカーヴを走っていった

荷台の幌が ぱたんぱたんと歯ぎしりしている

(路肩に沿ったガードレールの

錆ついた部分が袖口をしろくよごした時 花粉だと思った)

豪華なフラワー・アレンジメント

ピアノ曲はもちろん



・・・桜の花びら

  金網のむこうの用水路をのぞきこむと

 降りそそぐ空の色



風をなぞるようなその人差し指は天然のチョークだとおもう

ぴょんぴょん飛び跳ねている兎のような粉はたんぽぽのさいごの姿だ

はっきりと断たれていく僕等の進路/太股より密着するパンツのように

おそろしいほどの魅力を放っている天使が、天使が、、天使が、、、

(和音、不協和音、、)どんなことを考えているのか、

・・・あのくりくりした瞳の奥で、、あのほそい足首、、

あのマクドナルドでのいくらかの会話、、、

いつも口にしそうで僕は恐かった、、、、

ひらひらはらりと花びらが散る、・・・

砂が口の中でじゃり、じゃり、、じゃり、、、



         ああ あの 夏の日

            自転車に乗っ て



      蒼き波たたへた

   川のほとり で



電車 が 

   をさなき影を踏んでいっ た


    微笑 ん で ・・・ 


       音を立てぬうち 亀裂われ ・・・・・・



  胸を締め付け た 蕾のぶん だ け 


ふるさと の 蝉の声

   にぎやか な 玩具売り



あの日 僕はクラスメートのところへ一目散に駆け寄っていた

自転車に乗っていた彼女が 違うクラスの男とぶつかって転けた

すべてをかき消してゆく、木々、、・・・誕生日の蝋燭よりもくらく揺れる、

差し出す手、照れ笑いする顔、三十センチの距離、・・・

角度はおそらく35度 スカートの下のブルマを見せながら

僕は生涯その手の温もりを忘れない

チチチ、チチ、チチ、と雀がさえずっていた

エンジンオイルのこげた匂いがしていた



波まか せ

   風 ま か せ・・・・・・


    あな た は 


       これからどうしようもな く



  透きとおって しま う 



喧嘩した/ばーか/ながい溜息をする彼女に平手打ちをした

(まだそこまで行くことはできなかった、絶交の二文字・・・)

ちらちらと浮かび上がってくる

ただせめてやさしく噛もうと思って下唇を噛んで思いきり血が出た

雨に濡れた 長時間雨に濡れたせいかふらふらして何度か転んだ

そうっと手を伸ばして/ばかね はいどうぞ

そう言って絆創膏をくれる彼女の姿がとおい夏のように思える

・・・明滅する交通誘導棒、台風のニュース、オールスター、

メールを読む、・・・削除、・・・メールを読む、・・・削除、、

子どものわすれた片方だけのサンダル、サンダル、、サンダル、、、

「・・・ごめん、ちょっと言い過ぎた」

風邪を引いた、風邪を引いた、、夏風邪を引いた、、、



・・・桜の花びらが鮮やかさを増して


      駆け抜け る

         いま も ゆれるまま


        光 は 一列にならぶ 

              落とされたもの ・・・ 


           落としたもののため ・・・・・・



流す涙のひと粒ひと粒に僕等の切れやすくて、

・・・でも中々切れない、腐れ縁がある、・・・

蒼白く灯る卓上電気のダイアリーがある

人通りがなくなるといつも思いだした真夜中過ぎの



      あ ふ れ る 光に


   遠ざかる 空


いま も さか道 を



   駆けおり ていけ ば

      YOU FOR ME あなた と



幼い頃に書いた作文を何故だか古い新聞に感じるような瞬間があった

映画館の横の路地で配られていたポケットティッシュ

古い新聞を燃やす、・・・はじめてのデート、・・・

しろくふわりと舞っていたスクリーンからの光で見える埃が

少女から大人へとうつりかわろうとうする女の子を主役にした

その隣でくろくゆったり沈んでいく自己卑下する案山子≪かかし≫



   雲をながめていた頃 の

をさない記憶



        信じさせ て ぼく の やすらぎ 


     こころ という ・・・ 謎 ・・・・・・



波まか せ

   風 ま か せ・・・・・・



緑の芝のうえで君から違うクラスの男の子に告白されたことを聞いた

(千の舌、万の舌、、)熱が舞い上がりBrown そしてBlind でなけりゃBehind

透きとおったあおい空から この午後 僕は白昼夢



      呼び掛けたも の の

   つたない亡骸



さめゆくものの

   冷質



      いま しずか に

         頬を濡らす 雨



    見ないか ら ・・・ もう わるい夢 

見ないから ・・・・・・



  愛の海で わかちがたい 時を手に入れた い

君のすべて に


   宇宙のトンネル・・・・・・



      未確認飛行体

         ふしぎ な 髪 をほどい て



   おもひだす いま に も

褪せていきそ う な



   シャワーの音 砂をはらった ま ま


       過ぎ去った かぎりない “昨日”



   駆けおり ていけ ば

ME FOR YOU あなた と



(ひとつの世界がつくられる、)とっくにおなじ世界にいないこと

凍る間際の水のように溶けているのか固まるのかわからないまま

ボウリング場でハイタッチしていた

(かすかに、かすかに、、ざわめきはじめる、、、)

トンチンカンなほど君にいつでも触れられ



   あなたと

おしゃべりしていた頃


   あ あ 夕焼け

       魂 は 知って いる ね ?



        そ し て僕が手に入れた も の

      い まも ・・・ 


  この胸にあります ・・・・・・


波まか せ

   風 ま か せ・・・・・・



何がしたいのかイライラしていた僕は草をぶちぶちと引き抜く

しかしそれはまるで使っていない電話器のようなのだ

(何処にも差してない、)根っこはまるで てらてらしたみみず

生々しくはなく ただ干乾びて気色悪い




・・・桜の花びら

  なだらかな稜線をたどる

 それは ぼくの胸 ・・・・・・



牛乳瓶のなかの花が揺れている

何ひとつ映さない虹彩の膜はそれにも似ていて

一本の線によってへだてられた空間を

ちゃぷ、ちゃ、ぷ・・・菜の花、菫、、



へその緒をちぎった瞬間から記憶が起動するようなふしぎな味わいで

とぎれとぎれに ひらひら ふわふわとしている



・・・桜の花びら



「もう、・・・行くね」

振り向きはしない背中姿に手を伸ばそうと、する、、



・・・もう誰も見ていないよ、、、

長い間の気まずい空気も、、、

花びらが取り巻くように漂うよ、、、



「好きだよ、、、ほんとうに好きだよ、、、

何も考えられないくらい、、、

好きだよ、、、」



振り返らない、振り返らない、、振り返らなくていい、、、

・・・もう誰も見ていない、、、

   ・・・もう誰も見ていないよ、、、



―――桜の花びら、


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